やっちゃいます
レンさんの問いに魔王が答える暇もなく、ロガフィさんが魔王に襲い掛かりました。ロガフィさんは、表情には出さないけど、怒っている。魔族達を呆気なく殺した魔王に対し、その怒りをぶつけています。
ただ、攻撃は魔王に受け止められて通用しません。オマケに片腕に怪我を負ったロガフィさんは、不利とまではいかないけど、痛々しいです。
「そうだ!この殺意あってこその、貴様だ!もっと我に、その憎悪をぶつけるが良い!」
2人の斬り合いは、周囲の建造物を破壊していき、原形を留めません。ロガフィさんが一振りするたびに、または魔王が一振りするたびに、壁や天井に大きな亀裂が入っていきます。
ボクはレンさんを守りつつ、そんな2人の攻撃が逃げ行く魔族に向かうのを、阻止する役割に回る事にしました。先ほどの、魔王が放ったラストイェレーターのような攻撃が来たら、完全には防ぎようはないけど、通常攻撃なら余裕です。魔族に向かう斬撃は、ボクが剣を振りぬくだけで消え去り、被害は出ません。
「ネモ様。全員、外へ出たようです……!」
レンさんがそう報告してくれて、振り返るとそこには全員いなくなっていました。大きく抉れた床や天井に、壁。今にも崩れ落ちそうなくらいにボロボロだけど、なんとかその姿を保っている。
でも、この広間の外に出たからと言って、安全とは限らない。もうしばらく2人には力を抑えて戦ってもらわないと、確実に死者は増えてしまいます。
「ユウリちゃん達は、どこにいるんだろう。ヘレネさんも……!」
この場にロガフィさんと一緒にいたのだとしたら、紛れて逃げ出したのかもしれない。でももしかしたら、先ほどの魔王の一撃に巻き込まれてしまったかもしれない。この場にいなくとも、ラストイェレーターの射線上にいたら、タダで済むとは思えません。
「……大丈夫ですよ、ネモ様。ヘレネさんは、きっと今頃カーヤさん達に救出されて、お城から逃げ出しているはずです。ユウリさん達に関しては、ユウリさんがいれば大丈夫です。ユウリさんは運がとても良いので、あのような攻撃に巻き込まれて終わったりなどはしません。だから今は、魔王に集中しましょう」
「う、うん……。そうだね」
レンさんの言う通りで、ユウリちゃんがあんな攻撃に巻き込まれて死んでしまうような子ではありませんでした。ヘレネさんに関しても、逃げ出しているのなら安心です。
今はどうにかして、皆がお城から逃げる時間を稼ぎ、その後思いきり暴れるようにする事が先決です。
そう思っていた時、崩れ落ちていた瓦礫が蠢きだしたかと思うと、瓦礫が集まって形を作り出し始めました。胴体、手、足……瓦礫が作った形は、大きな人の形です。最後に瓦礫の中から顔が出てきて、それが首に当たる部分にはまりました。
「──さすがにこのドゥマも、先ほどの魔王様の攻撃には肝を冷やしました」
瓦礫の巨人の顔が、低い声で喋りました。その顔は、扉に浮かび上がっていたあの顔です。
先ほど魔王が放ったラストイェレーターにより、扉は破壊されました。それを受けても無事でいられたとは、考えにくいです。
「ドゥマ。こちらには手を出すな。この化け物は我が殺す。貴様はそちらの勇者を相手してやるが良い」
魔王はまるで、ロガフィさんとの斬り合いを楽しんでいるかのようです。目にもとまらぬ速さで攻撃を仕掛けてくるロガフィさんと、まともに斬り合える自分に酔いしれているのかもしれません。それは確かに凄い事です。
でも、その楽しみを邪魔にされたくないと言う魔王の気持ちを、こちらが酌んであげる必要はありません。レンさんを庇いつつになるから多少の動きは制限されるけど、ロガフィさんに加勢する事は可能だ。
できれば、ロガフィさん自身の手で決着を付けさせてあげたいと言う想いもあるけど、だけど現状2人の実力は拮抗している。まだまだ力の天井が見えてこない2人だけど、ロガフィさんが傷つくような事態を、ボクは望みません。
そうならないようなら、全てをロガフィさんに任せようと思っていたけど、そうもいかないようです。ロガフィさんに嫌われても、構いません。ロガフィさんを守るために、ボクはロガフィさんに加勢します。
「……」
レンさんも、ボクの考えが分かっているのか、懐から紋章の描かれた紙を取り出して構えています。
いつでも戦える準備はできていて、それをボクにアピールしている。でも、その身体は震えています。あまりにも強大な力を持つ2人に、レンさんを巻き込むのは無茶かもしれません。でも、大丈夫。ボクがついているからね。
安心させるように、レンさんを強めに抱きしめてボクは剣を構えます。こちらに狙いを定めているドゥマに対してではなく、魔王に対してです。
ステータス画面で確認したけど、ドゥマのレベルは???表記で分かりません。でも、竜やロガフィさん程の力は持っていない。たぶん、ドルチェットよりも下だ。それならボクにとって、無視して構わないくらいの戦力にしかなりません。
そう考えていたんだけど、そう甘くもありませんでした。再び瓦礫が音をたてて形を作っていくと、瓦礫の巨人が姿を現わしました。更には、壁が自然に崩れだしたかと思うと形を作り、更に更に巨人が姿を現わします。そうして新たに現れた巨人は、4体の合計5体です。その全てにドゥマの顔がはめられていて、全てがレベル???表記だ。
「我は、ドゥマ。この都市の守護者であり、魔王様をお守りする存在」
大きな巨人に囲まれてしまったら、さすがに相手をしない訳にはいきません。守護者だかなんだか知らないけど、やっちゃいます。
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