このクッション、どこで売ってますか
ボクに、奴隷ができました。とても可愛い可愛い、女の子の奴隷。そんな子が、ボクの奴隷です。エロゲの時は、あんな事や、こんな事をして楽しんだ物ですが、実際そんな奴隷ができて、ボクにあんな事やこんな事をする度胸は、あるのでしょうか。
うん。ないです。
健やかに眠る、寝顔を見ているだけで、満足です、ぐへへ。
ボクは、拘束台の上で眠るユウリちゃんの頬を突きながら、そんな事を思っている。
「貴女、いつまでそうしてるの。手を出すなら、さっさと出しちゃいなさい」
その声に反応して、ボクは拘束台の影に身を潜めた。
声の主は、ラメダさん。この奴隷商館の主で、セクシーな女の人。大人の色香たっぷりの、美しい女性だ。その口には、煙管がくわえられ、白の毛皮のコートを、下着の上から着ている。
「……」
ボクは、拘束台から目だけを出して、様子を伺う。
「奴隷は、奴隷らしく、物として、自分の好きなようにしていいのよ」
「ぼ、ボクは、ユウリちゃんを奴隷にしてくださいなんて、い、言っていません……」
「あら。てっきり、この子の主人を殺してまで、奴隷にしたいとのかと思ったんだけど、違った?」
ボクは勢いよく首を横に振る。違います。断じて違います。アレは、事故です。あのおじさんが、悪いんです。
「ま、別にいいけど」
「ん……あれ。ここは?」
「ユウリちゃん!」
目を擦りながら目を覚ましたユウリちゃんに、ボクは思わず抱きついてしまった。
「ね、ネモさん……?コレは、一体……ここは、どこですか?」
「貴女は、主人を失ったことにより、奴隷決壊を起こして死にかけてたの。それを、その娘が助けてくれーと、私に泣きついてきたというわけ。危うく殺されかけたけど……」
「奴隷決壊……そういえば、そんな事言われてたような……」
「それで、奴隷決壊をおこした奴隷は、すぐに新たな主人を得ないと、そのまま死んでしまうの。その娘が新しい貴女のご主人様だから、よろしくね」
「え」
それは、ボクも初耳。奴隷決壊を起こしたら、絶対に誰かが主人にならないといけないんだ。でも、なんでボクにしてくれたんだろう。自分も主人になれただろうに、ボクにしてくれた事に、疑問を持つ。
「ネモさんが、私の……ご主人様……」
「ご、ごご、ごめんね、ユウリちゃん。ボクなんかが、そうなっちゃって、嫌だよね」
「いえ、最高です。どうぞ、私に何なりとご命令ください。実を言うと私、女の人の方が好きなんです。特にネモさんのような方、凄くタイプです。どうぞもみくちゃにしてください。どんなご命令も承ります。どのようなプレイにも、ついていきます。なので、ネモさんの……いえ、お姉さまのお好きになさってください!」
ユウリちゃんは、目を輝かせた上に、鼻息を荒くしてボクに迫った。そう言いながらボクの手を握ってくる力は、異様に強い。そして舌なめずりをしながら、迫ってくる顔は、ちょっと怖い。家族以外の人に、ここまで顔を近づけられるのは、初めて。ボクの頭は、恐怖と恥ずかしさで、沸騰寸前だ。
あと、勘違いしているようで悪いけど、ボクは男だ。元だけど。
「奴隷紋に向かって命令をすれば、奴隷に強制的に命令を聞かせる事ができる」
「ユウリちゃん、ボクから離れて!半径10メートル以内に近寄らないで!」
ラメダさんの助言を聞いて、ボクがそう命令すると、ユウリちゃんの身体が浮かびあがり、壁へと押し付けられた。見えない何かがユウリちゃんの身体と顔を潰し、特にその顔は潰されている事により、酷い顔。美少女台無しの、残念な顔だ。
「ちゅ、ちゅぶれる……!」
「わ、わーごめんね、ユウリちゃん!今のなし、今のなし!」
ボクはユウリちゃんの訴えに、慌てて命令を撤回。すると、ユウリちゃんは壁から剥がれて、その場に崩れ落ちる。
「だ、大丈夫、ユウリちゃん……?」
「へ、平気ですよ、お姉さま。私、実はドMですので。もっと、存分にいたぶってください」
うわぁ……何故か、顔を赤くして足をもじもじさせ、興奮しているようだ。ちょっと、ドン引きです。
「ところで、お金」
「え」
「奴隷紋の刻印は、本来なら50000Gからだけど……今回は特別に、25000Gでいいよ」
あ。Gって、ガルスって読むんだ。へぇー……。Gという言葉に、ボクはいい思い出がない。あの、黒い悪魔を連想させるから。
いや、それどころじゃない。ボクってば、一文無し。そんなお金、どこにもないよ。どうすればいいの。
「あら?もしかして、払えないのかい?」
「……」
ボクは、ラメダさんから目を逸らし、顔を伏せるしかない。冷や汗が溢れて、止まらない。どうしよう。まさか、お金が必要だなんて思わなかった。
「へぇー……でもだーいじょーぶ。払えないのなら、払えないなりに、代わりの物があるから」
「ほ、ホント……ですか!」
希望を持って顔を上げると、そこにはニヤリと笑う、ラメダさん。そして、ボクの顎を、ラメダさんが掴み取り、ボクの唇に、ラメダさんが唇を重ねてきた。
「んっ、ふっ!?」
「んふふ……れろ……ちゅっ」
しかも、口の中に、ラメダさんの舌が進入してくる。拒めずに、受け入れると、互いの舌と唾液が混ざり合い、えっちな音をたてる。抵抗しようとしたけど、身体に力が入らない。何故だか、すごく気持ちよくて、なされるがまま。
そうして、どれくらいの時間が経っただろう。ようやく、ラメダさんが口を離してくれると、ボクは息も絶え絶えに、蕩けた目でラメダさんの目を見つめる。
「ぷはっ……はぁ、はぁ」
「ごちそうさま。とても、美味しかったわ。最高品質ね」
ニコリと笑うラメダさんから、ボクはもう、目が離せない。ラメダさんの顔も、ちょと熱を帯びていて、赤みを帯びている。先ほどよりも更に魅力的で、魅惑的。
更に何かを期待するような気持ちが溢れて来て、ボクはおかしくなってしまった。もう、顔が熱くて、沸騰しそう。というか、沸騰してる。
「ぼふっ!」
ボクは、頭から煙を出し、倒れた。
「あん」
倒れた先で、柔らかなクッションがボクを受け止めてくれた。なんだろう。とても良い匂いがするし、心地よい。このクッション、どこで売ってますか、言い値で買います。
「あ、ああ、ああな、あなたたたたは痴女ですか!?今すぐお姉さまを離して!というか、あんな激しいキスをお姉さまと……なんて羨ましい事を……!」
「貴女も、私としたい?」
「したい!あ、しません!私はお姉さま一筋です!」
そんな、ラメダさんとユウリちゃんの会話を聞きながら、ボクは、完全に意識を手放した。




