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温泉


 この地には、温泉が湧く。その影響もあってか、辺りは暑く、熱帯地と化しているみたいです。もちろん、それだけが原因ではないけどね。あくまで、その原因の一端を担っているだけです。

 ユウリちゃんは、その情報をティアンさんと、ルトラさんから聞いていたらしく、皆で温泉に入りたいと思っていたようです。確かに、疲れを取るなら、ゆっくりとお風呂に浸かるのは、とても良い事だと思います。


「……」


 だけど、温泉と言ったら、全員素っ裸でお湯に浸かる場所であり、自分も何かを着る事は許されない場所です。

 しかも、森の中にあるこの温泉は、大勢のダークエルフで賑わっていて、どこを見渡しても、裸。浅黒い褐色の肌を持つ、ダークエルフ達の裸を拝めてしまうんです。

 天然の、石を並べて囲われた露天風呂には、大勢のダークエルフの女性が浸かっていて、ボク達を出迎えました。とても大きい温泉で、湯面から溢れ出る湯気は、僅かながらに彼女たちの裸体を隠してくれるけど、まぁ見えてしまいます。色々と。

 更に、周囲もしっかりと整備されていて、身体を洗うための石鹸や、オケなども備え付けられている上に、床には木の板がしっかりと敷き詰められて、地面に足をつく心配もありません。

 こういう温泉施設があるから、ダークエルフの女性たちは皆、キレイな肌と髪をたもつ事が出来るんだなぁと、感心させられました。


「痒いところはありませんか?」

「ひゃ、ひゃい」

「ふふ」


 背後から尋ねられた声にこたえると、噛んでしまいました。笑う声が聞こえて、ボクは恥ずかしくなってしまいます。

 ボクは今、イスに座り、背後から頭を洗ってもらっている所です。この長い髪は、自分で洗うと、けっこう大変です。それでも自分で洗っていて、今も自分で洗っていたんだけど、そこへやってきたダークエルフのお姉さんが、いきなり洗うのを手伝い始めてくれたんです。


「キレイな、黒髪ですね。それに、お肌も白くて、キレイ」


 色っぽい声が、聞こえて来ます。ボクはそれを、目を閉じて必死に耐えています。

 このダークエルフの女性は、切れ長の目に、ちょっとだけセクシーな声の持ち主です。そんな声の持ち主が、ボクの耳元で色っぽく囁くと、ボクは鳥肌がたつのを抑えられません。また、顔が赤くなるのを抑える事もできません。


「……よろしければ、お身体も洗って差し上げますよ。あちらに、個室があります。そこで、この身体を使って、隅々までキレイにして差し上げる事ができます。どうしますか?」

「か、から……!?」


 それはつまり、彼女の大きな胸やら何やらを使って、洗ってくれると言う事だよね。そもそも、どうしてお風呂に個室があるかとか、色々と思うところはあります。


「い、いいです!自分で、洗えます!」

「そう言わないで。私なら、とーっても、気持ちよく洗ってあげられますから」

「っ……!」


 ダークエルフの女性が、そう言うと、ボクに抱き着いてきました。背中から回ってきた手が、ボクのお腹に触れて、段々と上に上がってきます。彼女の胸は、ボクの背中に当たり、その柔らかな弾力をアピールするかのように、身体を揺さぶりながら、耳に息を吹きかけて来ました。


「ひんっ!」

「可愛い……」


 ボクは、正直耳が弱いです。息を吹きかけられたりすると、すぐに声が漏れてしまいます。

 じゃなくて、やめさせないと。抵抗しないと……!こんな、見ず知らずの女性に抱き着かれて、あまつさえ個室で身体をくっつけあったりするなんて、そんなの絶対にダメだから。


「──はい、ちょっと前を失礼します」

「なっ、何!?」


 ユウリちゃんの声がしたかと思うと、ダークエルフの女性が、ボクから引きはがされました。代わりに、やや小柄な胸の感触を、背中に感じます。間違いなく、コレはユウリちゃんの胸の感触です。

 前に一度だけ、ユウリちゃんに背中から、こうして裸同士で抱き着かれた事があるので、分かります。


「ゆ、ユウリちゃん!?」


 頭を洗われている途中だったので、目を開ける事はできません。むしろ、開けたら鼻血を出して倒れる自信があるから、別に良いのか。


「お姉さまは、私の物なので、手を出さないでください。もしどうしても手を出すと言うのなら、私も混ぜてください」

「何言ってるの!?」


 ボクは、目を閉じて前を向いたまま、ツッコミました。


「わ、分かりましたよ……おじゃましました」


 そう言うと、ダークエルフの女性が立ち去っていく足音が聞こえて、とりあえずは安心です。ただ、ユウリちゃんがボクの背中に抱き着いて、くっついたままで、とても恥ずかしいです。


「ゆ、ユウリちゃん、その、胸が……!」

「ああ、ごめんなさい。今、私が洗ってあげますね」


 ユウリちゃんはそう言うと、ボクの背中からはがれると、ボクの頭を洗ってくれました。とても気持ちよくて、安心できる。繊細なユウリちゃんの指さばきは、ボクの頭のツボを的確に刺激してくれます。


「はい、それじゃあ、お湯を流しますよ。目をしっかり閉じていてくださいね」

「う、うん」


 言われた通り、目をしっかりと閉じていると、そこに頭から、お湯を掛けられました。髪を洗ってくれていた泡が、それによって流されて、落ちていきます。


「キレイになりましたよ。ついでなので、髪の毛を結んでおきましょうね」

「あ、ありがとう」

「いえいえ」


 ユウリちゃんは、手際よくボクの髪の毛を結んでから、タオルで髪を固定してくれました。コレで、お湯に浸かっても、髪が濡れる事はありません。


「あ」


 それから振り返ると、ボクはユウリちゃんの裸を、目の前に見る事になってしまいました。小ぶりな胸と、お風呂の熱で、わずかに赤く染まる肌。ボクと同じように、頭の上でタオルを巻いて髪の毛を固定していて、その可愛いく小さな顔が、丸見えです。


「ゆ、湯船に、浸かりましょうか!」

「そ、そうだね!」


 お互いの裸を、まじまじと見つめ合ってから、ユウリちゃんの方から、話を誤魔化して提案してくれました。あと1秒遅かったら、ボクはのぼせて倒れていたよ。今も、かなり危ういけどね。でも、目を閉じて、必死に耐えます。ボクも、温泉に浸かりたいからね。


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