裏切り
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「イリス!」
ユウリちゃんが、ロガフィさんから離れ、イリスに駆け寄ろうとします。
でも、ジェノスさんは切りつけたイリスの頭を掴み取ると、その身体を投げ捨て、イリスは飛んでいきました。イリスが落ちていくその先には、崖が待っています。
ユウリちゃんは、そのイリスを追いかけていくと、勢いよくジャンプして、イリスの身体を空中で掴み取りました。更に、ロガフィさんもそれに続きました。馬車から勢いよく飛び出すと、2人をまとめて抱きしめて、一緒に崖の下へと落ちていきます。
「っ!」
ボクも、それを追いかけようとしました。だけど、ジェノスさんがボクの前に立ちはだかり、行動を抑止してきました。
「ドルチェット!人間をこの地に招き入れるとは、どういう了見だ!」
今すぐにそれを退かして、追いかけようとしたけど、ジェノスさんがそう叫んで、ドルチェットに向かって怒鳴りつけました。
「良いではないか。ちょっとした、余興である」
ドルチェットは、笑いながら、ジェノスさんに答えました。
……バレていた。ボクは、遅れてそう察しました。同時に、馬車を骸骨達が囲ってきて、逃げられないようにしてきます。
一方で、ロガフィさんと、ユウリちゃんと、ジェノスさんに斬りつけられたイリスが、崖の下の方へと姿を消していきました。
追いかけたい……けど、レンさんと、ディゼと、ぎゅーちゃんや、ヘレネさん達を残して、追いかける訳にはいかない。あちらには、ロガフィさんがいる。任せておけば、大丈夫だとは思う。でも、イリスは?イリスは、ジェノスさんの剣によって、斬られてしまった。大怪我を負っているか、もしかしたら死んで──……。
「……」
ボクは無意識に地面を、強く握っていました。そこを起点として、地面がひび割れていきます。
そんなボクの行動に気づいて、ドルチェットが杖で叩いてきました。でも、ボクには効きません。真っすぐに睨み返すと、ドルチェットは一歩引きさがり、震え出した自分の手を見て、驚いています。
「放っておけ。どうせ、拘束されたその状態では、抵抗はできない」
「わ、分かっている。……だが、この人間は本当に、どういう存在なのだ。それに、私の腕を握りつぶそうとしてきた、あの者も……!」
「馬車の中に、まだ人間がいる。ドゥマの報告通りならば、先ほどわたしが斬り捨てた者の他に、最低でも三名の人間がいるはずだ。落ちて行ったのが、報告にあった人間かどうかは、分からないがな」
ドゥマとは、この町へ入る際にくぐった、門の顔の事だ。ボク達を、インプを放って見て来て、普通に通してくれたから騙せたと思っていたのに、そちらもまったく騙せていなかった。あえて、ボク達を中へと誘い込み、ボク達を袋小路にするつもりだったんだ。
「……確かにそうであるが、まぁいいだろう。この谷に落ちて、生きていられる者はいない。それよりも、残った者達である。人間に通じて、私たちを騙そうとしたレオヘレネ様も含めて、私がいただく。地下の拷問室を、お借りしたい。そこで、全てを洗いざらい、吐かせよう」
「お、お待ちください!」
馬車から身を乗り出し、叫んだのはヘレネさんです。
そんなヘレネさんを、骸骨たちは取り囲むと、腕を掴んで容赦なく地面に伏せさせました。腕は、背中に回されて、一切の抵抗ができなくなってしまいます。しかも、痛そうです。
「族長様!くっ!?」
ヘレネさんに駆け寄ろうとしたカーヤさんだけど、骸骨が槍先を馬車の出入り口に突き出して、阻止しました。
「どうしたのだ、人間に通じていた、裏切り者のレオヘレネ様よ」
ドルチェットはそう言いながら、ヘレネさんの被り物を掴み取り、投げしてました。素顔が露になったヘレネさんの顎に、杖先をそえて、顔を自分に向けさせます。
「わ、私が、勝手にした事です……。人間に通じていたのは、私だけで、里の者達は関係ありません」
「苦しい言い訳だ。ダークエルフの、裏切りは、最早確定している。証拠は……突撃せよ。その被り物をとり、素顔を晒せ」
ドルチェットの合図で、馬車の中に、一斉に骸骨たちが入り込んでいきました。そして、全員を馬車から引きずり出すと、ヘレネさんと同じように拘束して、地面に伏せさせます。カーヤさんと、ラシィさんも、一緒です。
レンさんも、ぎゅーちゃんも、ディゼも、その際抵抗する様子はありませんでした。おとなしく引きずり出されると、ボクの目の前で、罪人のように並べられます。
「……ほれ。人間である。コレが、証拠だ」
「……く」
レンさんの被り物を、乱暴にはぎ取ったドルチェットが、レンさんの髪の毛を引っ張って、そう言いました。
その乱暴な扱いに、ボクは怒りを覚え、地面のヒビが更に広がりました。
「よせ、ドルチェット。それは、人間の権力者の娘だ。使い方次第では、人間側から大きな譲歩を得られる。丁重に扱うんだ」
「さすが、人間界で暮らしていたジェノス殿は、博識である。だが、この者が権力者の娘と言うのなら、尚更拷問して、精神を壊し、その権力者の前に突き出してやるのが良い。怒って、泣いて、きっと面白い反応が見る事があるのである」
「ダメだ。少なくとも、魔王様の指示があるまでは、手を出す事は許さん」
「魔王様を裏切り、人間界で逃亡生活をしていた男が、私に指示をするのか?」
「……何故、魔王様が再びわたしを軍に招き入れたのか、その意味を考えられないような貴様ではないはずだ」
ドルチェットとジェノスさんが、睨み合います。やがて、譲歩したのはドルチェットでした。
「ふ。分かっている。良いだろう。この人間に関しては、貴様に預ける。では、こちらの者をいただこう」
続いて、ディゼとぎゅーちゃんの被り物を、ドルチェットが同時に、投げ捨てました。
「む……」
ディゼの耳を見て、ドルチェットが呻ります。そして、ぎゅーちゃんの方を見て、なんだか釈然としない様子です。
「この赤いのは、亜人種であるな。では、こちらはなんだ……?人間、ではあるようだが、違う。まぁ良い。拷問して、全てを吐かせてやる。ジェノスよ。レオヘレネ様は、いただいてもよいのであるな?」
「ダメだ。今ダークエルフの長に手を出せば、ダークエルフ達が反乱を起こし、それに呼応して他の種族も動く可能性がある。レオヘレネ様に関しても、こちらに預けてもらうぞ」
「くっ……良いだろう。では、ダークエルフの戦士を二匹と、この亜人種と、人間の二匹を、私に預けてもらう」
ジェノスさんは、静かに頷き、それを許可しました。許可を得て、骸骨たちが皆に、重厚な手錠をかけた上で、首輪を嵌めて拘束をし始めます。
レンさんと、ヘレネさんは、拘束を免れる事はできたけど、捕まっている立場には変わりありません。骸骨たちに囲まれて、抵抗はできそうにない。そもそも、ここは敵地のど真ん中だ。そんな所で抵抗をしても、無駄だ。
でも、ボクは違う。今この場で暴れて、お城もろとも、吹っ飛ばす事だって出来る。イリスを斬った、ジェノスさんごと、皆まとめてだ。
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