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名残惜しいが、帰る以外の選択は無かったんだ

 この後、数人のスキルチェックが終わり、これで全員のスキルが確定した。

 そして当然の様に、俺達の前には外周にいたフードを纏った連中がやってきていた。


「先ずは皆様、あちらでご休憩を。そこで今後の事などを話し合われると良いでしょう。個人で行くも良し、チームを組むも良し、全員で行くのも、もちろん構いません。ただ迷宮の事やスキルの使い方は知っておいた方が良いでしょう。そういった説明をするために、10名の方が控えております。(しばら)くは講習を受ける事をお勧めいたします。但し、1か月以内には必ず出発をして頂く事になります」


 そして皆にはそう告げた。

 だけど、俺は違う。まあ分かっているんだがね。


「大変申し訳ないのですが、貴方は帰還となります」


 そりゃそうだろう。最初に言っていたしな。

 それを聞いて瑞樹(みずき)先輩たちは抗議してくれた。だけど、もういいんだ。


「いや、俺は帰るよ」


「なんだ、一緒に冒険が出来るって思ってたのによ」


「私も、敬一(けいいち)君と一緒が良い」


「何とかならないのかしら?」


「皆の気持ちは嬉しいけど、俺はただの足手まといだよ。それにスキルも無いんじゃ、持ち帰るものも無い。それに、もうこれ以上ここにいたくないんだ」


 それはまあ、9割は言い訳だ。

 多くの者はフードの連中に付いて行ったが、またハズレの俺を笑っている者も少なくない。

 仮に俺が特例で残れたとしても、そんなチームに素直に入りたいってやつはそんなにいないだろう。

 しかも俺は無力どころか、今の皆にとっては完全な足枷(あしかせ)にしかならない。

 未練がましく残るより、素直にこうするのが一番さ。


「ただ呼び出したのは我々です。あまり嫌な想いで帰って頂くのも心苦しく思います。3日間の滞在は許可出来ますので、その間に町の見物などして行ってはいかがでしょうか?」


「あ、なら3日間は一緒にいられるね」


 奈々(なな)は単純に笑顔を向けてくるが、今の俺にはそれが痛い。


「いや、その3日間もこれからを決める大事な期間だ。一緒に遊んでも仕方ないよ」


 そうだ……チーム編成は最初に大体決まって、以後は固定になるだろう。3日も出遅れさせてどうする。


「それにどうせ、戻ったら全部忘れるんだ。だけどきっと俺は驚くぞ。何せ次の日になったら、お前たちが今までとは全然違う凄い人間になっているんだからな。むしろその時に、俺を捨てないでくれよ」


「当たり前だよ! 敬一(けいいち)君と別れるわけがないじゃん!」


「私たちはこれからもずっと一緒よ」


「まあ俺は分からんがな……って冗談だよ。俺たちの友情は、立場がどうなったってかわりゃしないさ」


「ああ、そうだな」


 実際、捨てないでくれよなんてのは完全に冗談だ。

 何があったって、今更俺たちの友情は変わらない。そう信じられるだけの時を過ごしてきたんだ。龍平(りゅうへい)は知らんが。


「じゃあ、先に帰るわ。頑張れよ」


「うん。また向こうで会おうね」


「きっとすごい力を手に入れて、敬一君を助けてあげるね」


「お前が自慢できる人間になって戻るよ。じゃあな」


 奈々(なな)瑞樹(みずき)先輩、龍平(りゅうへい)と固い握手を交わす。


「それでは帰還ゲートへのご案内をいたします」


 どんなふうに召喚されたかは分からなかったが、多分帰還も同じことをするのだろう。

 そんな風に考えていたが、どうやら帰り道はちゃんとあるらしい。

 まあ呼ぶときはランダムでも、その時に元位置を記録しておけばそんな事も可能だろう……なんて、そんなシステム的な事を考えても仕方がない。こんな非常識な状態でな。


 考えてみれば、異世界召喚だのスキルだの凄い力だの迷宮だの宝探しだの……挙げればきりがないが、理解の範疇(はんちゅう)を越えた出来事が多すぎた。

 もうここらで全て忘れるとしよう。

 というか、さっさと忘れたい。さっきの恥ずかしさも、この悔しさも。

 もしも一欠片でも残っていたら……それはきっと悪夢だろうな。





ご意見ご感想、何時でも募集しております。

気になる点などありましたら是非。

もちろん、今後のネタバレなどはお答えでいませんが…

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― 新着の感想 ―
どのようにして、元の世界に帰ったのを確認したのか誰も疑問に思わないのが不思議。死んだ後に天国があると言っているのと変わらないのにねる
[気になる点] お仲間は主人公と一緒に帰るとは言ってくれないんだね...
[一言] 前話ではハズレスキル馬鹿にして笑ってたのに、いきなり悲しい雰囲気出してきて、なんだこいつら?ってなった
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