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チャームポイント


「お、お願いです……ちょっとでいいから、血をわけてもらえませんか」


 ボクは、竜にもう1度お願いをしてみた。争うよりは、やっぱり平和的に済ました方が良いしね。いきなり炎を吐かれてムカついたけど、ここは穏便にすませる努力を見せてみる。ボクって、大人だなぁ。


『それは、無理だ』

「な、何でですか……?」

『それが、ちょっと聞いてよぉ。アタシってば、千年前に封印されて、大地の奥底で眠ってたわけ。それが、つい数日前に訪れたヤツが、封印を解いちゃったのよ。アタシ解放って感じ。でも、その封印を解いた女がいけ好かないヤツでね。封印といてやったんだから、あの町をぶち壊せって言って来たの。まぁ別にアタシとしても、ちょっと暴れたい気分だったし、オッケーて感じ。ついでの腹ごしらえで、ここに来る途中の村々で、人間を食べてきたし、もうお腹いっぱい。あとは、あの町を壊して、そのあとは自由にさせてもらうわ』


 聞き間違いでは、ないです。今の言葉は、全て竜が話した言葉です。それまでの、威厳ある雰囲気台無しの、オカマ口調に、ボクは言葉を失った。


「あ、あの……どうして、そんな話し方を……?」

『なに寝ぼけた事言ってんのよ、おバカさん。オカマよ、オカマ。アタシ、オカマなの。特に、イケメンの人間の男が大好物な、乙女の心を持った、オカマの竜さんよ』


 竜はそういって、ボクに向かってウィンクをしてきた。竜のウィンクは、とても新鮮でした。


『……それと、その女なんだけど、貴女を殺すようにも言って来たわ。何か、心当たりある?』

「ボクを……?」

『そう。とても、強い力を持った女だったわ。たぶんアレは、人間じゃない。もしかしたら……だとすると、逆らうわけにはいかないの。ごめんなさいね。アタシ、女には興味ないし、消えてもらうわね』


 オマカの竜は、そう言って、再びボクに向かって炎を吐いてきた。

 無駄だ。ボクはそれを拳で砕き、辺りは更なる炎に呑まれる。

 そこへ、横から衝撃が襲った。ボクの身体は、その衝撃によって面白いくらいに飛ばされて、空中を飛ぶ。

 その衝撃は、竜の尻尾による攻撃だった。炎を吐いた直後に、竜はくるりと一回転。長い尻尾を、回転の勢いそのままに、ボクに向かって繰り出して来たのだ。その衝撃たるや、もの凄い物だった。まるで、勇者時代に出会った、自爆して周囲数キロメートルを灰燼に帰した、ゴーレムの捨て身の一撃に匹敵するかのような衝撃だ。さすがに、ちょっと痛かったよ。


『まだまだ、いくわよぉ!』


 飛ばされていくボクに、竜は追いついてきた。そして、ボクを先回りすると、待ち構えたその巨体で、体当たり。ボクは、それまでとは反対方向に飛ばされて、地面に激突。元の、小高い丘のてっぺんに戻って来る事になった。丘のてっぺんは、ボクを中心にクレーターを作り、抉れ、ちょっと標高が下がったかな。


『ラブリーデスファイア~!』


 地面に叩きつけられたボクに向け、竜は炎を吐いてきた。気持ちの悪いネーミングだけど、それは今までの物とは、レベルの違う炎だ。

 その炎は蒼く、威力も、大きさも段違い。巨大な蒼い炎は、ボクもろとも、丘を丸ごと飲み込み、そして、それまであった丘は、姿を消した。緑の丘は、一瞬にして、茶色の大地へと姿を変えてしまいました。後に残るのは、茶色の土と岩が剥き出しになった、草一本生えていない大地です。


『……んふ。ちょっと、張り切りすぎたかしら。なんせ、女神様が殺せと言ってくるような相手だから、気合いれすぎちゃったわね』


 大地に降り立って、独り言のように呟いた竜だけど、ボクは生きている。周囲に燃え広がる蒼い炎に包まれながら、その間をすり抜けて竜の前に姿を現すと、竜は驚き、赤い炎の息を、大きく吐いた。

 服が、ちょっと燃えてしまった。他にも、所々破けてしまっているけど、直せるかな、コレ。余計なお金は、あんまり使いたくないんだけどなぁ。


『貴女、本当に人間……?』

「人間ですよ。……それより今、女神様って言いました?」

『ええ、そうよ。この世界を作った、崇高なる女神様。その女神様が、貴女を処分するよう、アタシにお願いしてきたの。その理由が、今ハッキリと分かったわ。貴女、人間としては規格外すぎる。この世界の趣旨に、合わないわ。だから、この世界から排除するため、アタシが呼ばれたのね』


 女神様が、ボクを殺そうと……?

 ボクは、女神様は基本的に、尊敬しているし、敬っている。イリスとか、露出狂の行き遅れ風ファッション眼鏡おばさんとかは別として、人々を導いてくれるし、世界を救ってくれる存在だと思っている。それなのに何故、ボクを殺そうとするの?

 その答えは、ここに来る前にイリスが言っていた事にある。

 〝露出狂の行き遅れ風ファッション眼鏡おばさんが、ボク達を嵌めようと動いている可能性が、ある〟

 ボクが死んでしまえば、勇者の加護はなくなり、残されたユウリちゃんとイリスは、運命に流される可能性が高い。それが、露出狂の行き遅れ風ファッション眼鏡おばさんの狙いだ。


「……情報、ありがとうございます」

『いえいえ。どうせ、貴女はここで死ぬんだもの。何も、感謝する必要は、ないわよぉ』

「そうですか。それじゃあ、感謝はしません」


 ボクはそう言って、竜に向かい、地面を蹴って真正面から突撃。その拳を、竜の首の付け根の辺りに向かい、繰り出した。

 辺りは、衝撃に包まれる。そして、竜の巨体が、地面から浮かび上がる。


『ぼっ、がっはぁ!』


 竜の巨体は、あまりにも重くて、そこまで飛ばすことができなかった。3回ほどでんぐり返しをうたせて、すぐに起き上がる。それから、口から胃液を吐いて、ボクを睨みつけてきた。

 割と、強めに打ったつもりだったんだけど、死ななかった。彼は、いや……彼女?は、間違いなく、この世界に来てから最強の敵である。


『人間が、調子にのるんじゃないわよ!』


 激昂した竜が、ボクに襲い掛かってくる。

 牙をむき出しにしての、噛み付き攻撃だ。ボクはそれを、竜の足元に滑り込んで回避。そんなボクに向かい、竜の爪が襲うけど、それらを全て回避。背後に回りこむと、長い尻尾の先端を、片手で掴み、ボクを軸として回転させようと、力をいれる。でも、さすがに竜は重すぎて、踏ん張られると中々動かない。それでも、ちょっとずつ動き始めていくので、ここで両手で掴み、更に力を加えると、竜の身体が浮いた。

 竜の巨体が、回転の遠心力によって空中に浮かび、一回転させた所でひっくり返し、地面に叩きつけて見せた。

 更にボクは、倒れた竜の、長くて邪魔な尻尾の付け根の辺りに向かい、蹴りを繰り出す。足の先端で抉るような蹴りを、何度も、何度も。すると、皮膚を覆っていた鱗は砕け、中にあった竜の皮膚から血が噴き出し、やがて、ボクの蹴りの威力に耐えられなくなった尻尾は、あっけなく千切れてしまった。


『きゃああぁぁぁぁ!アタシの、チャームポイントがああぁぁぁ!』


 痛みとかより、そっちの方が重要なんだなぁ。そう思いながら、ボクは懐からビンを取り出すと、噴き出した血を回収。

 とりあえず、最重要課題は、コレで完了だ。


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