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カオスです


「いや、しかし、ヘンケル氏の様子は、前からおかしいと思っていたのだ。ヘンケル氏には、このギルドに初心者向けの簡単なクエストを委託してもらっているのだが、近頃ヘンケル氏からのクエストを受注した冒険者が、行方不明になるという不可解な事件が、多数起きている」

「父が……裏で、何かしているのでしょうか」

「……私は、ヘンケル氏とは、親交がある。子煩悩の父で、口を開けば貴女の自慢話ばかり。そんな、父親だ。彼が、そのような悪事に加担するとは、考えられない。ましてや、自慢の娘をオークどもの貢物にするなど、想像もできん。何かしらの、事情があるのかもしれないと考えるのが、自然だ」


 その後の話し合いで、レンファエルさん達は、キャロットファミリーが、秘密裏に匿う事になった。幸いにも、受付などの目立つ場所はショートカットしてきたし、レンファエルさん達を目撃した人は、わずかな人に留まっている。

 それに、ここには腕利きの冒険者が大勢いる。何かあっても、このギルドの庇護下にある限り、身の安全は保証されているようなものだ。ボクとしても、それなら安心できる。


「あ、それと、メイヤさん。ありがとうございます、家のイリスがお肉を奢って貰ったみたいで……」

「構わないさ。いい食べっぷりだったし、私も楽しませてもらった」


 ユウリちゃんが、まるで子供がお世話になった、親のように、お礼を言った。

 そのお礼に、ペロリと舌なめずりをして答えるメイヤさん。その表情は、赤みを帯びて、色っぽく満足げ。

 一方のイリスは、縮こまって青ざめた表情で、ボクの腕を握る力を、強めてきた。本当に、何があったの?でもコレも、イリスの自業自得だ。我侭を言わないで普通に過ごしていれば、何もなかったはずだよ。だから、メイヤさんに預けたボクは、悪くない。と、いう事でいいよね?


「それにしても、モンスターの進入とは、珍しいこともあるものだ。丁度、お前達が帰ってきた時と重なるとはな……これも、偶然か?」


 メイヤさんの疑問に、ボク達は気まずく、視線を下げ、黙った。何ともいえない空気となり、事情を知らないメイヤさんは、首を傾げる。


「あ、あの、ですね……」


 口を開いたのは、ネルエルさんだった。


「その、モンスターなんですけど、色々と事情がありまして、連れて来てしまいまして……」

「モンスターを……?」

「でも!悪いヤツじゃないんです!あたしたちは、その子に色々助けられて、もう仲間と言うか、友達みたいなもので……!」


 メイヤさんが、明らかに怪訝な表情を見せて、メルテさんが慌てて言いつくろった。


「……はぁ。ただでさえ、厄介な客人だと言うのに、それに加えてモンスターを町に連れはいるとは、本当に困った客人だ。それで、そのモンスターとは?」


 ボク達の視線が、ユウリちゃんに集まった。そのユウリちゃんが、手を差し出すと、懐から飛び出したぎゅーちゃんが、その掌に飛び乗る。


 ──その瞬間、殺気がたった。


 気づけば、メイヤさんがソファを飛び上がり、刀を抜いている。その対象は、ユウリちゃんの掌にのった、ぎゅーちゃんだ。


「っ……!」


 ボクは、その刀を、人差し指と、親指で摘んで受け止めた。

 それには、メイヤさんも驚いた表情を浮かべ、下がろうとするけど、刀はボクが掴んでいるので全く動かない。


「は、……え?」


 ようやく状況を理解したユウリちゃんが、声を出した。


「どけ、ネモ。その生物は、危険だ。下手をすれば、町そのものが滅びるぞ」

「……ぎゅーちゃんは、もうボクの友達です。と、友達を傷つける事は、させません!」

「待ってください、メイヤさん!その子は……モルモルガーダーは、私達を助けてくれたモンスターなんです!どうか、刀を納めてください!」


 メイヤさんに抱きつき、そう叫んだのは、ネルエルさんだ。ぎゅーちゃんのために、必死な様子で懇願してくれて、メイヤさんの刀に篭められた力が、弱まった。

 それを感じて、ボクも刀を手放すと、メイヤさんは、刀を鞘に納めた。


「はぁ」


 ボクは、安心して胸を撫で下ろす。


「……本来であれば、避けることもできたはず。だが、そいつはそこから、動かなかった。下手に動いて、ユウリに被害が及ぶのを、恐れたのだな」

「ぎゅ……」

「こんな化物じみたモンスターを、町に連れ込むなど、どうかしているぞ……。私はもっと、こう……可愛い系のモンスターだと思っていたのに。このやりようのない気持ち、どうしてくれる?」

「あ、あの……メイヤさん。その、何を?」


 メイヤさんは、抱きついていたネルエルさんを抱きしめ返して、離さない。

 ネルエルさんも、メイヤさんが好きな、小さくて可愛い人に入るみたい。ただ、イリスに対する程情熱的ではないので、ギリギリと言った所なのかな。


「確か、ネルエルと言ったな。もう結婚できる年だな?と、いう事は、合法ロリという訳だ。オマケに、これ以上の成長の望めない、成熟したロリ。それでいて、この乳はなんだけしからん。ああもう、可愛いなぁ!」

「なんなの、この人!?」

「その女は、小さな女性が好きな、変態です。気をつけないと、貞操を奪われますよ……」

「て、貞操……は、離し……離しなさい、変態!誰か助けてぇ!」


 暴れるネルエルさんだけど、メイヤさんはそんなネルエルさんを抱き上げて、密着した状態のまま離そうとしない。


「ああ、ネルがメイヤさんに……」


 そんなネルエルさんとメイヤさんの状況を、レンファエルさんは顔を真っ赤にして、顔を手で覆いながらも隙間からしっかりと見て、興奮している。そんなむっつりさんなレンファエルさんなんだけど、何か、見ていられないような状況ってある?レンファエルさんは、ボクにもっと凄い事を要求してきたりしてた気がするんだけども。


「ネルエルさんが、メイヤさんに……しゅ、しゅごい。ダメ、そんなの。お姉さま!私、凄く興奮します!たまりません!」


 ここには、そんな2人の様子を見て、興奮する変態がもう1人います。ユウリちゃんです。


「あの……話が大分逸れたんですけど、ぎゅーちゃんの事は、もう良いんでしょうか……」

「ああ、うん。いいんじゃないか。その代わり、ネモがしっかりと管理しろ」

「ぎゅう……」


 軽いよ。あんなに強い殺気を放って、殺そうとしたのに、何なのさ。


「よかったな、モルモルガーダー!がはは!」


 笑い飛ばすメルテさんと、助けを請うネルエルさんに、そんなネルエルさんを興奮した様子で抱きしめるメイヤさんと、それを見て興奮する、ユウリちゃんとレンファエルさん。イリスは怯えた様子で、見ている。

 カオスです。


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