特殊能力
入りきらないので、ボク達は家を出ました。予定の時間よりはかなり早いけど、皆で向かうのは聖女様のいる中央教会です。
それにしても、目立つ一行だよね。特に目立つのは、背の大きな男2人です。ジェノスさんはまだしも、魔王なんてほぼ半裸だからね。背が大きいうえに上半身を露にしていて、ナルシストっぽくてちょっと気持ち悪いです。
でもそれ以上に、リツさんは相変わらず凄い格好です。初めて会った時よりも過激な格好をしている彼女は、胸を大きく露出したビキニの水着姿をしています。その大きな胸を隠すのは、2枚の頼りない布だけです。下に目を向けると相変わらず大きくスリットの入ったスカートを履いていて、黒色の下着が太ももと一緒に見えてしまっています。
こちらは、凄く良いと思います。目の保養になります。
「んふふー……」
「……」
そんな魔王や、リツさん達と歩いているボクの隣には、女の子が2人います。2人ともボクの腕にくっついて腕を絡ませ、ちょっとだけ歩きにくいです。だけど、女の子にくっつかれて幸せじゃない訳がなくて、文句は言えません。
片方の腕にくっついているのはユウリちゃんなんだけど、とても幸せそうにボクの腕にくっついています。胸を強く押し付けて、ボクにまで幸せを分けてくれてるよ。ただ、時折リツさんを見てはぁはぁと息を荒くしたり、アルテラさんやロステムさんを恍惚とした表情で見ていて、ちょっと気になります。
一方で、そんなユウリちゃんを睨みつけているのが、反対側でボクの腕に捕まっているエーファちゃんです。
「え、エーファちゃん。前見て歩かないと、危ないよ?」
「……見張ってないと、オレの嫁が取られる」
「え、えーと……」
エーファちゃんからボクは、告白された身です。凄く可愛いネックレスまでプレゼントされていて、ボクからはまだ返事をしていないので一方的な感じだけど、こういう時どう反応をしたらいいのか困ります。
「……」
でもよく考えたら、レンさんからもボクは告白されてたよね。そのレンさんは、2人の美少女に挟まれて歩くボクの事を、黒く濁った目で見つめています。本来であれば、ボクの両サイドはユウリちゃんとレンさんが挟んで歩く事が多いからね。エーファちゃんに、定位置を取られた格好です。
でも、おかげでエーファちゃんにどう対応すべきか分かりました。レンさんと同じように対応すればいいんです。
「エーファちゃん、その服すっごく可愛いね!」
「へ、へ……?お、おう……そうか?」
とりあえずボクは、エーファちゃんの服装を褒めました。
ブラウンのスカートはお腹から膝下までを覆っていて、ふわふわに広がるように見えて、上品な女の子らしく見えます。その上から胴の丈の短めのシャツを着ていて、こちらは白を基調としていて胸元にはネクタイのような装飾もつけています。
全体的に、女の子らしさを強調したデザインとなっていて、エーファちゃんの魅力を引き出していると思います。
そんな服を褒めたら、エーファちゃんはキツイ表情をやめて嬉しそうに笑ってくれました。頬を赤らめて、表情を緩めて照れる仕草は可愛いです。
「エーファお嬢様が、一生懸命選んだ服です。ネモさんが、どんな服を着て行ったら喜んでくれるかと、長い間考えていたんですよ。褒めてくれて、良かったですね」
「う、うるさい!余計な事は言わなくていい!」
ロステムさんがそう教えてくれて、ボクは益々嬉しくなりました。
「ちなみに下着も──」
「ロステム。ホントに黙っとけ」
更にロステムさんが続けようとしたけど、声のトーンを落としたエーファちゃんがロステムさんを睨みつけ、ロステムさんは口を塞ぎました。
「……えっちな下着の匂いがします。色は恐らく、ピンク。面積は小さめで、相手を挑発するようなデザインです」
「なっ、なっ、なっんでっ……!?」
エーファちゃんの反対側で呟くように言ったのは、ユウリちゃんです。それを聞いたエーファちゃんの顔が、沸騰しそうな勢いで更に赤くなりました。
どうやら、ユウリちゃんの言った事が当たっているようです。それはエーファちゃんの様子を見れば分かります。
「な、なんで分かったの……?」
ボクは、女の子の着けている下着を直接見もせずに的中させたユウリちゃんに、若干引きながら尋ねました。
「勘ですよ。私の加護をお忘れですか?」
「う、うーん……」
いくら幸運の加護があるからと言って、それと下着のデザインを当ててしまうのとは関係がない気がします。だとすると、この子には女の子の下着を言い当ててしまうという、特殊能力が備わっている事になる。それは習得している人によっては、恐ろしい能力です。
「なんでしたら、後で正解を見せていただいたらどうでしょうか。エーファちゃんの、ピンク色の下着姿、私凄く興味があります!」
「ばっ……お、大きな声で言うな!」
慌てたエーファちゃんは、ボクの腕から離れてユウリちゃんの口を塞ぎにかかりました。
それに対し、ユウリちゃんは更に息を荒くして喜びます。小さな女の子に口を塞がれて喜ぶユウリちゃんは、知ってたけどやっぱり変態です。
「な、なんて羨ましい……!」
「のわぁ!?」
そんなユウリちゃんを、羨望の眼差しで見る変態……じゃなくて、メイヤさんがいました。ユウリちゃんの背後から、浮かび上がるように現れたその人物に、エーファちゃんが驚きの声をあげます。
驚きすぎて足を躓いて転びそうになったけど、そんなエーファちゃんの腕を掴んで引き寄せたのはユウリちゃんです。エーファちゃんはおかげで転ばずに済んで、ユウリちゃんの腕の中に抱かれる格好となりました。
「あ、ありが……」
「でゅ、でゅふふふふ」
「ユウリさん、更に羨ましすぎるぞ!?私も、私にも分けてくれ!見知らぬ少女よ、もう一度転ぶのだ!なに、心配はいらん。私が全身全霊で受け止め、そしてその幼げな肉体を愛でてやる!」
「なんなんだ、こいつら……」
エーファちゃんがユウリちゃんの胸の中で、そう呟きました。そう言いたくなる気持ちも分かるけど、あんまり引かないであげてください。
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