慌
廊下から声がした。
「あれ、もうカギ空いてる。」
その声に僕らはビクッとした。
すぐにお互い距離をとる。
そしてドアが開く音がする。
「あっ、百花? ………それに、泡凪くんだっけ」
という声が聞こえてきた。
「おはよう、支春。今日早いね〜」
百花さんがすぐに言葉を返す。
「おはよ〜、そう言う百花も来るの早いよ」
「そうかな?」
「そうだよ!それはそうと さっき何か話してたみたいだけど、」
「っ……」
少し間が空く。
「そんなにお二人さん仲よかったっけ?」
「いや〜普通くらいだよ。今日はたまたま話してただけ!」
「へえー、そうなんだ。まあいいや」
「あの、ところで支春。ちょっと私に付き合ってよ」
この一言で百花さんが話の流れを変える。
「えっ別に良いけど百花、急にどうしたの?」
「ちょっと二人で話したいから廊下出ようよ」
と言いながらさあ行こうみたい感じで、支春さんの背中を押して廊下の方に行こうとする。
百花さんは『ごめんね!』、という表情を見せてから教室を出ていく。
僕は少しほっとした。
支春さんに何か聞かれたとしても良い感じに言葉を返すことが出来なかったと思うからだ。
そこから教室に次々と人が入ってきた。
僕は席に戻り授業が始まるまで本を読んでいた。
ただいつもと違い今日は本に集中して読むことが出来なかった。
ずっと支春さんが、僕と百花さんの事で何か勘違いを起こしていないだろうか気になっていたからだ。