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当然です


 とりあず、ボク達はイスに座って、落ち着いて話をする事になった。ボクとユウリちゃんと、聖女様は対面し、イリスは和でいうところの上座の席に座り、お茶をすすっている。その間に、騎士達には壊れた家の修理や、壊れた家財を弁償してもらうため、買出しにいってもらったりしている。

 なんと言っても、ボクは聖女様の命を救った恩人だからね。これくらい、当然です。


「申し訳ございませんでした……まさか、ラルが魔族だったなんて……」

「油断のしすぎですね。女神からのお告げはなかったんですか?」

「はい……」


 しょんぼりとする聖女様に、イリスはちょっと、怒り心頭だ。偉そうにふんぞり返りながら、聖女様に接している。

 自分の言葉を信じなかった結果だぞと、言いたいみたい。


「あのクソったれの魔族とは、どこで出会ったんですか?」

「とある辺境の村です。村で一番の剣使いがいると聞き及び、直接会いに行き、その人柄と実力から、私が騎士になる事を勧めたのです。そして、様々な試験に合格した彼は、三ヶ月前から私の傍に仕え、献身的に働いてくれていました……まさか、そのラルが……」

「いつからかは分かりませんが、最初からだとすると、本当に間抜けですね。というか、間抜けすぎません?一体何をしてたら、三ヶ月も気づかずあんなのを傍に置いておくんですか?」

「イリス!」


 辛らつな言葉を言うイリスを、ユウリちゃんが咎めた。


「いいのです。コレは、私の至らなかったせいなので、イリスの言う事は、正しいです」


 聖女様は、たぶんわざと、イリスの名前を強調し、呼び捨てで呼んだ。暗に、女神でもなんでもないお前に、偉そうに説教をされる筋合いはないと、言っている。

 その事に対し、イリスが眉間にシワを寄せ、聖女様を睨みつけた。


「言い訳に聞こえるかもしれませんが、仕方のない事だったのです。ラルは、とある貴族様の推薦によって紹介された上に、学歴や家柄も由緒正しき方。それを疑うように接すれば、貴族様との信頼関係に、泥を塗ることになってしまうのです」

「はっ!本当に、言い訳ですねぇ!知りませんよぉ、そんな事!気づかなかった、アホで間抜けの貴女が悪いんですからねぇ!?」


 イリスは、ふんぞり返りすぎて、もう天井を向いている。背中はキレイに反らし、でもイスが傾いて、今にも倒れてしまいそうでハラハラします。

 そんなイリスの傾いたイスを、ユウリちゃんが密かに伸ばした足で、ちょんと触ると、イリスはイスごと後ろにひっくり返り、その頭を床に打ち付けた。凄い音がしました。

 音に気がついた、家の修理をしてくれている騎士達が、心配そうにそんなイリスを見ている。


「その貴族に関して、気がかりな事があります」


 そんな騎士達とは異なり、頭を押さえて床をのたうち回るイリスなんて、気にもとめない。ユウリちゃんは、そう切り出した。


「なんで、ございましょう」

「あの人を貴女に紹介したのは、もしかしたら、ヘンケルさんという貴族じゃないですか?」

「そ、そうです……!ブラッド・E・ヘンケル様です……でも、どうして……?」


 ユウリちゃんの推理は、当たった。凄いです。ボクは、拍手を送りました。


「その方の色々な話を最近よく耳にするので、もしかしたらと思っただけです」

「──ラクランシュ様」


 いつの間にか、上から降りてきていたレンさんが、フードを深く被り、顔をかくした状態で部屋の奥から姿を現した。


「貴女は……!」


 そんなレンさんの姿を見て、聖女様は席を勢い良く立ち上がり、その際に机に置いてあったお茶がこぼれてしまった。

 ボクとユウリちゃんは素早く動き、すぐにコップを立てて、布で拭く。どうにか床への被害は避けられました。


「ご、ごめんなさい。ですが……!」

「人目につかないよう、上で話しましょう」


 騎士達の目を気にしてか、レンさんはそう言って、聖女様を部屋の奥へと誘う。


「分かりました。騎士達よ。この家周辺の警護と、家の修理は任せました。私は上で、この方達とお話をして参ります」


 家の修理をしていた騎士に、聖女様はそう声を掛けた。


「ですが、聖女様……お一人では……」

「平気です。身を案じてくれて、ありがとうございます」


 案の定、反対してくるけど、聖女様はそう言い切ると、レンさんと共に家の奥へと消えていく。

 ボク達も、その後を追って2階へと上がった。ボクの片手には、頭にたんこぶを作ったイリスが抱えられている。向かったのは、レンさん達の寝室となっている、ベッドが3つ置かれた部屋だ。レンさん達のために新調したベッドと布団は、新品でふかふか。でも、ベッドが3つも入ると、けっこう狭いんだよね。まぁ、仕方ないけど。


「ラクラン──」

「しーっ。エルテリート」


 そんな狭い部屋に入ると、聖女様はまず、魔法を発動させた。部屋全体を包み込むかのようなその魔法は、特に変化はないけど、何かをしたという事だけは、分かる。


「この空間から、音が漏れるのを防ぐ魔法です。コレで、私達の会話が外に漏れる事はございません」


 窓のカーテンは閉められているので、外から見える事はない。コレで、音も視界も妨げる事ができたという訳だ。太陽の光を遮っているので、ちょっと暗いけど、そこは蝋燭の火をたいて、我慢。


「それで、どうして、行方不明であるはずのレンファエル様が、このような場所にいるのか、説明してもらえますね?」


 聖女様に応えるように、レンさんはフードを取り払い、その顔を露にした。

 あれ?この2人、もしかしてお知り合いなのかな?フードを取る前から分かっていたようだし、そんな気がする。


「……でもその前に、本当に、レンファエル様なのですね?」

「はい。ラクランシュ様」

「ああ……良かった……!よくぞ、ご無事で……!」


 聖女様は、涙を零しながら、レンさんの手を取った。レンさんも、そんな聖女様を笑顔で迎え入れて、喜び合う。やっぱり、知り合い同士だったみたい。

 そんな2人の様子を、クローゼットから覗く人物がいた。鼻血を垂らしているその人は、ネルさんです。その奥には、メルテさんもいる。ただ、酔っ払って眠ったままです。


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