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リッチの最期


 ボクは接近しようとする魔王を警戒し、レンさんの腕を引いて再び背中に庇いました。それでも、レンさんは魔王に対して真っすぐ目を見て、怒りの表情を崩しません。


「命令に従うだけが、忠義ではありません。ただ命令に従うだけの部下が欲しいのなら、魔法生物でも作り出して、それにだけ命令をして過ごせばいい」

「何をむきになっている。コレは、貴様とは何の関係もない、むしろ敵と呼ぶべき存在だ。そこは敵が殺される様を見て、喜ぶべき場面ではないのか」


 ドルチェットの傍に立って止まった魔王が、ボクとレンさんに向かって言い放ちました。

 確かに、ドルチェットは敵だよ。敵で、しかもあまり好きじゃなかったけど、でも魔王の部下だった。それをあっさりと殺そうとしたこの魔王の行動に対し、レンさんはむきになっているんです。


「……敵であろうと何であろうと、その方が貴方を本気で尊敬し、忠誠を捧げていたのは事実です。その事実を述べたまでであり、私が何を言おうと貴方に何かを言われる筋合いはありません」

「我は、魔王だ。全ての権利を得た世界の支配者であり、その行動を制限する事はできない」

「世界の支配者だと自称するのなら、少しは懐の広さも見せなさい。貴方のその発言は、まるでイキった子供のようでとても幼く見えます。それを教えてくれる方は、周りにいなかったのですか?いなかったのでしょうね。教えてくれる方は貴方の下から去ったか、或いはドルチェットのように、殺したか。どちらかなのでしょう?正直言って、貴方には魔王の資格がありません。当然、世界の支配者たる器でもありません。今すぐに、魔王の座を退き、そしてロガフィさんに魔王の名を返上してください」


 レンさんの声は、静まり返ったこの広場の中によく響き渡りました。魔族達が、戦々恐々として黙り込んでいるおかげです。跪いたままの魔族達だけど、何かに怯える様子はボク達の方にもよく伝わってきます。

 その怯えの原因は、魔王です。レンさんに啖呵を切られて気に障ったのか、その身体から溢れる力が強くなった気がします。

 この場でボクと魔王の戦いに発展したら、どうなるか。それは、この魔王も危惧していました。恐らくは、一瞬にしてこの場にいる魔族の半数は死にます。第2、第3の攻撃の仕合いになれば、もっと死にます。

 人間に対して攻撃を仕掛けるための戦力だと言うのなら、それを削っておいて損はないんだろうけど、だけどこの中にいる全員が戦いを望んでいる訳ではない。何より、ロガフィさんもそれは望まないはずだ。


「では貴様は、ロガフィこそが魔王に相応しき器だと言うのか?」

「はい。あの優しいロガフィさん以上に、魔王に相応しきお方はいません。あの方ならば、きっと私たち人間との、平和の懸け橋となってくれるはずです」

「……何が、平和の懸け橋だ。あの化け物が、我以上に魔王に相応しいだと?貴様は何も知らない。何も分かっていない。おとなしく、望みを言え。そして我に協力し、あの化け物を殺す手伝いをしろ。それが、この世界のためになるとすぐに分かる」

「貴方は何故、そこまでロガフィさんを嫌うのですか?ロガフィさんは貴方にとって大切な家族であり、妹のはずです。私は一人っ子なので、妹がいる方の気持ちは分りませんが、しかし家族とは愛し合うものであって、憎しみ合う物ではないはずです」

「妹……」


 魔王はそう呟いてから、鼻で笑いました。そして、足元に倒れていたドルチェットの頭を掴み取ると、ドルチェットを持ち上げました。半分しかないドルチェットは、それに対してもう抵抗する術を持っていません。


「ま、魔王様……!」

「貴様は、よく働いてくれた。それは称えよう。しかし、我の選択が例え間違っていたとしても、貴様は我の判断によって、殺されたのだ。喜び、そして死ぬが良い」

「……はい、魔王様。私の魂は、貴方と共にあります」


 ドルチェットは、残った黒目の光を、そう言って失いました。彼の最期は、微妙でした。魔王に裏切り者認定されて斬られ、最後の魔王の言い回しは過去の功績をたたえながらも、裏切り者だという事を撤回せず、彼の忠誠を肯定してあげていませんでした。

 それでもドルチェットは、最後の最後に少しだけ納得した様子で、死に絶えました。ステータスで確認するとHPは0を示し、彼の死を表しています。

 やがてドルチェットは、魔王の手からボロボロの灰になって崩れ落ちて行き、その姿は消えてなくなりました。後に残ったのは、ドルチェットの目に埋め込まれていた黒色の宝石と、灰の山と、壊れた王冠に、羽織っていたマント、半分ほどが吹き飛んだ、木の杖だけです。


「ふ。殺した者に対する、態度ではないな。我の命令に従えば、この先も我のために働けたものを……バカな奴だ」

「っ……!」


 敵であるドルチェットの死を前にして、レンさんが後ろから、ボクに抱き着いてきました。レンさんが啖呵を切ってくれたおかげで、少しは報われたと思う。でも全然足りなかった。


「……魔王。ボクは、貴方を倒さなければいけません。ボクもレンさんとは同意見で、ロガフィさんの事を化け物だなんて思いません。貴方より遥かに優しくて、良い魔王になってくれると信じています」

「……」


 魔王はボクの決意に黙り込むと、ドルチェットの黒い目の宝石を拾い上げてから、イスに座り直しました。少し、その宝石を目の前で見ていたかと思うと、突然その宝石を握りつぶして破壊してしまいました。


「──もういい。家畜にも劣る人間風情が、魔王を語るな」


 ドルチェットの宝石を握りつぶしたその手の中から、黒いオーラがあふれ出て来ます。まるで、魔王の手が黒い炎で焼かれているようにも見えて、魔王のボク達を見る目が鋭くなった事もあり、とても不気味です。


読んでいただきありがとうございました!

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