2話・街へ急ぐ。だが、相変わらず物騒な世の中だ。
2話を投稿します。ペースは不規則です。空き時間に投稿します。
ギルスは目を覚ました。急に酷い寒気、恐怖に似たような感情を持ちながら。
(なんだ?ここは。僕は確か木の上で寝ていたはずだが…。まさか、いや、まさかな。)
盗賊がここらに拠点を持っているなんて話は聞いたことが無い。寧ろあったとしても忘却の彼方だ。土を塗り固めたかのような壁に天井、内側から見たところドーム状のその場所は異臭を放っている。女がほぼ全裸で倒れていることを考えるとここは奴隷商人が来るような場所、つまり取引をするところだろう。ギルスはそう判断する。
(うっわ、臭っせぇ!ってか、そんな話こんなところだとできねぇだろ。それよりも、早くここを出なければ。)
あまりの悪臭に気分を悪くしたギルスは行動に移る。右手に魔力を溜め、地面に放つ。【ショット・ガン】は地面に穴をあけるには最適だ。周りにサイレントの結界を張ったためこの音が漏れる心配はない。ちなみにこの結界は【サイレントフィールド】という魔法だ。魔導士、または賢者系列のジョブのみで扱える。その代わり音が結界の中で反射して酷い有様になるのが難点だが。
「ゴォォォォ!」
煩すぎて思わず耳をふさぐ。だが、振動が思ったほど大したことが無いことがわかるとすぐさま作業を再開する。大体5ⅿ位掘ればいいだろう。その後は結界を移動しつつも地面を掘り進めればいい。そうだ、横に寝ている女を助けないとな。見張りがいないこの牢屋はガバガバ過ぎる。ガキ一人でも簡単に抜けられるだろう。とは言っても、普通の盗賊からすればこれでも十分15歳のガキだが。
っち、やっぱり臭ぇ。
「【クリーン】」
誰でも使える様な生活魔法。まだ臭うが幾分かマシになった。さっきあけた穴に飛び込み、即座に穴を占める。
「【サーチ・オン】」
そして拠点の全体像を把握する。なかなかに広い。それに地下にかなり繋がっているから抜けだすには時間がかかりそうだ。
「【魔力創造・服】」
女がこのままだと心配だ。どっかの輩に襲われるかも知れない。だから、少なくとも痴女には見えない程度にはしておいた。まあ、一般的な服だ。異世界の住民が伝えたというTシャツにジーパン、左肩に刻まれたタトゥーのようなものはバンダナを作り三角形を下にするようにして軽く縛って隠しておいた。
「【ショット・ガン】×50…やり過ぎた。あっさりとアジト貫通した。」
そうなのだ。意外と力を抜いたつもりが土の壁を何十枚分も叩き割り、そのまま外へ出られるようになってしまったのだ。
「【フライ】」
女を宙に浮かせ、そのまま移動する。100ⅿほど歩き、ようやく外に出た。盗賊に襲われるのは厳しい。流石に大変なことになる。別に皆殺しにしてもいいが、そうしたら運ぶのが面倒くさい。
「う、うん…。あれ?私は…。」
「目が覚めたのか。」
【フライ】で浮かべながらも話しかける。
「って、この服は?というか、あなたは誰?」
「質問は1つずつだ。僕はギルス。ただの旅人だ。お前は何だ?」
「…フィーラ。私はフィーラって言うんだ。」
「そうなのか。まあいい、とにかくさっきいたのは盗賊団の拠点らしい。戦いになったら面倒臭い。だから穴掘って逃げてきた。そこであんたが倒れてたんで拾って逃げた、というところだ。服は魔法で作った。ただの【魔力創造】だから気にすんなよ。それに、一応消えないようにはなってるが、過度の衝撃には耐えきれない。盗賊が追ってきたらいつでも殺せるように備えておけ。」
「分かった」
しばらくの間は無言である。
「。……………ねぇ、あのさぁ。地面に下ろしてくれない?」
「いいが。というか早く降りた方がよさそうだぞ。…ほらよ。」
「っ!痛たたた!」
尻から落ちて少し悲鳴を上げるフィーラ。「何すんのよ!」という声をギルスは無視しながら、目の前にいる敵と対峙した。
そして一言。
「面倒なことになった。」
目の前にいるのはテイム済みゴブリンエンペラーだ。もはやクソ要素の塊だ。ゴブリン族の魔物は女を凌辱する、性欲の権化だ。男の自分からしてもいいものじゃない。男色の気がある奴がいると本気でマズイ。体がズタズタになるまで酷い目に遭う。
「…………少しだけ、イラついてるんで殺るわ。【レッドカラミティ】」
業火がゴブリンエンペラーを焼き尽くす。体が動かない。焼けて苦しみ、恐怖を植え付けられた。
「ギャァァァ!」
叫んでいるゴブリンエンペラーに一言。
「どこに居てもお前にとってそこは地獄。そのまま焼け死ね。」
「…………。」
すでに死んでいるらしく、ゴブリンエンペラーは灰も残らず消えた。
「す、すごい!そんなに強い魔法を見たことない!わ、私に教えて、師匠!」
「…………は?」
呆気にとられるギルス。ただの火の上級魔法風情でワンパンできるとは思っていなかったが、結果的には大成功だな。
「面倒だ。弟子になるなら勝手にしろ。見て覚えるなら別にいい。僕からは教えない。魔力の流れは目だけに身体強化を使って魔力をみろ。それだけは言っておく。」
「はい!」
「それと、一応街にはいったら僕はすぐ冒険者ギルドに行く。という事で、あと少しでお別れだ。それまでは気長に過ごせ。それと、師匠じゃなく、兄と呼べ。まあ、その内でいい。」
「はい!」
こうして初の弟子を獲得した。正直に言う。要らねー。
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