ハーレム
すぐに、他の女の人を見て、やらしい目つきになってしまうユウリちゃんには、嫉妬を覚えます。
だけど、よくよく考えれば、ボクも同じなので、あまり強くは言えません。とは言え、ユウリちゃんのは度が超えている気もするけど、まぁそれがユウリちゃんだから、仕方がないね。
「強い女性がもてるのは分かりましたが、それじゃあロガフィさんはどうなんですか?」
ロガフィさんは、温泉に浸かっているけど、孤立している。彼女の強さは、皆分かっているはずなので、それにはボクも、違和感を覚えます。
「皆、本当はロガフィ様とイチャつきたいと思ってるけど、遠慮してるのさ。アタイだって、そうだよ。あんな、情けのない勝ち方をしてしまって、遠慮しないはずがない。それに、あのちっこいのも一緒だからねぇ。そこにアタイが近づいたら、殴っちまうかもしれないからねぇ」
「……」
ガイチィさんは、イリスの事を根に持っているみたいです。物凄い形相で、そこにはいないイリスを睨みつけ、怒りを示しています。
それにしても、それはいいけど、ユウリちゃんは未だに、ボクの腕に抱き着いたままです。周りにアピールをするためとはいえ、この体勢を続けられたら、ボクがもちません。どうにかして身をよじり、離してもらおうとするけど、ダメでした。むしろ、余計にユウリちゃんの胸や肌の感触を感じる事になり、一人で勝手に、更に恥ずかしくなります。
「……!」
そこへ、ボク達の目の前へとやってきたのは、幼女のぎゅーちゃんです。お湯の底を泳いできて、ボクの目の前に顔を出しました。
裸体を、恥ずかしげもなくボクの前に晒し、ニコリとボクに微笑んできます。
「ぎゅーちゃん。き、気持ちよさそうだね」
「……」
ぎゅーちゃんは満足げに頷くと、また泳いでどこかへと行ってしまいました。
「ま、待って、ぎゅーちゃんさん!」
「いやぁん。泳ぐ姿も素敵ー!」
そんなぎゅーちゃんを、大勢のダークエルフの女性が、慌ててついて追いかけていきます。
ぎゅーちゃんも、闘技場で力を示した一人です。しかも、圧倒的な力を示したので、ガイチィさんの言う通り、力の強い人がもてるのというのなら、ぎゅーちゃんがもてるのも当然です。
「ぎゅーちゃん、お風呂で泳いだらダメですよ!……まったく」
ユウリちゃんが慌ててそう言って叱るけど、ぎゅーちゃんの耳に届いた様子はありません。
「ネモ様」
そこへ、レンさんもボクの方へとやってきました。豊かな胸を、湯面に乗せて、大切な場所は見えないけど、かなり危ない光景です。
迫りくるレンさんから、ボクは慌てて目を逸らすと、レンさんはユウリちゃんの隣に座りました。反対側には、巨体のガイチィさんがいるからね。そこに入り込むには、あまりにも隙間が狭すぎます。だから、ユウリちゃんの隣を選んだようです。
「ラシィさん。こちらが、ネモ様です。私の、大切な想い人の」
「ラシィです。よろしくお願いしますね」
そんなレンさんが引き連れて来たのは、闘技場でレンさんと戦った、ラシィさんです。ラシィさんは、やや小柄で、胸も小さくて親近感が沸きます。でも、その戦闘スタイルは、激しい格闘系で、凄くカッコ良かった記憶があります。
「ね、ネモ、です」
「じゅる。ネモお姉さまの恋人の、ユウリです。よろしくお願いします」
そんなラシィさんを見て、ユウリちゃんは舌舐めずりをしてから、自己紹介をしました。
レンさんもだけど、ボクを恋人とか、想い人とか言って紹介するのは、嬉しいけど恥ずかしいよ。
「じー……」
「な、なんです、か?」
ラシィさんが、ボクをじっと見つめてきて、ボクは戸惑います。
「む」
慌ててユウリちゃんが、ガードに入りました。ラシィさんも、ボクの事を狙っているのかもしれないと、考えたみたいです。
「お二人は、恋人同士。それで、レンさんは、ネモさんに片思い、なんですよね。つまり、レンさんは、あたしがいただいても、良いと」
「ええ!?」
驚きの声をあげたのは、レンさんです。どうやらラシィさんは、ボクではなく、レンさんが狙いのようだ。
「ダメです」
しかし、キッパリとそう言ったのは、ユウリちゃんでした。ボクも、それはダメだと思う。だから、うんうんと頷いて、ユウリちゃんに同意をします。
「どうしてですか?お二人が恋人同士なら、レンさんは違いますよね?あたしがいただいても、問題ないはずです」
「大アリです。レンさんは、お姉さまの事が好きで、お姉さまもレンさんの事が好きです。もちろん私も、レンさんの事は好きですし、結構際どい行為もしています」
「……それは、浮気と言うのでは」
ラシィさんが、そう言ってボクを蔑むような目で見て来ました。
確かに、そうなるのかもしれない。だけど、ボク達の関係は、ちょっと……いや、かなり特殊な形なので、それをボクが説明する術はありません。
とにかく、ボクは別に、浮気している訳ではなく、ユウリちゃんの事は勿論、レンさんの事も好きと言う事で、それ以上でもそれ以下でもありません。
「……私も、ネモが好き」
「んなっ!?」
そこへやってきたのは、ロガフィさんです。イリスを抱いてやってきて、そう宣言しました。
それには、ラシィさんは更に驚きの表情を見せているけど、ロガフィさんの好きは、たぶんそう言うのではないと思います。
「私も、好きですよ。ネモの事を愛していますし、一緒にお風呂に入ったり、眠ったりする仲です」
「こんな小さな子まで……!?」
イリスが、ニヤリと笑いながら、更に場を混乱させるような事を言いました。イリスに関しては、面白がっているだけで、全く本心ではないと思います。
「な、なんていう羨ましい事を……!決めました。私、強くなります!ガイチィよりも、カーヤさんよりも、誰よりも強くなって、そして!貴女と同じ、ハーレムを築いて見せます!」
お風呂から立ち上がったラシィさんは、色々と丸見えです。そして、拳を突き出して高らかにそう宣言をすると、ユウリちゃんが嬉しそうに、拍手して称えます。
「──ネモさん。緊急事態だ」
そこへ突然、声が聞こえて来ました。姿は隠しているけど、それはアンリちゃんの声です。




