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死にたくないのなら進むしかない

 どのくらいの頻度で召喚されているかは分からない。だけど時差があるのは確実だ。なにせ、力を得て戻った者たちがいるのだからな。

 だけどそれは少数らしい。ならその他は?

 話の内容が真実なら、力も記憶も失って日常に戻っている事になる。


 だがもし帰ることが出来ないのだとしたら?

 その時はかなりの人間がこっちの世界で死んでいる事になる。

 でもそれはおかしいだろう? だって俺達の高校だけで11人いたんだぞ。


 もし同じような感じで召喚され死んでいたら、今頃社会は大騒ぎだ。

 どこそこ高校生、1夜にして10人死亡とかな。

 だけどそんなニュースは聞いた事が無い。だからあの時疑わなかった。


 そう考えると、先輩たちはちゃんと帰ったんじゃないのか?

 何せここはゲームの様な世界。例えばだけど、こちらにはこちらの肉体があって、向こうには向こうの肉体がある。

 そうだよ。でなければ、向こうの世界の肉体は消えている事になる。

 そしてこちらで死ぬと、精神は元の世界へ帰ってこちらの仮の肉体は残る。一件落着だ。


 そうやって納得しようとした俺を、あの言葉(アナウンス)が現実に引き戻す。


 《避けられない死が確定しました。“ハズレ”ます》


 この世界では死なない。単に召喚の糸が切れるだけ。そう、確かそんな事を言っていた。

 それが世界の法則とかも言っていたな。

 ならなぜ、『避けられない死』なんだ? 死なないはずだろ?


 それとも単に、俺のこのスキル……いや、もしそうなら呪いと呼んでいいが、そのせいで俺だけが帰れないのか?


 思考は巡るが建設的な事は何一つ思い浮かばない。

 そりゃそうだろう。俺は何も知らない。判断基準が何一つないんだ。


 そんな事を考えている内に、3人の死体はもう骨と服の一部を残して食い尽くされていた。

 スキルを使うアイテム……見せてもらえば良かった。

 なぜかと言うと、見当たらないのだ。それらしいものが。


 だけどあの中に飛び込む勇気は無い。ただの芋虫? 冗談じゃない。アレが弱いと誰が決めたんだ?

 本当にゲームなら、最初の敵相応なのだろう。だけど、これは誰かがバランス調節を施したゲームとは違う。

 しかもやり直しは不可能ときてる。

 一見雑魚に見えても、それぞれが俺を凌駕する力を秘めている可能性がある。

 武器もない。鎧も無い。スキルも無ければ場所も分からない。

 ここは余計な事はしないに限る。


「とにかく進もう」


 行くあてなんて何処にもない。だけど、ここに居たって飢え死にするだけだ。

 それとも、またスキルが発動して助かるのか? どうやって?

 分からない事を当てにしても仕方が無い。とにかく先に進もう。

 芋虫の群れを避けるように、3人の遺体とは反対方向に俺は進み始めた。





 ◆     ■     ◆





 もし観光で来ていたのなら、この光る美しい鍾乳洞に心を奪われていただろう。

 瑞樹(みずき)先輩や奈々(なな)と一緒に来ていたら、きっと心が躍りまくっていたに違いない。

 何処か子供っぽい奈々(なな)もそうだけど、瑞樹(みずき)先輩もそういう時は子供のような笑顔を見せる。

 付き合っているのは奈々(なな)だけど、先輩も俺にとっては掛け替えのない大切な人だ。

 何とか、今の状況を伝えないと。


 だけどなんて伝えるんだ?

 俺の推理は推測とも呼べないものだ。しかも知った所で、今の所はどうしようもない。

 死んだらどうなるのか? この本質的な事を、最初に軽く流してしまったのは失敗だ。

 だけど聞いて意味はあっただろうか? 間違いなく無いと断言できる。都合の悪い事は絶対に言わないだろうからな。


 そう考えると、これは不都合な情報なんじゃないのか? それとも考えすぎか?

 一応、それなりに説得力のある材料が手に入らない限り、3人の死は秘匿しておいた方が良さそうだ。


 幸い――いや、そうは言えないが、スキル自体は発動した。

 もう一度最初からやり直してもらえば、スキルを発動するアイテムも貰えるかもしれない。

 そうだ、先ずは最初の地点に戻る。そして3人にだけはこっそり事情を伝えよう。

 何が真実かは分からない。だから見た事を正確に。そしてこれからの事を話し合おう。

 そんな事を考えている内に、俺は3人の白骨がある場所に辿り着いた。


 ふざけるな!





皆様のおかげでとても良いスタートが切れました。

これからどんどん面白くなっていきますので、今後も是非よろしくお願いいたします。

本当だよ(*´▽`*)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いですね。異世界召喚のテンプレを使いつつも、ユニークな発想が生きています。ハズレ というスキルがいったいどんなものであるのかはまだまだわかりませんが、これから明かされるだろう秘密に期待…
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