魔族の王
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更にレンさんに引かれ、ドルチェットについて廊下を歩く事、数分。ボクは、大きな赤い扉の前で止められました。
「遅い。魔王様は既に、中で待っている」
「わっ」
その扉には大きな石の顔がついていて、その顔が訪れたボク達に向かい、低い声で話しかけて来ました。この町に入るときの門にもあった顔と、似ています。
「人間の足に合わせた結果である。これ以上お待たせさせないためにも、すぐに扉を開くが良い」
「……」
扉の顔は黙ると、静かに扉が動き出しました。町へ訪れた時の扉よりは小さいけど、でも大きな扉が自動的に開いていくのは、やっぱり凄いです。
扉が開ききると、その先には大勢の魔族が待ち受けていて、左右に所狭しと詰め込まれていました。大きく、奥行きの長いホール型のその広場は、中心にレッドカーペットが敷かれていて、レッドカーペットを挟んで魔族達が並んでいる。首無しの鎧、デュラハンや、牛の顔を持つ巨人。ミノタウルス。一つ目の魔人や、複数の腕を持つ者など、様々な種族の魔族がそこにいる。彼らの中には、唸り声をあげて、何かを威嚇するような仕草を見せているのもいるけど、基本的には静かです。
そしてそのカーペットの続いていく先に、数段高い台があって、その上に大きな金色のド派手なイスが設置されています。そこに、偉そうにふんぞり返り、脚を組んで座っている白髪の男の人がいる。
「……」
黒いマントに身をつつみ、黒いズボンと、黒いシャツを着ている、男。頭には、片方の角は黒。もう片方には白の角を生やしていて、左右で色が揃っていません。その目は、黄金色に輝いていて怪しい光を放っています。顔や体はやや痩せて見えて、目の下にはクマがあり、あまり健康的には見えません。
そんな彼と、ボクは目が合いました。ボクを見た瞬間、たぶん彼もボクが何か気づいたはずです。その目が、ボクに対しての警戒心を増して、更に怪しく光りました。
「魔王様!ご報告した通り、異様に頑丈な人間をお連れ致しました!」
カーペットを歩みだしたドルチェットに続き、レンさんとボクも進みます。他の骸骨たちは、ボクについてこようとはせずにその場に留まり、ボク達を見送るとこの広場から出て行きました。
彼らが出て行ってから扉は再び閉じられて、ボク達はこの魔族達だけの空間に、閉じ込められてしまいます。
「魔王様……!こちらに、この人間を跪かせろ……」
魔王の座るイスの眼下にまでやってくると、ボクではなく、レンさんにそう指示をしました。
「……」
でも、レンさんはその指示を無視しました、更には、ボクを引いていた手綱を放り投げると、ボクの隣に並んで魔王を見上げます。
「な、何をしている、貴様ら!魔王様の御前であるぞ!」
「……よい、ドルチェット」
魔王はそう呟いて、ボク達を怒鳴りつけてくるドルチェットを止めました。そして、気だるそうに組んだ脚を解くと、ひじ掛けにひじをのせ、顎に手を当てて、ボク達を見下ろしてきます。
「とんでもないものを城に連れ込んでくれたな、ドルチェット」
「は、は……?」
魔王の言葉に、ドルチェットは自分だけ跪きながら、首を傾げます。
やっぱり、魔王はボクの力に気づいている。あとは戦闘のタイミングだけだけど、いつ襲い掛かって良いんだろう。周囲を見渡すけど、ボクに指示をくれる人はいません。
「貴様の望みは、なんだ。我が許す。言うが良い」
「ぼ、ボクの、望み……?」
突然聞かれて、ボクは戸惑います。言えば、この魔王はボクの望みを叶えてくれるの?
いや、そんな訳がない。相手はロガフィさんを痛めつけ、追い出した張本人だ。しかも、魔王なのに女神の加護を得た、イリスですら驚いた存在だ。しかもその授けたのがアスラと来たら、何も信頼する要素がありません。
ボクはとりあえず、魔王のステータス画面を開こうとしました。でも、何も出て来ません。名前も、レベルも、何もです。こんなの、この世界に来て初めてだ。でもゲーム的に言えば、ボスキャラのステータス画面だけ見れなくなったりするのはわりとよくある事だから、普通と言えば普通かもしれません。
「──どうした。何も望む事がないのか?欲深き人間の事だ。金が欲しい。名誉が欲しい。平和。破壊。永遠の安寧。何かしらあるだろう。それを素直に、口にすれば良い。我がそれを叶えてやる」
「ま、魔王様。この者は私が捕らえ、その頑丈さが故に、魔王様のご指示を仰ぎたいと思い連れてきた人間です……。そのような者の望みを叶える必要は、ないかと……」
「我は、無駄な争いを望まぬ。貴様の望みを叶えてやる事によって争わずに済むのなら、それを優先する。それは、この場にいる全ての魔族のためでもあるのだ。少し、黙っていろ」
「で、ですが、魔王様……!」
黙っていろと言われたのに喋ろうとしたドルチェットを、魔王は睨みつけました。それだけで、ドルチェットは慌てて自らの口を塞ぎ、黙り込みます。骨なのに、全身から冷や汗が出てきて、顔面蒼白です。
「……ボクは、ロガフィさんを傷つけた貴方を、倒すためにやって来ました」
ロガフィさんの名前を出した瞬間に、その場にいた魔族達からざわめきの声が生まれました。彼らに、緊張が走った一瞬かもしれません。名前を聞いただけでそうなる程に、ロガフィさんの影響力はまだあるようです。
「ロガフィ……。やはり、アレと知り合いか。悪い事は言わないが、警告しておく。アレは、真の化け物だ。今のうちに殺しておかねば、いつか必ずこの世界の脅威となるだろう」
ロガフィさんが、そんな事になる訳がない。それよりも、自分の妹をアレよわばりした上に、悪く言うなんてそれこそ信じられません。ボクは、やっぱりこの魔王を赦す事はできません。
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