パンツは汚くない
この場に残っているのは、オークだった肉の塊。全部、死んでいる。レベル30前後だったから、特に何もない、ただの雑魚だった。
「ユウリちゃん、終わったよ」
時間にして、5秒くらいかな。ボクは、ユウリちゃんにそう声を掛けた。
「お姉さま!」
目を開いたユウリちゃんは、ボクを発見すると、すぐに駆け寄ってきた。怖くて、甘えん坊モードが発動してるのかな。こうやって普通の女の子のような反応をするユウリちゃんは、本当に可愛い。そんなユウリちゃんの頭を、ボクは安心させるように撫でてあげた。
「ひゃ!?」
そう思ったのも束の間で、ユウリちゃんはボクの太ももの、絶対領域の辺りを触ってきた。
「ぐへへ」
そして、気持ちの悪い笑みを浮かべて、もう一方の手でお尻を揉んでくる。
ボクは、そんなユウリちゃんの頭を片手で掴んで、引き離した。そしてそのまま、空中に浮き上がらせて、身体がぷらぷらと揺れる状態になる。
「あ、あだだだだだ!つ、つぶれ……ああ、でも!イイです、お姉さま!凄く、イイ!も、もっと、いたぶってくださいぃ!」
辛い状態だと思うんだけど、むしろ喜ぶユウリちゃん。こんな変態さんにセクハラされた時、どういう対応が正しいのだろうか。誰か、教えてください。
ボクは手を離して、ユウリちゃんを解放。ユウリちゃんは、地面に突っ伏して息を整える。
まったく、ちょっと可愛いと思ったら、すぐコレだ。ある意味で、この世界でボクにとっては、男の人よりも、ユウリちゃんの方が危険な気すらしてくるよ。
「うへへ」
目の前で突っ伏したユウリちゃんが、いつの間にか顔を上げて、いやらしい笑みを浮かべていた。その視線は、ボクの股を向いている。
その視線の意味に気づいたボクは、スカートを両手で押さえて、後ずさり。
「私が選んだ下着、しっかりと履いてくれているんですね!私、感動しました!」
「だ、だって……女の子の下着って、よく分からないから……」
ボクがつけているのは、上下共に黒の下着だ。パンツは隠している所が少なくて、ちょっとセクシーな下着。特に、お尻は本当に隠せているのかなというくらい、隠せていない。ブラジャーは、男だったボクにとって、鬱陶しくて、必要あるのか分からない。でも、ユウリちゃんに絶対につけるように言われているので、ちゃんとつけている。
そんな黒の下着を選んだのは、勿論ユウリちゃん。町に買い出しに行ったときに、ユウリちゃんが選んでくれて、それを購入した。ちなみにユウリちゃんは、白の清潔感のある下着を選んでいたけど、今はどんな下着をつけているのかな。ちょっとだけ、気になります。
「お姉さまが望むのなら、今すぐ脱ぎますよ……?」
ボクは、自然とユウリちゃんの股間に、注目してしまっていた。その視線に気づいたユウリちゃんが、色っぽく身体をよじり、ショートパンツに手をかける。ボクが脱いでと言えば、本当に今すぐ脱いでみせてくれると思う。
「い、いいから!絶対に脱がないで!見たくないよ、そんなの!き、汚い!パンツって、汚いもん!見ても、なんの得にもならないよ!」
「そんなに汚くありませんよ、私のパンツ!?せ、清潔にしてますし!?それに、お姉さまのパンツはもっと、汚くありません!私、舐めろと言われたら喜んで舐めますし、食べろと言われたら食べれます!だからもっと、パンツに魅力を感じて、パンツを大切にしてあげてください!」
「何言ってるの!?」
また訳の分からない事を言い出すユウリちゃんに、ボクは本気で引きました。
とりあえず、これ以上ユウリちゃんの変態発言を聞かないよう、言い合いはそこまで。ボクは、パンツは汚くないというユウリちゃんの主張を認め、納得したユウリちゃんと共に洞窟の奥へと進んでいく。
「人の心配をしている場合ではない事は分かっていますが、イリスや、メイヤさんは無事でしょうか」
「……うん。きっと、大丈夫だよ」
メイヤさんなら、きっとイリスと共に、無事にオシュポットの花から逃げ切っているはず。今はメイヤさんを、信じるしかない。
とはいえ、ユウリちゃんを助けるためとはいえ、イリスを置いてきてしまった事が、気がかりだ。ボクから離れたら、この世界において、エロゲ的なイベントに遭遇する運命下にあるイリスやユウリちゃんは、抵抗する術がない。だからこそ、ボクの代わりにと思い、メイヤさんにイリスを頼んで来たのだけど……。今思えば、そう言ったイベントなんかよりも、よっぽど心配な人に、イリスを預けて来てしまった気がして仕方ない。
「ん?」
ボクはふと、違和感を感じて、立ち止まった。
「どうしたんですか?」
「この壁、何か変じゃない?」
ボクはそう言って、岩壁に手を触れる。だけど、それは普通の岩で、何の変哲もない、ただの岩壁だ。でもわずかに、魔法のような物の気配を感じる。怪しい。
試しにマップを開いてみると、やっぱりこの先に道が続いている。先は行き止まりみたいだけど、こうして塞がれているのを見ると、開けたくなってしまう。
「ただの、岩みたいですけど……」
「そうでもないみたい」
ボクは、手に触れた岩壁を押し込んで、力をいれてみた。すると、もろくも壁が、崩れ去っていく。崩れたはずの岩は、音もなく消え去って、元々なかったかのよう。壁は、崩れたというより、消えたという方が正しい。道を隠していたのは、地面に隠されていた魔法陣だ。赤く光るそれが、壁を作り、この道を塞いでいた。
「コレは……魔法というヤツですか?」
「うん。ボクも、魔法はよく分からないけど、たぶんそう。行ってみよう。何か、役にたつ物があるかも」
道が隠されていたということは、隠す物があるはず。ゲーム的に言えば、何かのレア装備とか、レアアイテムとか、もしかしたら、凄く高く売れるお宝とか。そう言った物があっても、おかしくはない。
はやる気持ちで、ボクはユウリちゃんの手を引いて駆け出した。
「あ」
「え」
「へ?」
まず、ユウリちゃんが、何かに気づいて声をあげた。それから、ボク達が進もうとした先にいた女の人が声をあげて、ボクも彼女の存在に気が付いて声をあげた。
「あああああああぁぁあぁぁぁぁ!」
「ひいぃぃぃ!?」
「きゃあああぁぁぁぁ!?」
女の人が、ボク達を指差して叫んだので、ボクまでも驚いて叫んでしまった。それに触発されて、ユウリちゃんまでもが叫び声をあげる。
洞窟に、ボク達3人の声が響き渡り、耳をつんざくような叫び声が反響しました。




