表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

393/492

似ている二人


 姿を現わしたのは、カーヤさんです。ディゼが戦いを望んでいた、カーヤさんが出て来ました。

 カーヤさんの姿に、周囲の歓声は最高潮になり、カッコイイ2人に対する声援は、なりやむ事を知りません。


「ディゼさん、カーヤさんと戦いたかったんですよね。望みが叶って、良かったですね」

「うん……」


 良いよと言ったのは自分だけど、結局は心配です。2人のレベルは、拮抗している。力の大きな者同士の戦いは、お互いに加減ができなくて、怪我をしてしまう可能性が高い。

 それに、カーヤさんが出て来た事により、尻尾を振って喜びを隠せないディゼが、更に心配です。嬉しいのは分かるけど、ちょっと興奮しすぎだよ。

 あと、尻尾を振るその姿が、可愛いです。カッコ良いのに、可愛い。


「……貴女との戦いを、私は望んでいた」

「分かっている。私も、同じだったからな。……先ほどの剣技は見事だった」


 睨み合い、何かを会話するディゼとカーヤさんの姿を見ただけで、観客は黄色い歓声を送ります。

 その辺は、いくらダークエルフと言えども、本当に普通の女の子っていう感じで、安心だよ。皆が皆で、ガイチィさんのように命令に忠実で、イリスに同調する訳じゃないけど、死に急ぐような人達ばかりではないようだ。

 それは、先ほどの、呆気なく敗北宣言を出したラシィさんの姿を見て、分かってはいました。でも、こういう姿を見ると、親近感がわいて、安心するんです。


「続いての試合は、ダークエルフの戦士長、カーヤ様と、亜人種の女性、ディゼルトの戦いです!」


 睨み合いをする2人は、審判の試合開始の合図を、まだかと待ち望むように、剣に手を添えて待っています。

 その様子に、観客たちは静まり返りました。2人があまりにも真剣で、そして睨み合う姿が絵になっているので、見とれてしまっているんです。


「試合を始めてください!」


 静まり返ってからの、審判の合図でした。

 そう合図をした瞬間、2人は動き出していました。剣と剣が、ぶつかり合い、大きな金属音が響き渡ります。合図と同時に、お互いの距離を詰めていた2人は、いきなり激しく互いの剣を繰り出して、応酬を見せています。

 火花が飛び散り、音が響き、2人は目にもとまらぬ速さで、剣を全力でぶつけている。

 実際、この場に2人の剣技を、目で捕らえられている人が、何人いるだろう。ボクとロガフィさんを除けば、恐らくは数人程度だと思う。2人の剣の速さは、それくらい極められている。

 2人の戦闘スタイルは、似ています。武器はお互い短剣を使うし、魔法ではなく剣技に頼って戦うスタイルだ。

 ただ、違う所をあげるとしたら、カーヤさんは格式ばった動きなのに対し、ディゼは自由で柔軟な動きを見せています。どちらが良いと言う訳ではないけど、2人がどういう風に剣技を鍛えて来たかが、よく分かります。ディゼは、自己流な所が大きく、カーヤさんは誰かに教わったみたいな感じがする。


「さすがだな!思っていた通り、貴女は強い!」

「っ……!こちらの台詞だ!この集落の誰よりも、貴女の剣は重く、そして速い!しかし、勝つのはこの私だ!」


 カーヤさんが、ディゼが繰り出した剣を、後ろに身体を逸らしてかわしました。その勢いのまま、後方に飛び退いて距離をとると、腰を落として剣を構えます。

 それに対して、ディゼは追撃はせずに、カーヤさんが繰り出そうとしている攻撃に備えた。


「──キルモーメント」


 一瞬だった。カーヤさんの姿は、残像を残すほどに素早く動き、ディゼの背後へと回り込んだ。

 方向転換をする際の踏ん張りは、とても強力で、各所で土煙があがっています。ほぼ同時にあがった土煙が、上がる前に、すでにカーヤさんはディゼの背後に回り込んでいて、その剣で襲い掛かりました。


「っ!」


 ディゼはその剣を、身体を横に逸らし、かろうじてかわした。動きには、完全についていけていなかった。かわす事ができたのは、ディゼの戦いの勘と、動物的な直感のおかげかもしれない。

 初撃は、勘のおかげで、かわす事ができた。だけど、次の攻撃に対する備えを、ディゼはできていない。カーヤさんの剣は、そんなディゼの身体を、容赦なく斬りつけました。

 ディゼの血が、宙を舞います。傷は、ディゼの左肩から胸のあたりまで、斜めにできて、ディゼに怪我を負わせました。

 更に、既に次のカーヤさんの攻撃が、ディゼに襲い掛かろうとしています。剣は、ディゼの身体を切り裂こうと、ディゼの胸の辺りを狙っている。

 初撃はかろうじてよけたものの、体勢を崩され、次の攻撃で身体をきざまれた事により、怯ませたうえで、最後にとどめの一撃に入る。流れるような、一瞬の出来事です。

 だけど、最後の攻撃が、ディゼの身体を斬りつける事は、なかった。


「──三重瞬撃(さんじゅうしゅんげき)


 ディゼの短剣が、赤く輝いたかと思うと、カーヤさんの剣を受け止めました。速く、とても強力な攻撃です。カーヤさんは、速さに重きを置いていたために、速く強力なディゼのその一撃に剣を押し返された上で、後方へと身体ごと飛ばされていきました。

 飛ばされたその先にあるのは、先ほどのレンさんとラシィさんとの戦いで隆起したままの、土です。


「がはっ……!」


 カーヤさんはその土に、背中から打ち付けられて止まってから、地面に着地します。口からは、涎が出て痛そうだったけど、倒れる様子はありません。

 ここまで、本当に一瞬の出来事です。観客が、ようやく追いついてきて、どよめきと歓声が同時に沸きました。


「ぐえっ。く、苦しいですよっ……!」

「ディゼ、怪我をした」


 イリスを強く抱きしめるロガフィさんが、血を流すディゼを心配しています。ボクも、心配なのは同じだ。レンさんも、ボクの膝から飛び起きて、ディゼを心配しています。

 だけどそれ以上に、2人の息をつく間もないような戦いに、ボク達は魅了されている。


「が……頑張れ、ディゼ!」


 怪我はしてほしくないけど、ボクは全力で叫んで、ディゼに声援を送りました。


「ディゼさん、頑張ってください!」

「ディゼ。頑張って」

「く、苦しい……だから、苦しいですって、ロガフィ……!」

「頑張れー!」


 レンさんに、ロガフィに、アンリちゃんも、ディゼに向かって声援を送ります。ぎゅーちゃんも、身を乗り出して戦いを見守っている。皆、ディゼの勝利を信じて、願っています。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ