13話・襲撃者殺害とギルスの呪い
今回は途中からグロが入りますので、注意してください。
ヴェードリッヒに依頼完遂したことを告げる報告書を提出してからおおよそ半日。
ギルスたちは各自次の依頼の準備を行っていた。しかし、もうギルスはその依頼内容を事細かに調べ尽くしていたため実質する準備はなかった。もう既に装備品のメンテナンス、装飾品の手入れ、必要アイテムの補充も終わらせていたからだ。ギルスは暇つぶしに街を散策することにした。
街は魔物の襲撃によって相変わらず大破していて、復旧に時間がかかっているようだ。露店は少しだけあるが、大体焼き鳥だけだ。とはいえ、空腹を訴えていたため2本だけ買って食べ歩きしていた。
「美味しい…。やっぱり食べ歩きをするのは楽しい。」
独り言を溢しながら少し段差のある地面を歩く。誰かが大魔法を使ったかのような崖にも見える岩があった。いや、形状だけだから実際は15ⅿ程なのだが。
(ここは大通りだったはずだ。以前来たときは確かヴァイパードックを引きずり回してたっけ?大分迷惑かけたな…。)
「あの時はずっとミラを亡くした恐怖と後悔と怒りで狂っていたっけ?ハハハ、相変わらずだったな、僕は。」
もともと、ギルスは自分にだけ酷く厳しく、しかし誰に対しても優しく、ミラを誰よりも愛していた。4歳ほどから無理矢理働き、ミラのために薬を買おうと死に物狂いで依頼を攻略したものだ。まあ、結局病気は治らなかったけど。
少しだけ落ち込んでいた時、ある少年がギルスに話しかけた。
「えっと、勇者様のパーティーメンバーですか?」
緊張したように少しだけ体を震わせている。
「うん、そうだよ。僕はギルスっていうんだ。君は?」
「ぼ、僕はリック。勇者様に憧れてるんだ!」
「そうかそうか。彼はいい人だよ?優しくてね、ちょっとだけ面白いところがあって、パーティーの中ではとてもいい関係を築けているよ。」
「すごいや!やっぱり勇者様が一番。」
「ハハハ、まあ、僕はマイナーだし。あまり知られてないしな。とはいえ、今日は彼も休日だと思うから、ひょっとしたら話してくれるかもしれないよ?まあ、機嫌が悪い時だけはほんと危ないから、多分話しかけても大丈夫だと思うけど。」
「ありがとう!じゃあ、探してくるね。」
そう言って走るリック。しかし、ギルスは何か嫌な予感がした。
「【反魔法結界】【バリア】【プロテクト】【リフレクト】」
「えっ?うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?って、痛くない?」
突然、矢が飛んできてリックを襲う。ギルスは左肩に矢を受けたが、すぐに引き抜き、回復魔法を使おうとした。
「【ヒール】…?」
ギルスは不思議な感覚に襲われた。
(魔法が使えないな。反魔法術式付きのジョブ暗殺者の【アサルト・キル】だな。)
鑑定だけはスキルだから使えた。不味い。流石に相手の力は未知数だ。
「リック!僕から離れるな!そこの果物屋のおじさん!中央通りの『黒猫の日蔭亭』の勇者様と聖女様を呼んできてくれ!【アイテムボックス】…使えなくなってる!ああもう!………この紙を見せればわかると思うから!」
「分かった!持ちこたえてくれ!」
マジックバッグからとある紙を果物屋の店主に渡した。店主は走る。店主に向かって矢を放ったらしく、店主の近くに矢が突き刺さった。そもそも、店主に渡した紙はいったい何だったのだろうか。正解は、ギルスの案で万が一に襲撃された場合、自身の血を付けた手紙を送るということにしていた。
「リック!君は貴族か王族だろ?あんたみたいな話し方をする王様を見たことあるからな!…ッチ!」
「バレてる!?というより、お父様知ってるの!?」
「その話はあと!今はあんたが生き残ることが最優先だ!」
矢が腹に当たる。5㎝ほど刺さったようで、ギルスは内臓へのダメージを感じながらも、全周囲に意識を向ける。
「ぐ………。」
消化液で内臓が溶け、激痛に襲われ思わず片膝を付く。しかも毒が塗ってあったらしい。
「…まだ、死なねぇ………!【生死反転セシ大鎌】ゥゥゥ!」
矢が飛んできた方へ大技を放つ。ギルスはその一撃によって弓を持っている全身黒ずくめの男が落ちたことを確認すると、まだ矢が飛んできていることに軽く絶望しながらリックを抱きしめる。
背中に矢が刺さる。何本も何本も。
「ギルスさん!このままじゃ死んじゃうよ!」
「君…に死なれ…るわけ………に…いかない!」
激痛に襲われ、意識が遠のく。
「リーン………。」
守るべき存在を思い出しながら、ギルスは気を失った。
リーン視点
「え!?ギルス君が!?」
「おいおい!なんで早く教えねぇんだ!フィーラ!リーン!レッズ!助けに行くぞ!」
「「分かった」」
「急がないとギルス君が…!」
リーンはギルスが子供を庇っていることと、襲撃されていて魔法が使えなくなったことを知り、いつも通りの修道服に身を包み、走った。クレイスたちもそれに続く。
『リーン………。』
「!?」
ギルスの声を聞き、思わず足を止める。そこはもう悲惨でしかなかった。愛するギルスが背中に大量の矢を受け、一人の子供を庇って気を失っているのだ。
「キャアァァァァァァァ!」
リーンはその惨状を見て絶叫した。血塗れになっていて、いつ死んでもおかしくない様な状態だ。
リーンは走ってギルスを治している間、クレイス達は襲撃者を攻撃していた。
「ギルスに何をした!」
特にレッズがブチギレていた。リーンとギルスが付き合っていることを知っている為である。また、クレイスもリーンの幸せを願っているため、嫉妬してはいるもののギルスの事を心配し、リーンを悲しませている元凶に怒りを募らせていた。
「リーンを悲しませたな…。しかも子供を傷つけるとは何事か!」
クレイスは怒鳴り散らす。いつもの明るい美青年といった表情はなくなり、怒りによってその美しい顔は歪んでいる。
「暗殺者ギルド、『荒鉤の狗肉』。第3皇子リック・フォン=エルネストの殺害を依頼された。俺は仕事しているだけ。邪魔するなら皆殺しをするように言われている。勇者であろうと知ったことではない。」
暗殺者達はクレイス達に飛び掛かった。
「【エクスカリバー】…!」
「【パニッシュ・バッシュ】」
「【豪炎陣・エクスプロージョン】!」
クレイスは最高位のスキルを、レッズは相手を拘束し吹き飛ばすスキルを、フィーラはクレイスが撃ち洩らした残党を爆炎とともに粉砕した。
「【ハイ・ヒール】【リカバリー】【呪詛発散】…ああもう!矢を飛ばして来ないでよ!【ジャッジメント】!」
リーンはギルスの治療を行っていたが、相変わらずギルスを執拗に狙う暗殺者を発見し、最高位攻撃魔法【ジャッジメント】で世界から消滅させた。グチャグチャという音を鳴らしながら散る暗殺者は最終的に急に切れた空間に吸収され、消えた。
「うっ…。」
リーンは後ろから何者かに撃たれ、気を失う。
「ギルス…君…。」
そう言った時、ギルスは僅かに動き始めた。
ギルス視点
リーン………。
「は!?」
ギルスは目を開けた。背中に空いたはずの穴はすべて無くなり、体はすこぶる軽い。しかし…
「リーン………?」
リーンは矢を受けて重傷を負った。口からは血が出ていて、今にも命が消えそうだ。
(あああああああああああ!)
ギルスはリーンを見て発狂した。
「【ヒール】!【ヒール】【ヒール】!ああああああ!【完全蘇生術式】!」
ギルスはリーンが完治し、安らかな寝息をし始めたことを確認すると、魔力感知をし、リーンを射抜いた暗殺者に目を向ける。
「君…。」
「…えっ?」
暗殺者は急に目の前に現れたギルスに困惑した。
「僕のリーンを、どうしたの?」
(駄目だ落ち着け。このままでは殺してしまう。押さえろ、抑えるんだ…。)
「は?邪魔だったからだよ。依頼の邪魔だったんだ。だから撃った。それだけだ。」
「そうか。………自分が詰んでいることにすら気付かずにか?」
「はっ!何を言っ………。」
「【生死反転セシ大鎌】【蘇生】【生死反転セシ大鎌】【蘇生】【生死反転セシ大鎌】【血濡れの鉄処女】【グラビティ】【砂作成】………!」
頭から真っ二つにされて死亡。血が宙を舞い、肉を切る感触が伝わる。しかし、生死反転セシ大鎌による切断のため感覚は鶏むね肉を切っている感覚に似ていた。
ギルスの持つ鎌、デスサイズは対象を断つ時の感覚をずらす性質がある。つまり、切るときは何か別のものを切っているときと同じような感覚になる。骨が鶏むね肉と同じ感覚で切れるのは面白いとギルスは思っていたが。
蘇生により蘇る。今度は胴体をバラバラにされて死亡。蘇生により…ect.さらに突然現れたアイアンメイデンに入れられ、くし刺しにされた後にグラビティにより切り刻まれ、砂作成によってアイアンメイデンの中に砂が送り込まれた。
そのアイアンメイデンを身体強化魔法で持ち上げ、初めに殺害した暗殺者の上に乗せた。案の定潰れて見るも無残な姿になった。
そして何を思ったのか、子供のように無邪気な、一切悪意のない…ミラが生きていた時に見せていた幸せそうな笑みを浮かべて真っ白な髪の毛を靡かせ、話し始めた。
「どうにも、この黒いローブは落ち着きませんね。折角ですし、この際白く染めてしまいましょう!【色操作・白】」
ギルスは白のローブに白い大鎌を背負い、リーンをお姫様抱っこと言われる持ち方で支え、クレイス達のもとへ向かった。
「リック君は何とか逃げられたみたいですね。さてと、なぜか不思議と体は軽いし、前みたいな憎悪に身を焦がす必要もないですし。あとはちゃちゃっと終わらせてしまいましょうか!」
なぜか急に敬語で話すようになったギルスは軽い足取りで襲撃してきた暗殺者を皆殺しにしていった。
前作(原作?)とは設定を変えてみました。元々呪いがかかっていたというのは裏設定でしたが、それを今作では誰がかけたかわからないという設定で書かせていただきました。しかも、この段階では呪いがかかっていたということにすらギルスは気付いていません。
とはいえ、ギルスもやることがエグイですね。グロ注意にはならない程度には描写を調整してはいましたが、さすがに危ないと思ったので前書きに注意を書かせていただきました。




