表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
487/492

竜の襲来


 ギルガルドは、世界を支配して暴虐の限りを尽くした悪人です。敗北した人類は、彼の意のままによって凌辱されたり、殺されたりと、滅茶苦茶な世界となってしまいました。

 その世界を、ボクはある意味一番よく知っていると思います。相当やりこんだからね。モンスタフラッシュ。


「知っているのですか、ネモさん?」

「……は、はい」


 ボクを壇上に留まらせ、その名前を聞いて激しく反応を見せたボクに、聖女様が尋ねて来ました。

 ボクは、冷や汗を垂らしながら知っていると答えます。

 思えば、聖女様の先祖であるゲームのキャラクター。セフィールドもボクはゲームの中で倒したりしています。敵対する勇者パーティのメンバーである彼女は、ゲームの主人公であるボクに敗けて、凄い事になりました。勿論勇者も同じ目に合って、そのシーンは脳裏に焼き付いています。


「い、イリス。ボクがやってたゲームって……」

「今更気づいたんですか?貴方が操っていたのは当時の魔王ですし、その時出て来た勇者等も、この世界が魔王に敗北した世界の物です。つまり貴方は、実際にあった出来事をゲームによって再現された物を楽しんでニタニタと笑っていたという事です」

「……」


 ボクは、凄い罪悪感に襲われました。

 アレはゲームの世界での出来事であって、実際にあった訳ではない。そう思っていたからこそ、楽しめていたんです。少し前にその事はイリスからやんわりと教わってはいたけど、あまり深くは気にしないようしていました。でも相手が、聖女様の先祖だったり、勇者リルだったりと考えると、もう楽しんだりは当然だけど、気せずにスルーしたりなんかはできません。むしろ、楽しんでいたころの自分を殴り飛ばしたいとすら思います。


「……あの時、ロガフィさんの精神の中でボクが倒した、勇者リルが倒せなかった魔王。アレは……」

「そう。アレが、勇者ギルガルドです。貴方はゲームの中の主人公を倒したんですよ。気づかなかったんですか?」


 そんな事を言われても、ゲームは一人称で進むゲームだから主人公の顔とか出てこなかったんだよ。出てくるのは身体……それも主に、下半身くらいでした。RPGパートでミニキャラは出て来たけど、それじゃあよく分かりません。


「よく分からんが、貴様はギルガルドを知っているのか」

「う、うん。たぶん、知ってる」

「ギルガルドは、人間の勇者から受けた傷が回復せず、しばらくして魔王の座を退いたと記されている。人間の勇者は魔王に勝てなかった愚か者として処分されたようだが、ギルガルドは勇者を退けた英雄として丁重に扱われた。……だが、敵が多すぎて結局は暗殺されたようだがな。昔は魔界も荒んでいたのだ」


 ボクの知るギルガルドなら、その最期も頷けます。ゲームの中のギルガルドはあんまりいい人じゃなかったからね。だけどそれは、今の魔王にも言える事なので気を付けた方がいいと思います。

 でもそれじゃあリルは、ただ敗けて帰って来たという事ではないように思えます。ちゃんと魔王と戦って、そして大きな傷を負わせたのなら、それは非難される事ではありません。勝つ事はできなくとも、ちゃんとやり遂げたんじゃないか。それなのに殺される理由が分かりません。


「ネモ。貴方の言いたい事は分かりますよ。リルは、全てをしっかりとやり遂げていた。非難される理由はない。だけど言ったでしょう。世界が作り変えられる前に死んでいたリルは、この世界にとっての異物として処分された。いくら理不尽と感じても、彼女はこの世界において異世界から来た異物。私たちと同じように処分される運命に置かれてしまったのです」

「……」

「──早速一つ、新たな事実を知る事ができました。勇者リルは、魔王に敗けてなどいなかった。魔王と戦い、魔王に癒えない傷を負わせたリルは、立派な勇者。こうして少しずつ、皆さんで勇者リルについての情報をまとめていきましょう」


 色々ともやもやとするボクを、聖女様がそう言って励ましてくれました。

 分かってる。全ては通り過ぎた過去の出来事です。今ボク達が出来るのは、本当のリルを皆に知ってもらう事くらいだ。


「……うん。ほ、他には?他には何か、ない?」

「我に聞くな。我よりも、そこにもっとよく知っている者がいるだろう」


 魔王はそう言うと、顎でボクの後ろを指し示しました。そこにあるのは、イリスティリア様の銅像です。

 その銅像の人物は、今は幼女となってロガフィさんの膝の上に座っています。


「──せ、聖女様ぁ!」


 そこへ、聖騎士の白い鎧に身を包んだ兵士が、大慌てで教会に入ってきました。何の前触れもなく、ちょっと驚きました。それだけ慌てていたという事だね。


「どうしたのですか!?」


 そのただならぬ様子に、聖女様がすぐに尋ねます。


「りゅ、竜です!竜が、この町の上空を飛んでいます!」


 その兵士の報告を受け、空を見上げた時でした。太陽の光を遮り、大きな影をボク達に落とした生物がいます。その影は一瞬で通り過ぎたけど、兵士の言う通りそれは間違いなく竜です。


読んでいただきありがとうございました!

よろしければブクマや評価の方もお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ