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3話・盗賊団からの追手

久しぶりの投稿です。

最近、書き貯めしているのでペースが落ちています。

ごめんなさい。

「とは言っても、師匠って何をするんだ?生憎、そんなものとは一切無縁だったからな。」

「そのままでいいですよ。私だって、正す気であなたに付いて行ってるだけなので。」


 フィーラはそう言ってギルスに続く。ゴブリンエンペラーが予想外に弱かったのにギルスは驚いたが、実際に駆除できたことで少しだけ安堵していた。


「えっと、師匠はどうやってここまで来たのですか?」

「街を目指していて…、そこで普通に疲れて木に登って寝てたら知らないうちに捕まってた。」

「そ、そうだったんですね。私は実は貴族の生まれで…、贅沢な生活が嫌になって領地を出たんですよ。そうしたら、知らないうちに盗賊団に連れ去られてしまって。」


 嫌になるまで贅沢できるほど恵まれていたんだな、と少しだけフィーラの境遇に同情しつつ、そのまま街を目指す。


「そう言えば、ジョブは何ですか?私は魔導術師で、火の魔法を多用しています。」

「そうか。まあ、こっちは事情があってあまりうまくは言えないが、基本魔法は全て使える。とは言え、扱いが難しいから基本は賢者に近いな。普通に昔から鍛えてたから接近戦も得意だが。」

「す、すごいです。あ、でも、普段は使わないんですか?」

「わざと『農民』に化けてる。そうしたら、周りからは文句は言われるだろうが、一応目的は果たせるからな。」

「…………師匠ほど強い農民がいたら農民は弱職じゃないですって。」


 『農民』は弱職、そう言うことを聞いて少し違うと思った。


「あー、そのことなんだがな。農民って実はある特性があってだな。植物系統の魔物に対しては異常に攻撃力が高いんだ。何とその倍率20倍。」

「え!?何故でしょうか?」

「まず、僕らが食べてるものは何かな?」

「お肉、野菜、お米…お魚です。」

「まあ、大方合っている。実はもう一つあって………いや、性格にはこれらが含まれるという形かな。実は、農民の『収穫作業』は植物を瞬殺できる能力を持っているんだ。軍隊レベルの組織には必ず入っていると言っても過言じゃない。」

「えっと、その話なら聞いたことがあるんですけど……。何故ですか?」


 ここまでヒントを上げたら察しのいい奴はわかるが。


「まあ、農民って弱いイメージが染みついているが、実は冒険者並みに魔物を狩っている職業だし、畑を耕したりする作業については本気で辛い。働き者の農民の方が少し怠けている兵隊よりも強いしな。」

「そ、そうなんですね。」

「しかも、農民だけ熟練度って言うのがあって熟練度が高いほどステータス上昇にバフがかかるんだ。だから、本来なら成人する前に作業をした方がいいと思う。」

「あ………。」

「どうした?」


 ギルスは何かが引っかかって話を止めた。


「すでに成人してるので、今その話をされても…………。」

「あ…………。」


(そうだ、って君が成人!?あり得ないんですけど!)


 ギルスは内心冷や汗をかく。


「何だかんだでこっちは15歳ですでに成人だからな。まあ、祝福の儀を神様がしてくれるまでは、少なくてもって考えてはいたが、流石にこれはマズイな。悪かったな。」

「まあ、師匠ですし許します。」

「…。」


 目が笑っていないフィーラを置いておいて、街を目指そうとしたとき、


「居たぞ!あそこだ!」

「待ちやがれ!俺らの金!」

「商人が行っちまうじゃねぇかよ!」

「あの男もいる!さっさと殺せ!」

 …………。


「…五月蠅いな。」

「ええ。燃やして、いいですか?」

「ああ、一切手加減なく頼む。それと、ボスだけは軽く引火させるだけに、それ以外はすべて焼き殺していい。」

「了解です!火の器よ。我らが母よクリストフェイリス!我に火の力を与えたまえ……。【クリムゾン・フレア】!」


 その詠唱とともに拳大の炎が現れる。しかし、その小さな火にはあり得ないほどの熱が込められている。近づいただけであのゴブリンエンペラー程度なら消し炭にできるほどだ。ギルスは理解した。目の前の少女は、魔法の天才であったという事を。


「あ、あっづ!?っておい!リード!リィィィドォォォォォォ!」


 リーダーらしき者が燃えて消える仲間の名を叫んだ。盗賊団の中でもかなりの人間だったらしい。ギルスはククッと笑みを浮かべる。大丈夫、その程度、まだまだ(・・・・)生ぬるい。


「野郎、やりやがったな!予定変更!こいつ等は奴隷にしない、殺せ!こんなのは売れるわけがない!」

「殺す……?」


 ギルスは動きを止めた。そして、その刹那……。


「オラァァァ!やるぞぉらぁぁ!って、腕が、俺の腕がァァァ!」


 ギルスはただの少年だ。成人しているとは言っても、実際には村を、家族を失ったことによって「殺す」という単語に敏感なのだ。脳裏に妹の死体が…。ギルスはただただ、鬱憤晴らしに、止めない怒りを盗賊にぶつけた。


「何だ。人間の腕って脆すぎるんだね。僕も人間だけど。ん?何、こんなのはおかしい?そもそも被害者が誰かなんて聞いてねぇよ。君らが攻撃を仕掛けた、僕らは反撃した。多少過剰防衛だけど、これで命が助かるならいいだろう?借金でもして教会の治癒でもしてもらえ。」


 笑いながらもギルスは攻撃の手を緩めない。


「【魔力創造・大鎌】」


 刃だけで3ⅿはある、大鎌が不意に現れた。そして、軽さを感じさせないといったように異常な速度で振り回されるその凶刃に次々と盗賊たちの四肢は斬り飛ばされてゆく。


「な、なんで、何で斬られてるのに痛みがねぇんだよ!」


 盗賊たちは別のことに恐怖を持った。そうなのだ。腕を切られたことによる幻肢痛が僅かにあるかないか、いや、むしろ痒い。しかし、掻き毟ろうとしてもその時あるかもしれない激痛の所為で我慢をするしかない。いや、性格には四肢を切り落とされているため掻くこともできないのだが。


「なんだ?君らって【空間魔法】すら使えないの?バカじゃない?あれ全部のジョブで使えるやつだよ?知らないの?」


 【空間魔法】は範囲系で最弱と言われている。実際、干渉系魔法で力が少ないのも事実だ。しかし、物理攻撃をしたと同時に発動すると腕が無いのにあると錯覚するようになる。勿論、腕は実際切り落とされて地面に転がっているのだが。


「ば、バカ……言え…。」

「【トゥルー・ペイン】」

「ガァァァ!」

「「「ギャァァァ!?」」」


 ゴブリンの方がマシと思える汚い悲鳴が鳴り響く。唾液となんて言ったらいいか分からない液体の臭いが辺りを包み込む。


「さようなら。君らのことは、あと1時間だけ覚えておくよ。【存在残さず消え失せろ(バニシング)】」

「ま、待て、俺らが悪かった!頼むから、それをやめてくれ。」

「それってどれ?てことで…()()()()()消してあげる。」


 その後、声が出る間もなく盗賊たちは全滅した。ドロップ品が出た。ギルスは落ちているそれを手に取る。


(『ホブゴブリン』の変異種か。それもこの数。知能は多少あるようだな。少なくとも魔王がどうとか言うのに関わっているのかもな。)


 魔物の頂点、最凶ともいえる魔物、魔王。当然、狩られずにずっと生きてきた一定のレベルの魔物のみがその称号と名前を手に入れる。人語理解と念話を入手できるようになっているため、人と話すこともできる。知能も一国の主並みに高い。それどころか、魔物使いというものに対しては人間など敵わないだろう。魔物を操作できる固有スキルを持っていて、何でも、魔王特有でいくらでも悪魔を呼び出せるらしい。


(その内、消す準備くらいはしておかないとな…。)


 ギルスは魔王を排除対象に加えることにした。しかし、目的とは違う。まずは無限湧きする悪魔どもを好きなだけ殺す。その後魔王を殺せばいい。レベルは…。200程度まで上げるか。



 あれから3日。とうとう街に着いた。


「じゃあ、街に着いたから僕らはここで分かれるわけだけど。あまり僕は言葉を知らなくてね。なんて言ったらいいか分からないけど、ありがとう?」

「何で疑問形なの?大丈夫って言ってるじゃん、兄ちゃん。」

「兄ちゃん、か…。」


 大分近づけた。でも、僕の目的に関わらせるわけにはいかない。巻き込むわけにはいかない。


「じゃあ……。いつか、また会おう。」

「分かったよ、兄ちゃん。それはそうとして、…何でヴァイパードッグ連れてるの?」

「ただの見せしめだよ。どうせこの身なりじゃ馬鹿にされる。だったら、目の前で消したら力の証明になるしね。すでにレベルは67だし。これくらいの魔物は雑魚同然だからね。まあ、なんだ。フィーラも注意してね。」

「うん、分かった!」


 手を振ってギルスを送るフィーラ。しかし、ギルスが一回も笑っていないこと、「兄」という言葉を聞いて僅かに顔が強張っていたこと印はすでに気付いていた。


「何があったんだろう……。」


 そこで、彼の生まれ故郷の村を調べることにした。それと、彼が偶に口にしていた「ミラ」という人物についても……。

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