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4話・ギルドに着いた……。

 ギルスはフィーラと別れた後、記憶消失魔法をフィーラにかけた。その魔法は【デリート】。記憶を消し去る魔法で、今まであったことを忘れた。今までありがとう。だが、知られたくないことはある。


「【デリート】」


 無駄な記憶を自分から消し去る。



 ギルスはヴァイパードッグの仮死状態の体を引きずりつつ、村から持ってきたボロボロのナイフを持って歩いていた。仲間はすでにいない。唯一の親友のアレフはあの件の後、すぐに騎士団へ入団してしまった。そして、未知数なジョブを持つギルスは【農民】として生きていたため、どれほど強くても目を付けられなかった。


 仮死状態のヴァイパードッグから血が流れ、絵の具のように街の白いタイルを紅く彩ってゆく。



「お、ヴァイパードッグじゃねぇか!そこのお前、俺にそいつをよこしな。」


 スキンヘッドの男がギルスに話しかけてくる。


(邪魔だ。コイツ、野犬にでも喰われて死なないかな?)


 ギルスもマイペースであった。当然、ゴミを見るかのような目をして彼を見たため、男は少し憤慨しながら言う。


「なに、ただそれが欲しいだけだ。お前には興味ない。」

「……じゃ、君要らないから消え失せて。どう見ても雑魚にしか見えない。」

「なっ!俺はBランク冒険者だぞ!俺に無礼を働くとどうなるか知ってるのか!?」

「知らん。そもそも、さっきついた。1週間以上、ほぼ寝ずに歩いてきたから、怠い。さっさと道を開けろ。邪魔過ぎる。」


 そう言った時、男は不気味な笑みを浮かべる。


「良いんだな?」

「何が?」


 懐からナイフを取り出して言う。


「お前ごときが、俺様に逆らったことを後悔させてやる!」

「邪魔と言っている。」

「死ねぇ!……(チーン)ガァァァァ!」


 ギルスは迷わず金的を行った。恐らく、ゴブリンキングですら殺せるだろう。まさにクリティカルヒット。


「邪魔だと、言ったのに……。」


 何故か自分が泣いていることに気付いたギルスはその涙を拭い、ギルドを目指す。


「ごめんなさい、この街に初めてきたもので、道が分からないのですが、教えていただけますか?」

「は、はい……(何でヴァイパードッグがいるんだよ)。えっと、どこへ?」

「冒険者ギルドへ行きたいのですが……。」

「ああ、それなら。そこの突き当りを右に曲がったところに二つの剣を交差させた看板がつるしてある建物がある。そこが冒険者ギルドだ。」

「ありがとうございます。では……。」


 情報を手に入れた。そのまま、ギルスは言われたとおりに移動する。しかし、道にはヤンキーとかチンピラといった人間が多くいた。


「ようガキ、せっかくなんだからその荷物置いてけよ。」


 金髪でリーゼントという髪型をしたヤンキーがいた。


「邪魔だ。股間潰すよ?(拳をボキボキ鳴らしながら魔力を開放して徹底的に脅す。)」

「ひ、ヒィィ!た、頼むから怒りを鎮めてくれ……。お、俺が悪かった!」

「じゃあ退け。邪魔だ。」

「は、ハイィィィ!」


 こうしてギルスは道を開けて移動することができた。勿論、これは普通犯罪なのだが、正当防衛でなんとかなるレベルになる。ましてや、一般人扱いの人間を攻撃した。その罪は大きい。



 チンピラや落ちこぼれの冒険者、怪しい毒をとてつもない価格で売りつけようとする麻薬商売人、奴隷商などに絡まれたが、それらを何とか乗り切ったギルスは、やっと冒険者ギルドに着いた。


「ギルドに登録したい。」

「いらっしゃいま……ヒィ!ヴァ、ヴァイパードッグ!?」

「おいおい、どういう状況だ?そんな餓鬼が、ヴァイパードッグを?Aランクだぞ!勝てるわけがない。」

「いや……しかし…………。」

「クゥン……。」


 ヴァイパードッグが小さく鳴く。


(っち。)

「うっせぇんだよ!黙って死んでろクズが!【疑似・剣閃】」


 首を刎ね飛ばし、一瞬にして命を掻きとる。ボロボロのナイフは折れた。すでに犬はドロップ品に牙になっている。


「今、無一文だ。出来れば、これを換金して登録したい。出来るか?」

「は、はい……。」


 ギルスはすでに満身創痍だ。既に3日は寝ていない。


(っち、また睡魔が……。)


 周りで何か言っていることを聞き取ろうとしながら、ギルスの意識は暗闇の中に沈んだ。



「なぁ、コイツ、いったい何者なんだ?おい、メディルク、こいつを読んでくれ。」


 Aランクの冒険者のリヴァスは相方にそう言った。


「あ、ああ。全く、人使いあら過ぎだっつーの。」


 メディルク、彼は『読術士』というジョブを持っており、他者の情報、記憶を読み取ることができる。『祝福』の能力で基本的には精神が砕けることはない。だが、その彼がギルスを見ようとして、


「あ、ああ、ああああああああああ!」


 発狂した。目は完全にイかれており、焦点すら合っていない。


 しかし、固有能力の精神保護により、5分ほどで気を取り直すと、相方にこう言った。


「こいつは病気だ。」

「? なんのだ?」

「コイツ、村を壊され、ただ独りで生きてきた。そして、数日間あの『悪夢の森』を彷徨い続けて、奴隷にされかけた少女を助け、ゴブリンエンペラーを魔法一撃で破壊して、盗賊団を壊滅させている。」

「はぁ!?」


 リヴァスは、その非常識さに思わず声を上げた。何も、これ等の功績を残すなど、Aランクでも簡単なことではない。Sランク、またはそれ以上の人間じゃないといけない。


「しかも、ただ独りの家族を目の前で失い、こいつ、既に復讐しか考えていない。」

「少女のことは分かったか?」

「いや、記憶が途中で消されて分からない。少女の方も、記憶を消されているようだ。」

「じゃあ、一体何者なんだ?」

「分からん。だが、こいつが恨んでいる奴は分かった。」

「ああ。それで?」

「それを知られることをこの男は拒んでいるが、結局知られるだろうしな。お前にだけは言うよ。」

「何だろうな、この変な緊張感。で?そいつは?」


 メディルクは息を整えてこう言った。


「『グレーターデーモン』。悪魔族、上位魔将。こいつは13歳でそれを殺してるな。それも圧倒的な実力差で。」

「おいおい、おいおいおい……。」


 そんなことを聞いてしまい怖気づいてしまったリヴァスはこう提案する。


「まあ、何だ、こいつにあまり関わんないでおこうぜ?」


 しかし、メディルクはそれを首を振って拒み、こう言った。


「いや、こいつには精神のケアが必要だ。勿論、そんなのにこいつの復讐心は一切揺るがないだろうがな。」

「頭が痛くなるぜ……。」

「全くだ。」


 二人の冒険者は、意識を失ったギルスを見守るのであった。

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