ぷふぅ
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思えば、こんな孤独感を感じるのは、いつ以来だろう。この世界に来てから、大切な人が出来て、いつの間にか知り合いがたくさんできていて、いつも賑やかな毎日だった。
それが今では、たった1人で檻の中に閉じ込められているんだから、寂しくならない訳がないよ。
「ネモさん!しっかりしてよ!」
ところが、そんなボクに向かい、声を掛けてくれる人物が、いました。
「ネモさんだけじゃなくて、ユウリさんだって、ネモさんと離れる事になって、寂しがってるはずだよ。ネモさんと別れて一番辛いのは、きっとユウリさんだよ。イリスさんだって、口は悪いけど、ネモさんと別れて寂しがってるはずだよ。レンさんだって、ロガフィさんだって、ディゼさんだってそうだよ!だから、今は耐えるんだ。ほんの、ちょっとだけ耐えていれば、また会える。だからさ……そんなに寂しそうな顔はしないでよ。いつもみたいに、にへらって笑ってて。ボクは、幸せそうなネモさん達の顔が、大好きなんだ……」
「アンリちゃん……」
必死にそう言ってくれる、アンリちゃんのおかげで、ボクは気づけました。まだ、1人じゃない。アンリちゃんが、いてくれる。
それに、ユウリちゃん達だって、きっとボクを待ってくれている。再会するその時まで、ほんのちょっとの我慢だ。
「あ、ありがとう、アンリちゃん。ボク、頑張るよ……!」
「その意気だよ!」
アンリちゃんの笑顔に誘われて、ボクも笑いました。アンリちゃんと一緒なら、1人じゃなくて、2人だ。だからボクは、まだ頑張れる。
「それじゃボクは、ユウリさん達の所に戻るね。頑張ってねー」
「え」
唐突に、アンリちゃんがそう言って、姿を消してしまいました。気配もなくなってしまい、本当に、行ってしまったみたいです。
「……」
唐突に、再び1人になってしまい、ボクは呆然としました。
冗談、だよね……?ボクはてっきり、アンリちゃんも傍にいてくれると思ったから、頑張れると思ったのに、突き放された気分です。勝手に思っていただけなので、自由奔放なアンリちゃんに向かって怒れる事ではないけど、でもあんまりだよ。
「……あは」
でも、アンリちゃんらしくて、ボクは思わず、笑ってしまいました。
それからしばらくして、暇なので床に寝そべって眠っていたら、扉の魔法による施錠が解除されるのに気が付いて、ボクは目を覚ましました。
「うみゅ……」
目をこすりながら、扉が開くのを見ていたら、姿を現わしたのは、ドルチェットでした。
ボクはそれを見て、再び眠りにつきます。
「無視をするな!相変わらず、生意気な娘である……だが、まぁ良い。そんな態度をとれるのも、今の内だけである。おい、この者を引っ張り出せ!」
指示を受けて、骸骨たちがボクの牢獄へ入って来て、ボクの手錠を、鎖でつなぎました。そして、本当に引っ張って、ボクを檻の外へと引きずり出してきます。仕方がないので、ボクは起きました。床に引きずられたら、服が汚れちゃうからね。
「これから、何をされるか、分かるか?」
牢獄から出されると、ボクを威圧するように、ドルチェットが目の前に立ち、尋ねて来ました。左右の、黒と赤色の目が怪しく光り、ボクの事を楽しそうな笑みを浮かべ、見ています。
その問いに対して、ボクは首を横に振って答えます。
「……拷問である。貴様には、生きているのが嫌になるくらいの、苛烈な拷問を受けてもらう。拷問部屋に辿り着くまでの間、今のうちに無事な自分の身体を、楽しんでおく事だ……」
「……」
拷問……。ボクは、今までそんな物を、受けた事がありません。敵に捕まる事もなかったし、その前に倒しちゃうからね。だから、そんな状況に陥る事は、まずありませんでした。
だから、コレが初めての拷問です。廊下を歩くドルチェットに続き、骸骨がボクに繋がれた鎖を引いて歩かされ、無理矢理ついて行かされます。薄暗く、石で囲まれた廊下には、左右にたくさんの、鉄の扉が並んでいる。ボクが閉じ込められていた所と同じ扉で、そのどこかに、ディゼやぎゅーちゃん達が閉じ込められていたはずなんだけど、アンリちゃんの話では、もう逃げ出しているはずだ。
ドルチェット達は、その事を知っているのかな。捕まえていた人がいなくなったら、普通は大騒ぎになるよね。でも、特に慌てたりしている様子はなく、いたって普通です。
「ぷふぅ」
気づいていないのなら、都合がいい。案外、間抜けなんだね。ボクは、バカにしたように笑いました。
「……」
そんなボクを睨みつけてきたドルチェットだけど、黙って歩き続けます。そのまま歩き続けて、とある扉にぶち当たりました。道は他にはなく、ここが目的地だと思われます。
ドルチェットは、扉に手を触れると、扉に魔力を籠めました。それにより、扉に施されいた魔法の鍵が解かれ、扉が開かれます。
どうやらこの扉の鍵は、特定の人の魔力でないと、解く事ができない仕組みのようです。
「さぁ、ついたぞ。ここが、貴様にとっての人生の終着点である」
ドルチェットはそう言って、扉を開け放ちました。
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