おぇ
「ぎゃあああぁぁぁぁ!」
突然、けたたましい、女性の叫び声が聞こえてきた。それは、ボク達の目の前に建っている、ギルドの2階の窓から聞こえてきた。
ボクは、その声に聞き覚えがある。
「イリス……!」
そう。その叫び声は、イリスの物だ。イリスの身に何かが起きて、叫び声をあげている。
「……お姉さまっ!おぇ」
グロッキーなユウリちゃんが、早く行けと、目で訴えてくる。
ボクは、それを見て頷き、ジャンプ。一気に、2階の窓へと飛び移ると、開いていたその窓から、部屋の中に転がりながら侵入した。
「イリス!」
目の前に広がった光景に、ボクは呆然とした。
そこには、首輪に繋がれた、イリスがいる。その服装は、面積の狭めな水着を着せられいて、大事な所がほぼ隠せていない。頭の上には、ちょこんとネコミミのカチューシャが乗せられていて、お尻には尻尾がついている。その背中には、赤いリュックのような物を背負っていて、それがランドルセルのようにも見えなくもなく、イリスの幼さを更に演出していた。
「はぁはぁ。イリスぅ。可愛いよぉ。凄く、いいよぉ」
部屋に入ってきたボクに気づいているはずのメイヤさんは、ボクに見向きもしない。興奮して鼻息を荒くし、ベッドの上で首輪に繋がれて身動きができないイリスに、今にも飛び掛りそう。
そんなメイヤさんの様子は、変質者そのものだ。
「ね、ネモ……ネモぉ!」
ボクの姿を見たイリスは、その大きな瞳から、涙を流す。そして、ボクに駆け寄ると、ボクに抱きついて顔をこすり付けてきた。そんなに、ボクに会いたかったんだね。ここまで喜ばれると、こちらまで嬉しくなってしまう。
首輪の綱を持っていたメイヤさんは、イリスの首が絞まらないように、その綱を離して床に垂れ下がっている。状況はどうであれ、イリスが大好きなメイヤさんだから、イリスが傷つくような事はしない。
「ネモぉ、おおぇぇえぇ!くっさ!げほ、げほ!」
イリスはすぐにボクから離れて、その場に突っ伏す。そんな、臭いと言われるとちょっと傷つくけど、確かに臭い。下水道の臭いが染み付いてしまっているみたいで、酷い臭いだ。更に、ユウリちゃんとレンファエルさんの、ゲロもついているので、コレが更に臭くしているんだろうなと思いました。
「あ、あの、メイヤさん。イリスのこの格好は一体……」
ボクは、恐る恐る尋ねました。本当に、恐ろしいけど、頑張った。
「ん。ペットプレイと言うやつだ。お前がいない間、イリスには他にも色々と、楽しませてもらったぞ。……それにしても、臭いな」
メイヤさんは、イリスのように床に突っ伏したりはしないけど、鼻を摘んで眉をひそめた。
「こ、こいつ……マジでヤバイです。ホントに、ヤバイです」
一体、何があったんだろう。イリスの様子から察するに、相当凄い事をされたみたいだけど、あまり触れないほうがいいだろうと思う。
でも、ネコミミ幼女なイリスは、ちょっとだけ可愛いと思った。ただ、無理矢理着せるのはどうかと思いますよ、メイヤさん。
「何か、非難の目を私に向けているようだがな、ネモ。誤解されないように言っておくと、高級な肉を奢ってやる条件として、イリス自ら、こういった事をしてもいいと提案してきたのだぞ」
「あー……」
それなら、自業自得でしかない。でも、食べ物につられて身売りとか、ホントに子供みたいだよ。心配になっちゃうよ。いくら知り合い同士だからと言って、その辺はちゃんとしないと。今度、ちゃんと言い聞かせないとダメだよね。イリスの教育のためにも。
「と、ところで!ユウリはどうしたのですか?死にました?」
「し……死んでないよ!下にいるから、今連れて来るね」
と、言う訳で、ボクは一旦窓から飛び降りて、全員をこの部屋へと運び入れた。
「コレは……全員とりあえず、部屋から出てくれ。そして、風呂に入ってくれ」
レンファエルさんの姿に驚いたメイヤさんだけど、顔をしかめてすぐにそう言った。そんな事、どうでもよくなるくらい、ボク達の放つ臭いは強烈だ。人数が増えれば増えるほど、放っている臭いが二乗されて、更に臭くなる。
ボク達は、部屋から追い出されるようにして、ギルド内のお風呂場へと案内された。このお風呂場は、クエスト帰りの冒険者が、汗を流せるように設置された施設らしい。そこを貸切にしてくれた。
「うひょー!いちばーん!」
「待ちなさい!その汚い身体で、絶対にお湯に浸からないでよ!」
「分かってるってー。信用ないなぁ」
多分、ネルエルさんが止めなければ、メルテさんはそのままお湯に突っ込んでいたと思う。タオルを肩にかけて、渋々といった様子で、身体を洗い始めた。そんなメルテさんの、服を取っ払った、全身盛り上がった筋肉のついた肉体美たるや、素晴らしい。
それを見届けて、ネルエルさんも、髪の毛から洗い始める。その仕草の1つ1つで、小さな身体とアンバランスな、大きな胸が揺れて、存在をアピール。
「さ、お姉さまも見てないで、一緒に行きましょう」
「は、あ……」
そんな、メルテさんとネルエルさんに見惚れていたボクに、バスタオル1枚の姿になったユウリちゃんが、そう言って来た。全身白く細く、ボクよりも大きな胸は、まだ成長途中。幼げながら、少しだけ大人っぽいその表情は、服を脱いだことにより、ちょっと色っぽく見える。その姿は、まるで天使様。魅力溢れるユウリちゃんに、ボクは目を奪われた。
「……お姉さま?」
「っ……!」
ボクは、慌ててユウリちゃんから目を逸らした。
なんだろう、この気持ちは。ネルエルさんや、メルテさんの裸を見ていたときとは、全く違う気持ちだ。心臓が痛いくらい早く鳴って、苦しいよ。
「ネモ様……」
視線を逸らした先では、レンファエルさんが服を脱ぎ、バスタオル1枚で身体を隠していた。ボクの視線に気が付いて、頬を赤く染めて、身体をくねらせた。レンファエルさんの、大人っぽいその身体と仕草は、ボクの頭に更なる負荷をかけて来る。もう、沸騰しそうです。
ボクは、我慢できずに、お風呂場を後にした。
「ちっ」
その際に、ユウリちゃんの舌打ちが聞こえてきたけど、止まらずにボクは、廊下へと飛び出す。
大体にして、どさくさにまぎれて、ユウリちゃんがボクの手を引っ張って連れてきたのが、原因だ。ボクは一緒に入りたくなかったし、入れない。あんな、女の人の楽園みたいな所にずっといたら、気絶して溺れ死んじゃいます。
「あ。やっぱり、出てきた」
廊下を出た先にいたのは、イリスだった。その格好は、先程の水着姿ではなく、いつもの魔法少女風の服に戻っている。ただ、頭にはネコミミがのったままだ。忘れてるのかな。
そんなイリスが、鼻を摘んで放ったその言葉から察するに、ボクを待っていたみたい。
「あっちに、シャワーがあるので、そこなら一人でゆっくりできますよ」
「……イリス!」
ボクは、そんなイリスの情報に感動して、思わずイリスを抱きしめてしまった。
「抱きつかないでくださ……くっさ!おえ!おえぇぇぇ!」
「あ、ごめん……」
「……い、いいから、行きなさい」
「うん!」
ボクは、青ざめたイリスに感謝しつつ、イリスが指し示してくれたシャワー室へと突撃した。




