Mulberry-桑の葉にまつわるお伽噺-
─太陽はいつものように昇り、花々は咲き誇る、素晴らしい景色。
子供たちは学校ではしゃぎ楽しんでいる。
それを年老いた男性がちらりと一目見て、にっこりと笑った。
学校からの帰り道。夕日は古い桑林に向かって沈んでいった。
誰も気に留められない少年は、
「私は"自由"になりたいのです。」と呟いた。
だが、心苦しいことに彼の"たった"一つの小さな言葉は、行き交う人々の群れに、群れの沓音に搔き消されてしまった。
そんな彼の小さな叫びを、ただ一人の老人が聞き零していなかった。そして老人はぽつりと口を開いた。
「私はあなたが感じていることが分かる。私が若輩者の時に"それ"を桑の木に取り付けたよ。」と囁いた。
彼は質問を止められなかった。自分自身の葛藤と疑念を晴らすべく止めることができなかった。
「今自分自身で決めなくては駄目だろう。自分が何をすべきか。」老人は弁じた。
─何かに気付いた少年は狂乱したように自分自身の頭を叩いた。
だかその時、彼は桑の実を頬張っていた。
手を止めることができなかった。
口を止めることができなかった。
──私の"夢"はこの手のものに、今叶うのだ。
"夢"から醒め、壁掛けの古びたアンティーク時計は午前8時を指していた。
彼は"自由"を成し遂げたのだと身を持って確信した。
─太陽はいつものように昇り、花々は咲き誇る、素晴らしい景色。
子供たちは学校ではしゃぎ楽しんでいる。
それを年老いた男性がちらりと一目見て、にっこりと笑った。