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元気にやっています


 それから、何日かが経過しました。

 ボクは檻の中で、ドルチェットにちょっかいを出されながらも、元気にやっています。レンさんも、ボクに対して、ドルチェット達の前では厳しい態度を見せてくるけど、なんやかんやと言って、相手がレンさんだからか、悪い気分ではありません。むしろ……と思う自分もいるけど、その考えは振り払っておきます。

 レンさんも、まんざらではない様子で、たまに、本気でただ楽しんでいるだけなんじゃないかとも思うけど、ボクは信じています。

 情報は、常にアンリちゃんが運んできてくれるので、ユウリちゃん達が無事なのも、毎日確認できています。更にユウリちゃんは、ドルチェットが相変わらず、ユウリちゃん達を見つける事もできず、このお城の中は、半ばパニック状態だと、教えてくれました。人間が侵入して、どこかに潜んでいるかもしれないんだから、ドルチェットが慌てるのも、無理がありません。


「ふあ……」


 でも、さすがにそろそろ、飽きました。

 狭い檻の中で、レンさんに命令されるか、ドルチェットに拷問されるだけかの毎日は、退屈です。早く出たいけど、今暴れたとしても、魔王はこのお城にいない。我慢しないといけないのは分っているけど、でも退屈です。

 そう思っていると、扉の施錠が解かれました。ボクは、横になったままでそれをボーっと眺めていると、扉が開かれ、ヘレネさんが姿を現わしました。顔を隠す布は、付けていません。素顔のヘレネさんが、床に寝転がるボクを見下ろしてきました。かと思うと、ヘレネさんの背中がおされ、乱暴に檻の中へといれられます。

 ボクは慌てて立ち上がると、背中を押されてバランスを崩しかけたヘレネさんの身体を、受け止めて支えました。


「へ、ヘレネさん……大丈夫、ですか?」

「ええ。ありがとう、ネモさん」


 ヘレネさんを受け止めたボクに、ヘレネさんはお礼を言ってきました。

 それから、ヘレネさんを突き飛ばした人物も、檻の中へと入ってきます。ゆったりとした足取りで姿を現わしたのは、レンさんでした。ただ、その服装が、変わっています。黒の、肌に張り付くような、背中が大胆に露出した、色気溢れるドレス姿です。

 服装が変わった事により、より一層、女王様気質が板についてきています。ハイヒールと、脚を包むストッキングもセクシーで、思わず見とれてしまう魅力を持っています。

 レンさんは、なんだか知らないけど、魔族達の中で急速に人気が高まっていて、その地位を、数日間の内に確立しているらしいです。ジェノスさんと、アンリちゃんが言っていました。


「れ、レンさん……」

「何度言ったら、分かるんですか、このメス豚は……!」


 レンさんの名前を呼んだボクを、不機嫌になったレンさんが、鞭を床に打ち付けて、激昂しました。そ、そうだった。2人きりじゃないときは、レン様って呼ばないといけないんだった。

 レンさんの背後には、ドルチェットの部下である、骸骨達もいるからね。その前で、レンさんとなれ合う訳にはいきません。


「ご、ごめんなさい、レン様……!」

「くっ。ネモさん……!」


 ボクはそう言うと、ヘレネさんから離れ、四つん這いになって謝罪をしました。

 その様子を、ヘレネさんが目を逸らし、悔し気にしてくれています。


「もう、貴方たちは下がっていてください。私は、この子たちと少し戯れていくので、邪魔をしないでくださいね。分かったら、下がって廊下で立っていてください。いいですね?」

「カクカクカクッ」


 レンさんに言われて、骸骨は心なしか、頬を赤く染めている気がします。もしかして、レンさんに命令されて、嬉しいの?だとしたら、ちょっと引きます。

 でもとりあえずは、レンさんの命令のおかげで、骸骨は檻から出て、ボク達は3人きりになる事ができました。この3人なら、周りの目を気にする必要はありません。ボクは、四つん這いの体勢をといて、床にお尻をついて座る体勢になりました。


「ネモさん……!ごめんなさい、こんなに辛い思いをさせて……!」

「わっ」


 そんなボクを、ヘレネさんが抱きしめて来ました。胸にボクの顔を抱き、本当に申し訳なさそうに、謝罪の言葉を述べて来ます。ヘレネさんの胸は、遠慮がちながらも、確かにふくらみがあって、柔らかくボクを包み込んできてくれます。

 ヘレネさんとは、ここに閉じ込められてから、ずっと会っていませんでした。でも、二重スパイとして活動するレンさんと同じく、ヘレネさんは丁重に扱われているはずです。実際その通りのようで、どこか怪我をした様子はなく、元気そうで何よりです。


「ぼ、ボクは、大丈夫です。ヘレネさんの方こそ、大丈夫ですか……?」

「私の方は、レンさんが上手くやってくれているから、平気よ。ちょ、ちょっと、脚を舐めさせられたり、豚の鳴きまねをさせられているだけだから、何ともないわ」

「……」


 ボクは、それを聞いてレンさんの方を、呆れた目で見ました。レンさんは、すぐに目を逸らしてしまったけど、それも仕方のない事だと、分かっています。だから、責める事はできません。それよりも、それを何故か、ちょっと嬉しそうに言うヘレネさんが、心配です。ボクと同じく、何かに目覚めかけていて、ボクよりももっと重症な、そんな気がします。


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