心を操る事は不可能じゃなかったのか?
「それで、勝者である君は何を望むというのかね?」
「知っている情報の全てだ」
「荒唐無稽すぎるな。君は自分の知っている事を全て言葉に出来るのかね? 不可能だ」
ああ言えばこう言うタイプだな。
絶対に友達いないだろ。
「では、貴方に抱かれた事など無いわたくしの何を知っているのか、それを説明願いましょうか」
パアンと乾いた音と共に鞭が唸る。
ひたちさんは相当お怒りの様だ。退散した方が良いだろうか? だが戻ってきたらコイツ八つ裂きにされていそうだし。
しかしアレか、あれはブラフか。いやひたちさんも初めてじゃなさそうだったし、誰かと経験があってもおかしくない……というかあっただろう。
でもコイツじゃなかったのはなんとなく安心……って何を彼氏面しているんだ俺は。
取り敢えずひたちさんを制し、話を続ける。
「では聞くが、お前はこの世界での死が本当の死だと知っていたな。俺があそこを襲撃する以前からだ」
「愚問だな。我らの様に昔からいるものは大抵知っているさ。まさか気が付いているのは自分たちだけ。他は考えもしない馬鹿だと思っていたのかね?」
「そこまでは言わないが、体制側についている連中は知らないと思ったよ。噂の10人を除けばな――」
そこまで言ってハッとなる。
「まさか、お前が地上で待機しているっていう10人の一人じゃないだろうな!?」
「ははっ! はははははははははっ! 無知もここまで来ると笑えてくる。あの方々がこんな所まで来ると思っているのか? はははははは!」
「ああ、思っているよ。何せこちらは、そちらの大事な大事なアイテムを持参しているんでね」
「なるほど、ハッタリは通用しない様だ。それでは正直に答えよう。確かに私は君のいう10人の一人だ。だがそもそも……いや、これはひたちやダークネス・オブ・ザ・クリムゾンから聞いていないのかね?」
いや急に冷静に語られても困る。というか多分、名前間違えているぞ。なんか俺も怪しくなってきたけど。
まあそれよりも――、
「少し意外だな。正直に言ってしまえば、俺はその10人とやらには絶対に勝てないと思っていたんだ。理由はいろいろあるが……まあ一番分かり易いのはアイテムだな。今まで発掘された特殊な道具を大量に持っているんだろう? ならなぜスキルだけで戦った?」
「私がアイテムを使わなかったのはポリシーだよ。君は絶対に勝てる賭けは好きかね?」
「大好きだな」
「どうやら君とは生涯分かり合えぬようだ」
凄まじく不貞腐れたような態度で、まるで唾を吐くようにそう言い切りやがった。そこまでかよ!
「単純に言えば面白味だよ。何も持たず、自身のスキルさえ把握出来ぬ君を一方的に嬲り殺したとて、私の気持ちは収まらない」
「その油断が、こうして死を招くとしてもか?」
「その時はその時だ。むしろ敗北した事で、私は私に自信を持てたよ」
……?
「心では緊張を求めながら、実は今まで自分は勝てる勝負しかしてこなかったのではないか? そんな気持ちを払拭できたのだよ。十分に満足だ」
コイツ絶対におかしい。
だけどまあそれは置いておこう。場当たり的に聞いていると、本題からどんどん遠のいてしまう。
「改めて最初の質問に戻そう。最近の連中――例えば俺と共に召喚された連中なんかはどうなんだ? それとあの二人もだな」
「そうだな。賭けに負けた以上、これは話そう」
「知っている事は全部話すんだよ!」
「まあ待て。先ほど召喚された日を覚えているかと聞いたな?」
確かに聞いたが、こいつは無視、バールの様な物を持った男はただの馬鹿、もう一人に至ってはセポナを狙うように言いやがった。
多分スキルを使っていたのだろうが、人の話なんて聞いちゃいない様子だったな。
「それがどうかしたのか?」
「今いる新参者は、自分が召喚された日など覚えてはいない。正確に言えば、仮に覚えていたとしても霧散する様に忘れる仕組みだ。もし何かのはずみで考えようとすれば、ストレスが心を刺激する。つまりは嫌な気分になるわけだ。結果、いつの間にか気にしなくなるわけだよ」
「なんだと!?」
「だがそうでない者がいる。そんな者達は帰らなければいけないという強迫観念が働き、勝手に理由を付けてその日の内に消えるようになっているわけさ」
サッカー部の先輩、もう一人の同じ格好の奴、それにサラリーマン。そういえば一人とは会話しなかったが、二人とも次の日の予定を知っていた。それはつまり、当日を知っていたという事になる。
なら俺やあの三人は、自ら死ぬように操られていたって事なのか?
ただ今、人物紹介制作中です。
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