絶対に死なない、そして絶対に許さない
表紙を追加しました。
左が水城瑞樹、右がその妹にして主人公の恋人の水城奈々です。
これからの物語を楽しんで頂けると、心よりの喜びです。
まるで苔むした鍾乳洞の様な場所を、ただひたすら走る。
始めて来た時、「ここは貴方がたにとってはゲームの様な世界です」と言われていた。
ああ、確かに鍾乳洞全体が光っているようで、その幻想的な風景はまるで現実感が無い。
だけど今は、そんな風景など楽しんではいられない。
「〇△〇※! 〇△〇※!」
「追え! 追いかけて必ず殺せ!」
「◆※●〇□ △※〇!」
「ハズレ野郎! あんな最低な奴だったとはな!」
背後から聞こえてくる罵声。現地人の兵士達。だけどそれに混ざって知っている声も聞こえてくる。
あいつらの言っている事は冗談じゃない。捕まれば、俺は必ず殺される。
そう、死ぬんだ。この世界で。なのにあいつらは知らない。まだゲーム的な、危険のない世界だと信じていやがる。
現地の連中はどうなんだ? 何処まで知っているんだ?
だけどどうでも良い。知っていようが、知っていまいが変わらない。
奴らが追ってくることも、俺が逃げることも。
「広域探査を使います。絶対に見つけるわ」
あの声は瑞樹先輩か……水城瑞樹。俺の憧れの先輩。
そうか、あの人も来ているんだな。
奈々……くそぅ!
だけど死ぬわけにはいかない。
あいつらの仇を取るまで。そして真実を暴くまで。
だけど今は無理だ。逃げるしかない。
「見つか……い。もう……なに遠くへ?」
「ハズレ……め。逃げ足だ……早いな!」
段々と声が遠くなってくる。
どうやら広域探査に俺は引っ掛からなかったようだ。
まあ……俺はもう色々と違うしな。
「準備は出来ていますよ。でもその様子だと失敗しました?」
澄んだ小鳥のような声が聞いて来る。
ピンクの髪をした小柄な少女だ。
「召喚者が先陣をきっていますが、現地人の兵士も多いですね」
少し落ち着いた、生真面目さを感じさせる声が状況を説明する。
こちらは黒のボンテージにガーターベルト。それに手に持った茨の鞭。口調と服装がまるで釣り合っていない。
「予想通りだよ。それにしても、現地の連中は随分とやる気だな。普段はあんなに元気に迷宮になんて入らないと聞いているが」
「召喚者が先導していますからね。それに――」
視線は自然と俺の腰に行く。
「ああ、言わんとしている事は分かっているよ。だけどまあ、仕方ないだろう」
「失礼しました。それで、迎撃いたしますか?」
「いや、逃げる。今は戦えるような気分じゃないんだ」
「それで良いの? 会えたの?」
「ああ、だから今はこれでいい。次の機会は必ずあるさ」
そう言って、二人の女性を抱えて縦穴に飛び込んだ。
――必ず次の機会はある。必ず救って見せる。頼むから、それまで絶対に死なないでくれよ。
何処までも落ちていくような感覚を味わいながら、俺は次の手を考えていた。
前回の触手(削除されましたが)から少し間が開いてしまいましたが、再始動でございます。
私としては珍しく、基本ノンプロットの不定期連載となる予定です。
それでは今後ともよろしくお願いいたします。
訂正
投稿するまでに間があいた関係でプロット出来ちゃいました。
暫くはそれに沿って進みます。
ただ評判によって変わる可能性は大ですヾ(*´∀`*)ノ