変態が2人
2人が買ってきてくれたという服は、とても可愛かったです。
白を基調とした、上品な上着は、肘までという中途半端な長さ。袖先は黒く刺繍されていて、袖は広く、とても余裕があって締め付ける事はない。首元は襟が覆っていて、リボンで軽くしめると、しっかりと胸元を隠すことができる。ボクって、胸があんまりないから、前かがみになると見えそうになるみたいなんだよね。気をつけてはいるけど、こうして結んでおけば、安心だ。スカートは……前よりは長いかな。布が、ボクの太ももの中腹まで覆っている。その代わり、前側にスリットが入っていて、大事な場所が全く隠せていない。でも、安心して欲しい。スカートの下には、赤のショートパンツを履いている。コレによって、パンツは隠せています。そして、お馴染みのニーソ。履いてみると分かるんだけど、スカートの長さを綿密に計算しているようで、スカートの先と、ニーソの間で、絶対領域を作っている。
鏡の前で、そんな自分の姿を眺めてみる。自分で言うのもなんだけど、凄く可愛い。
「どうですか、お姉さま。着れました?」
「う、うん」
ボクが答えると、扉が開かれて、部屋にユウリちゃんとレンさんが入って来た。
「す、凄いです、お姉さま!可愛いです!可愛すぎます!」
「なんてお美しい……女神様ですか!?ネモ様は、女神様だったのですか!?」
2人に迫られて、ボクは部屋の壁際へと追い詰められる。そんな2人の目は、何かに取り付かれたように、真っ黒に染まっている。そして、紅潮した顔と、涎を垂らす2人の顔。興奮した様子で、その息は荒い。
「はぁはぁ、お姉さま、私、もう……」
「私もです、ネモ様。私、我慢ができません。美しすぎるネモ様がいけないんですからね?」
この2人、本当は凄く仲がいいよね。趣味もあいそうだし、ボクじゃなくて2人ですればいいと思うんだ。
……でも、それはそれでイヤだな。それって、ユウリちゃんが、他の人といちゃいちゃするって事だよね。そう考えると、心の中が凄くモヤモヤして、悲しい気持ちになってしまう。
とりあえずボクは、近寄ってくる変態2人の顔面を片手でそれぞれ掴み、締め上げた。
「あ、あだだだだだ!」
「わ、割れる!割れてしまいます!」
「でも、もっと、お願いしましゅ、お姉さまぁ」
「私も、もっと強くお願いしますぅー!」
ダメだ、この2人。ボクは、呆れて手を離すと、2人は床に倒れこみ、頭を手で抱えて座り込む。
「ありがとう、二人とも。今度は、破れないように大切に着るね」
一応お礼は言ったけど、2人は頭を押さえて悶えたままで、返事はなかった。
2人が買ってきたのは、ボクの服だけではない。レンさんと、ネルさんとメルテさんの服も、買ってきたみたい。3人とも、とある奴隷商人からいただいた男物の服装姿だったので、ようやくちゃんとした服装を手に入れる事ができた。
レンさんは、赤のワンピース型の服装。上下が一体になっていて、肌の露出は少なめだ。袖の先端と、スカートの先端からは、黒のふりふりが飛び出していて、可愛い。
ネルさんは、股下まであるシャツに、上から長いコート風の服を被り、上からベルトでとめている。下は、太く短めのズボンで、金の刺繍がキレイで印象的だ。
「悔しいですけど、レンさんはやはり、凄いプロポーションですね。レンさんじゃなければ、美味しくいただきたいです。あと、ネルさんは可愛いです。美味しくいただきます」
「ダメだからね」
2人を見て感想を述べるユウリちゃんに、ボクは釘を刺した。
こんなボク達6人と1匹の共同生活は、まだ始まってから数日だけど、それなりに上手く回っている。食事当番は、主にユウリちゃんとネルさんがしてくれて、ボクとイリスにレンさんは、買出し担当。ボクとユウリちゃんとイリスは、クエストで家を留守にする事もあるけど、3人と一匹が家にいてくれるので、安心だ。
帰ってきたら、ネルさんがご飯を作って待ってくれているし、ギルドから3人の生活費も出ている。何の不自由もない、平和な時間が続いている。
このまま平和な時間が続けばいいなぁと思うんだけど、大抵こんな時に限って、事は起きるんだよね。
「聖騎士団である!扉を開錠していただきたい!」
それは、新しい服のお披露目の最中だった。突然、家の外から、男の人の大きな声と共に、扉を乱暴にノックされる。
ボクはその大きな音に驚き、思わず頭を抱えて座り込んでしまうくらい。
「聖騎士団……!?何故、この家に……」
「いいから、隠れるわよ。レン様と私は、ベッドの下。メルテは……クローゼットにしまうわ。モルモルガーダーも、私達とね」
「ぎゅ」
ネルさん指示の下、ぎゅーちゃんが酔っ払って寝ているメルテさんの足を引っ張って、2階へと運んでいく。レンさんとネルさんも2階へと上がっていき、残ったのはボクと、ユウリちゃんとイリス。
「ところで、聖騎士団て何?」
ふと浮かんだ疑問だけど、知っていそうな3人は隠れてしまった。
「さぁ……名前は、凄そうなので、何かトラブルの予感はしますね」
「聖騎士団とは、聖女を守る、騎士団の事です。大きな町には聖女と呼ばれる存在が必ず一人はいて、彼女達は結界を張り、町をモンスターから守っているんですけど、当然聖女とは、それだけの事をやってのける存在なんですから、国や町にとって最重要人物となる。そんな聖女様を守る聖騎士団は、相当腕のたつ者ばかりで構成されています」
答えてくれたのは、意外にもイリスだった。どうして、そんな事を知っているのかと思ったけど、よく考えれば、イリスはこの世界の事を知っているみたいだった。女神様だった時の知識があるのかな。
「どうして、そんな事知ってるんですか?」
「この家にあった文献や、過去の記事を読み漁ってついた知識です」
ユウリちゃんの疑問に、イリスはそう言い放った。そういえば、イリスは家にあった文献を、ふと気づけば読み漁っている。
「め、女神様だった時に、この世界には来なかったの?竜の名前を知ってたみたいだけど……」
「そんな事もあったけど、それ千年前ですよ。当時はこんなに文明が発達していませんし、私が来たことがあるのは、その時その時代の数回だけです。なので、この世界の知識の大抵は、本から学んだ物です。あと、この家の前の主は、面白い趣味をしています」
「どうした、開けろ!いる事は分かっている!」
時間がかかりすぎたのか、外からもう1度、扉を乱暴に叩かれる。
分かったから、そんなに乱暴にしないでほしい。扉が壊れちゃうから。
「……いいですか、お姉さま?」
「うん……」
イヤだけど、仕方ない。ユウリちゃんがドアノブに手をかけて、意を決して扉を開いた。




