表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

424/492

協力者

誤字報告ありがとうございます!


 だけど、よく考えたら、ボクと同じように捕らわれている仲間たちを、人質にとる事はできません。アンリちゃんの話によると、もう逃げ出して、檻の中にはいないはずだ。それでも、皆を人質に取ろうとしているという事は、やっぱりドルチェットは気づいていない。


「ぷふっ」


 ボクは、あまりにも間抜けなドルチェットに対し、また笑ってしまいました。


「……まさか。いや、まさか、である」


 ボクが笑った事に対し、何かに気づいたようで、ドルチェットが慌てだしました。そして、部屋の施錠をとくと、慌てた様子で走り去っていきます。残された骸骨たちは、とりあえずボクを囲んで自由を奪ってくるけど、駆けだしたドルチェットを気にした様子です。


「いない!」


 しばらくして、ドルチェットの叫び声が、廊下の奥から響き渡ってきました。とても大きな声で、ちょっとだけ驚きました。

 それを皮切りに、辺りが騒がしくなります。ボクは一旦、檻の中へと戻される事となりました。檻の前には、10名程の見張りが着けられて、かなり厳重な警備です。他の皆が逃げ出した事により、ボクに対する警備が、かなり強くなってしまいました。

 別に、いいけどね。見られてる訳じゃないし、本当に皆が逃げ出した事が分かって、安心です。

 まぁボクは、置いて行かれちゃったんだけどね。ボクは檻の中で、自嘲気味に笑いました。

 ボクにとって、この扉を壊す事も、高い天井のてっぺんにある、わずかな隙間の、鉄格子の窓から逃げ出す事も、どちらも簡単です。皆は、どうやって逃げたんだろう。ドルチェット達が気づいていなかったという事は、扉を壊したりはしてないと思うけど、どこかに別の逃げ道でもあるのかな。

 そう思って部屋の中を見渡すけど、他の出口なんて、どこにもありません。そもそも、見て回る程の物が、この部屋にはない。


「どけぇ!この者は、他の者達が逃げ出したのを、知っていた!必ず、何か知っている!それを吐かせるのだ!」


 突然、扉の前が騒がしくなりました。声の持ち主は、たぶんドルチェットです。かなり怒っているのか、その怒鳴り声は、かなり大きく、感情が剥き出しです。

 扉の魔法の施錠が解かれて扉が開かれると、思っていた通り、騒いでいたのはドルチェットでした。


「……」


 衣服が乱れるのも気にせずに入って来た彼が、ボクを睨みつけて来ます。そして徐に、杖を構えてボクに向かって魔法を放ってきました。


「デスリボーンタム」


 それは、前にもボクに向かって放って来た魔法です。ボクに向かい、杖の先端から現れた黒い手が、襲い掛かってきます。前は確か、かみ砕いて、打ち消したんだったかな。

 でも、今回はそういう訳にも行きません。その手は、扉よりも遥かに大きく、ボクの身体ごと飲み込もうと、手を開いて襲い掛かってきます。

 前とは、比べ物にならないくらいの、威力です。


「ドルチェット様、落ち着いてください!この者は、魔王様にお見せすると聞いております!」

「拷問して痛めつけるだけならまだしも、殺してしまったら、後々まずい事になるのでは!?」


 頭に角の生えた、人型の魔族が、そんなドルチェットを慌てて止めに入るけど、ちょっと遅すぎかな。手は、ボクに到達して、ボクの命を消そうと、握りこんできました。でも、すぐに消えてなくなってしまいました。

 何事もなかったかのように、ボクはその場にいて、魔族の兵士たちがとても驚いた表情を浮かべています。


「この程度で殺せるものならば、苦労はしないのである……。コレを痛めつけ、情報を聞き出すには、どうすれば良い。私はそれが知りたい」


 ドルチェットはそう言って、頭を抱えました。人質にとるはずだった皆も逃げちゃって、その上ボクには何の攻撃も効かないので、万策尽きたようです。


「──どうやら、相当困っているようだな。ドルチェット」


 そこへやってきたのは、黒い鎧に身を包んだ、ジェノスさんでした。ジェノスさんに対し、人型の魔族の兵士が、頭を下げて迎え入れます。それだけで、ジェノスさんが、このお城でかなり高い地位を手に入れているのが、よく分かる。

 そして、そんなジェノスさんを見て、イリスを斬りつけたあのシーンが蘇りました。アンリちゃんが、情報を伝えてくれていなかったら、その時点で、ジェノスさんを殴り飛ばしている所だったよ。それこそ、あとかたもなく吹っ飛ぶくらい。


「……」

「っ……」


 ボクの視線に気づいて、ジェノスさんが冷や汗を頬に垂らし、目を逸らしました。


「……ジェノスであるか。この者が、想像していた以上に、頑丈過ぎた。私の手には負えん」

「あんなに張り切って痛めつけると言っていたのが、この有様か。加えて、貴様に預けた他の人間と、ダークエルフの戦士まで取り逃がしたようではないか。その責任、どうとるつもりだ」

「ほ、他の者を取り逃がしたのは、私だけの責任ではなく、この牢獄の管理体制が──」

「言い訳をするな。全て、魔王様に報告させてもらうぞ」

「貴様っ……!」


 ドルチェットは、悔し気にジェノスさんを見返し、項垂れました。その目には、明らかな憎悪が宿っていて、ジェノスさんの事を、ドルチェットがあまり良く思っていないのが、よく分かります。


「だが、この者には魔王様に見ていただく前に、やはり少し、痛い目に合ってもらう必要があるだろう」

「し、しかし、どうやって……魔法は勿論、物理的な攻撃も効かん事は、実証済みだ」

「この者をよく知る者が、協力者として、名乗り出てくれた。彼女ならば、この者を苦しめ、そして情報を引き出してくれるだろう」


 そう言って、ジェノスさんが道を開けると、そこから歩いて部屋に入って来たのは、レンさんでした。


読んでいただき、ありがとうございました!

ブクマや評価の方も、是非よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ