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見覚えのある技


 魔王はつまらない物を見るような目をしながら、ロガフィさんに向かって剣を振り上げます。その目はまるで、ロガフィさんに対する興味を失ったかのような、失望の目です。

 先ほどまでは化け物だのと勝手な事を言っておいて、今のロガフィさんの一撃を受けて無傷で済ませるとか、まずは自分の事を化け物認定した方がいいと思います。


「この一撃を受けて、貴様は無事でいられるか?」


 そう尋ねながら、魔王はロガフィさんに向かって、剣を振り下ろしました。その一撃に、空気が震えました。むしろ、世界そのものが震えた気がします。

 魔王がロガフィさんに向かって縦に振りぬいた一撃は、それほどまでに強力な物でした。


「……」

「っ……!?」


 瞳を赤く光らせるロガフィさんは、相変わらず目を見開いて、無表情で無反応です。

 自らに迫る魔王の剣をじっと見据えると、驚きの行動に出ました。さすがの魔王も、その行動には驚いた表情を見せます。

 ロガフィさんは魔王の強力な一撃を、片手で受け止めてしまったんです。傷つくのも恐れずに受け止めたその手から、血が溢れ出します。

 それでもロガフィさんは無表情を貫き通し、魔王に対しての憎悪を強めるかのように、魔王の剣を強く握りしめています。


「──コレだ!コレこそが、化け物である貴様の力だ!」


 先程は失望の目を見せた魔王だけど、すぐに嬉しそうな目になりました。

 先ほどの攻撃は、確かに強力な物だった。だけどそれをまともに受けて平気だったのは、ロガフィさんが手加減をしていたから……?ロガフィさんは、力に支配されて暴走気味に見えるけど、それでもまだ尚も、実のお兄さんへの攻撃に戸惑いを見せている。

 オマケに、無意識かどうかわからないけど、まだ避難しきれていない魔族達を守るような動きで戦っている気がする。

 魔王は巻き込む事もいとわずに開始した戦闘だけど、ロガフィさんは貴方達の事を守ろうとしているんだよ。それを踏まえて、自分たちの魔王にどちらが相応しいのか、聞いてみたいものです。


「だが、まだまだ足りん!化け物の貴様なら、この場にいる全員を巻き込んで皆殺しにするくらいの力を見せるはずだ!もっと、本気になってかかってこい!さもないとその前に死ぬことになるぞ!」

「……」


 ロガフィさんに掴んで止められていた魔王の剣が、僅かに動きました。ロガフィさんの手を押して、どんどんその力が増していっています。


「コレは……!」


 魔王の身体から、闇のオーラだけではなく、聖なる光のオーラも溢れ出しています。アスラから力を授かった魔王が、自らの力と女神の加護の力を融合させて、どんどん強くなっていっている。

 そして、黒と白の光が集約していった魔王の剣が、激しく光を放ちだしています。その力に、ボクは見覚えがある。魔王が何をしようとしているのかを察したボクは、ロガフィさんに向かって叫びます。


「ロガフィさん!避けて!」

「……」


 ボクの言葉に反応したのか、ロガフィさんは直前になって、受け止めていた魔王の剣から手を離しました。


「──ラストイェレーター」


 魔王がそう言って放ったのは、ボクの必殺技でもある勇者の一撃です。黒と白が融合した光が、全てを飲み込んでいきます。

 ボクはレンさんを抱き、広場の隅っこに退避して強く抱きしめて庇います。

 魔王が放ったラストイェレーターは、建物も、扉も、退避中だった魔族達をも巻き込んだうえで、全てを飲み込んでしまいます。飲み込まれた物は問答無用で消し飛ばされて行き、叫ぶ暇さえありません。

 留まる事を知らないラストイェレーターは、そのままこの広場の外も巻き込んでいき、遥か彼方まで飛んで行ってしまいます。ラストイェレーターが通った後には風穴が開き、お城の外にまで飛んで行ったので空が見えてしまっている。更に、空の彼方に飛んで行ったおかげで、空を覆っていた雲までもが吹き飛んで、太陽の明るい日差しを招き入れています。

 これでも、威力はだいぶ抑えられた方です。半分ほどは魔王から距離を取ったロガフィさんが、闇の剣で受け止めて帳消しにしたからです。ただ、残りの力を受け止める余力がなく、結果として大勢の魔族が今の一撃で死ぬことになってしまいました。

 あまりにも一瞬で大勢が死んだことにより、ロガフィさんが庇ってくれたおかげで生き残れた魔族達が、呆然としています。ここにいた魔族達だけではない。広場の外にいた魔族も巻き込まれたと思う。あと扉の顔も、今の一撃で吹っ飛んでしまいました。


「どうだ、ロガフィ。今の我の力は、これほどまでに強力な物となってしまった。化け物の貴様と、まともにやり合えるほどに……いや、それ以上だという確信がある」

「貴方は……!自分の配下の者達を巻き込んで殺して、なんとも思わないのですか!?」


 ボクが抱きしめていたレンさんが、魔王に対して怒りの感情を露にします。

 先ほどまでは、配下の者を巻き込んで殺す訳にはいかないとか言っておいて、平気で巻き込んで殺す一撃を見せた魔王は、本当に卑劣です。自分の配下の人たちを、仲間と思わず道具としか見ていない。だから、こんな事ができるんだと思います。

 こんな魔王にどうしてみんなが従っているのか、疑問だよ。


読んでいただき、ありがとうございました!

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