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6話・小手調べだ…。

何となく投稿します。3話連続でします。

次回は未定です。

 ギルスはそのゴブリンエンペラーに見覚えがあった。体が燃えて無くなり、バラバラになったあのグロさすら残らない死体を。勿論、その死骸はすでにボロボロになってしまって跡形もないのだが。いや、事実燃えカスだけは少し残っていたから土魔法ですでに埋葬されている。まさか、以前自分がやった奴ではないだろうかとギルスは思ったが、その懸念は外れた。


「近くのゴルーン山脈のダンジョン前、まあ、何とかなるだろ。」


 ゴルーン山脈とは、Bランク以上推奨の難関エリアだ。勿論、一気に勝負を付けようにも、未だに『ステータス』が低すぎてどうしようもない。ギルスはまだ、安心しきれていなかった。『グレーターデーモン』よりも強い魔物が発生する可能性もあるからだ。いや、失いたくない故に無駄に神経質になっているだけでもあるのだが。


 ギルスは既に『グレーターデーモン』のことを、『害虫』程度にしか思っていないが、それに対しての嫌悪感は恐らくこの世界で一番持っているといっても過言ではない。出会ったら友好的な奴でも殺してしまうだろう。簡単に倒せない敵も現れるが、絶対に殲滅しないといけない。そんな使命感にも追われていた。

 またギルスは、怨敵を『グレーターデーモン』から『魔物』に変えつつあった。しかし、人間に対して有効的な魔物もいるため、決めきれずにいる。変わるのは目の前でまた死人が出たらの話だが、そんなことがあれば、ギルスは復讐する前に狂ってしまうだろう。


 ギルスがずっと考え込んでいたと勘違いしたのだろう。リヴァスが心配してギルスに声をかける。


「大丈夫か?すげぇ浮かねぇ顔してるんだが?」

「あ…………ああいや、別に問題ない。とにかく、すぐに討伐に行こう。」


(心配かけるなんてメンバー失格だ。しかも、こっちの事情を知っているというだけあってあまりこちらも逆らう発言はしないようにしなければ。)


 ギルスにとって、媚びを売る行為については死んでもやりたくないという行為であった。ミスがあっても、「許してほしい」と思う前に自傷行為をするほどだが。嫌いになった理由については後に説明するとしよう。



 とある山の中で…。


「アハハハハハハハハハハハ!弱い弱い!こんな雑魚共に負けてたなんて!キャハハハハハハハハハ!」


 笑い声とも叫びにも聞こえるような奇声が響いていた。大鎌を振り回すギルスである。

 ゴブリンを見つけては首を刎ね、手足を斬り、内臓を抉り飛ばした。この世界では討伐した魔物は基本的にはドロップ品に変わる。討伐証明部位とは、そのドロップ品のさらに一部である。勿論、ドロップ品ごと渡した方が高い報酬は得られるし、解体費がかかる程度でむしろ黒字だ。それを自身で解体するというのは基本的にAランク冒険者のみだと思われる。

 話は外れたが、その魔物が死んだらドロップ品に変わるとは言っても、その個体と接触していないと斬り飛ばされた身体はドロップにならない。つまりギルスの足元には…。この惨状は言わない方が賢明な判断だろう。


「おいギルス!一度帰還するぞ!」

「マジかよ、何であんなのと戦えるんだよ…。」


 リヴァスとメディルクは唖然としていた。


 そう、目の前には100を超えるゴブリンがいたのだから。このレベルになると、すでにAランク冒険者では太刀打ちできないと言われている。リヴァスとメディルクのレベルはそれぞれ47、51だがおそらく、目の前の大群を殲滅するには少なくとも50人の精鋭を編成して挑む必要はあるはずだ。それをギルスは笑いながら蹂躙していた。


「ハハハ!【無情の殺戮鎌】!」


 恐らくギルスの持つ固有能力だろう。リヴァスはそう結論付ける。実際、人間は元々『祝福』以外にも少ない割合ではあるものの『固有アビリティ』が存在するパターンがある。ちなみに、ギルスのアビリティは『死神の申し子』、『死神』というジョブを常に開放できるというものだ。実際、ジョブを変える『ジョブ』が存在するものの、ギルスはその力をほぼ使わず現在無双しているというわけだ。


 無情の一振りが空間を、命を、その存在を消し去る。その一撃で50ものゴブリンが瞬く間に死んだ。


「っち、この程度か愚図が。俺の前から消え失せろ。」

「「「「グガァァァ!!」」」」

「しつこいって言ってるんだよぉ!」


 振った鎌は返り血で汚れてしまっている。だが、それを振り払っている時間はない。次から次へとゴブリンは沸いてくる。

 ギルスは殲滅することを決定した。


「汝の命を、我が神への贄とするがいい…………。【生死反転セシ大鎌(デスサイズ)】!」


 黒い霧がかかった禍々しい鎌がゴブリンの大群を飲み込む。ゴブリンエンペラーすら、その余波に巻き込まれ即死した。


「ふぅ………。終わったよ、リヴァス、メディルク。」

「………るな…。」

「えっ…………?」


 リヴァスとメディルクはすでに正気を失っていた。目の前で蹂躙されていくゴブリンを見て、すべて殲滅されれば次は自分たちだと思い込んでしまった。


「「来るなァァァァァ!!」」

「ええっ!?」


 二人はそのまま一瞬にして姿を消した。


(何で怯えられたかは分からないけど、帰ったら話をしてくれるよね?あ、ドロップ品を回収しよ~。)


 ギルスはマイペースに素材を手に入れまくった。そこで気付いた。


(あれ?…………討伐証明部位が、ない…。)


















 リヴァスとメディルクはギルスを捨てて山から下りた。討伐証明部位を奪い、そのままギルドへ着き、報酬を受け取り、ギルスの遺骨といってゴブリンの骨の一部を渡した。しかも、魔法で人骨へと変換して…。


 1年経っても、ギルスは帰らなかった。


「これで俺らはSランクだ。」

「あんな騙しやすい奴がいるなんてね。まあ、流石に申し訳ないとは思ったけど。」

「バカ言え、あいつのおかげで今、こうしてSになれたんだ。ありがとうとでも言おうぜ。あの世のあいつにな。」

「「ハハハハハハハハ!」」

「おや?…………とても懐かしいですね。」


 背筋が凍るような恐ろしい声が聞こえる。いや、その声は笑っていた。


「久々に会おうと思って『死の森』を何往復かしてたら、まさかここに行きつくなんて。本当に、運命というのは分からないものですね。」


 黒いローブはボロボロに、大鎌は大きくなり、黒く美しい光沢を放っている。刃の付け根には赤い文字で『デモンズ・キラー』と異世界の『英語』で書かれており、ギルス本人の顔は気持ち悪いほど美しく、夜の空のような黒一色の、生気のない眼をしていた。


「ところで、…………誰が死んだ?まさか、僕とは言わないよね?」

「「あ、ああ、ああああああああああ!や、やめろォォォォォォォォォ!」」

「そのセリフを聞くのもグレーターデーモン合わせて187回目、レベル上げるには十分すぎた。レベルはすでに185。いやぁ、なかなか面白かったよ、あいつらを喰って飢えをしのぐって言うのはさぁ!」

「「ヒィッ!」」

「…………全く、これでSランクとか既に世が腐ってると思うよ。今の威嚇だけで気絶するなんて、グレーターデーモンに会ったら3秒で死ぬよ。今まで、僕を騙していた付けが回ったね。ご愁傷様。ゴブリンエンペラーの報酬金、その全額を君らから貰っていくよ。それで命はチャラにしてやる。」


 そう言い、ギルスは青い月が照らす夜空を見上げた。


「ミラ…。僕は何で、君に会えないんだ。何回も、何十回も、それこそ何百回も叫んだのに気付かない。そんなの、僕が生きている価値が無いみたいじゃないか…………。なあ、一回でいいから、僕の名前を呼んでよ。それだけで幸せになれるんだ。頼む、よ……。」


 一人悲しく泣くその光景を見た者はいなかった。

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