治療中の再会
ラスタナ様のお願いに首を傾げるボクだけど、ロガフィさんが心配そうにボクの傷を抑えて血を止めようとしています。こんな身体じゃ無理をさせられないと、ラスタナ様に訴えているようです。
「その身体は勇者の身体だ。胸に風穴が空いたところで死にはしない。痛みは通常通りだろうが、その子は痛みに対しても耐性があるようだ。問題はあるまい」
胸に風穴が空いても死なないとか、それじゃあまるでボクが化け物みたいだ。もう慣れているから気にはしないけど、ラスタナ様の言う通り本当になんともなくて平気なのがちょっとだけ悔しいです。
それでもロガフィさんは、ボクの傷を心配げに見ていてボクから離れようとしません。傷を抑えるその仕草は、自分がしてしまった事に対する罪悪感から来るもので、その様子を見ていたらボクの方まで申し訳のない気持ちになってしまいます。
「……分かった。コレは特別だ」
ラスタナ様がそう呟くと、ボクとロガフィさんの方へと歩み寄ってきます。
「少し借りる」
ボクの背後に回り込んだラスタナ様が、ボクの傷を抑えているロガフィさんに言いました。ロガフィさんは頷いてからボクから離れると、ラスタナ様が背後からボクに抱き着いてきました。
片腕を握られ、顔はボクの首元にあって耳に彼女の息遣いを感じる程の距離感です。
「はっ……あ……!」
ラスタナ様は空いているもう片方の手で、ボクの胸に触れて来ました。胸と言っても、風穴の空いている所です。でもそこを触れられて痛いはずなのに、何故か物凄く気持ちよくて声が漏れてしまいます。
「んぅ……!あっ……ひゃ、ん!」
身体から力が抜けて、だらしなく開いた口からは涎が出てしまいます。身体はボクの意思とは関係なくはねて、頭が蕩けるようです。
ラスタナ様からはレンさんの温もりと香りを感じる事ができて、ボクに安心感を与えてくれます。それが尚更ボクの身体の力を抜かせる原因となって、ボクは何もできなくてラスタナ様に身を委ねてされるがままです。
「──なんですか、コレは」
突然の声です。その声の持ち主は、瓦礫の山の向こうからひょっこりと姿を現わして、呆然としています。
「イリスか。しばし待て。この者の傷を治療している所だ」
「治療、ですか。私にはいかがわしい事をしているようにしか見えませんけど」
「んっ、うぅ……ひん!」
姿を現わした、幼女。イリスを前にしても、ボクは声を止められません。何故か凄く恥ずかしい所を見られている気がして、今すぐやめてほしいけど身体に力が入らないので抵抗する事は不可能です。
オマケに、今のこんな姿を一番見られたくない人も姿を現わしました。
「……お姉さま」
それは、ユウリちゃんです。その姿を見る事ができて安堵するけど、しかしこんな姿を見られる事になるのは複雑です。
「っ……!」
「こらっ。抵抗をするな。……少し、手伝ってもらえるか?この子が抵抗しないように、抑えてくれ。じゃないとこの子の傷をしっかり治してやる事ができない」
「……」
「んぅ……!?」
抵抗と言っても、本当に些細なものだよ。ほとんど身体は動かないんだから、抵抗しようがありません。
それなのにラスタナ様にそう促されたロガフィさんが、ボクに抱き着いてきました。なんだが、身体が変です。感覚が敏感になって、ロガフィさんと触れ合った所が熱いです。特に、ボクの足の間に滑り込まされたロガフィさんの足……。その足にボクの太ももがこすれる感触が、ボクの身体を跳ね上がらせます。
「ひぅ……んぅ!ん、あ……」
「ネモ。おとなしく」
「その通りだ。君は私たちに身をゆだね、ただ気持ちよくなっていればそれでいい……。そうすれば、傷もすぐに治る事になる。分かったら、返事を」
「ひっ!」
背後にいるラスタナ様が、ボクの耳元でそう囁いた瞬間に、ボクの身体が大きく跳ね上がりました。まるでそれが返事だったかのようになると、ラスタナ様は満足げに耳元で小さく笑いかけてきました。
「ユウリさん、イリスさん……!ネモさんとレンさんは!?」
「……」
さらに続いて、ディゼとぎゅーちゃんも姿を現わしました。
「こ、コレは……!」
レンさんの姿をしたラスタナ様と、ロガフィさんに挟まれて声を漏らすボクを見て、ディゼは顔を真っ赤に染めて手で顔を覆いました。でも指の隙間からしっかりと見ていて、意味がありません。
ぎゅーちゃんはボクの姿を見て笑顔になって、それがまた普段通り過ぎて見られて恥ずかしさが増します。
「お、お待ちください、皆さん……!先に行っては危険ですよ!」
「その通りよ。特にイリスさんは何の力もないんですから、下がってください」
「恐れながら族長様も私より先へ行かないように。でなければ護衛としての務めを果たす事ができません」
続いてやってきたのは、ジェノスさんとヘレネさんにカーヤさんです。彼らもボクの姿を見て気づくと、呆然と見て来ます。
それからもたっぷりとラスタナ様に治療されたボクは、皆の前ではしたない声をあげてとんでもなく恥ずかしい姿を見られてしまいました。




