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お言葉に甘えて

誤字報告ありがとうございます!


 アンリちゃんの姿を見たカーヤさんは、驚愕の表情を見せました。まさか、幽霊が現れるとは思っていなかったみたいで、戸惑っています。

 あと、ディゼが怖がって、頭を抱えています。レンさんが、そんなディゼを優しく抱きしめて、庇ってあげました。未だにディゼは、アンリちゃんがちょっと苦手だからね。苦手と言っても、嫌いとかそういう訳じゃなくて、幽霊が怖いだけです。つまり、苦手です。


「あ、アンデッド……?」

「それとは、少し違うかな」


 そう言いながら、アンリちゃんは全貌を現わし、くるっと一回転してから、床の上に着地しました。


「ボクの名前は、アンリ・レミントン。幽霊だよ」

「それは……見ればなんとなく分かる」


 アンリちゃんは、身体全体が透明で、天井も壁もすり抜け放題だからね。足もなくて、誰でも一目見たら、幽霊だと分かります。


「……この世に囚われし、魂の気配を感じます。貴女は、何かしらの魔法具により、魂をこの世に留めているのではないでしょうか」

「分かるの……?」

「はい。伊達に、長生きはしていませんから。ですが、確証はありません。貴女の魂を縛る物は、もう何もないように見えます。この世に残る理由が、ないように思えるのですが……」

「ご名答だよ。でも、話せば長くなるんだ。だから、手短に言うね。ボクは、ネモさん達と知り合って、魂を解放してもらった。でも、ネモさん達とはもっと一緒にいたい。だから、残ったんだよ」


 本当に、短かった。でも、アンリちゃんについては話せば長くなるのは本当で、今はそれで満足しておいてもらうしかありません。

 ボク達には、先に話すべき事が色々とあるからね。


「……分かりました。今はそれより、話すべき事があるようですし、詮索はしません。カーヤも、あまり警戒しないであげて。ロガフィ様の仲間だと言うのなら、危険はないわ」

「……はい。すみません」


 カーヤさんは、レンさんに説得されて攻撃はしなかったものの、腰の剣には手をかけたままでした。いつでも斬りかかる準備をしたうえで、アンリちゃんを迎えたんです。どうせ、アンリちゃんを斬る事はできやしないだろうけど、仲間が剣を向けられる姿は、見たくありません。だから、おとなしく剣を離してくれて、良かったです。


「それでは、ロガフィ様がどうして生きているのか、聞きたい所なのだけれど……貴女は少し、休んだ方がいいわ」


 ヘレネさんは、そう言ってボクを指さしてきました。と思ったのだけど、正確に言えば、ユウリちゃんを指しています。くっついていたので、分かりませんでした。


「だ、大丈夫です。ここは涼しいので、少し休めば、元気になります」

「無理をする必要はない。今は、しっかりと休む時。奥に、柔らかいベッドがあるし、氷もあるわ。それを使って、まずは熱を下げなさい。それから、水分もちゃんと取る事。この辺りで取れる、栄養のたっぷり詰まったヤガの実から取れた果汁を、冷やしてある。それを飲んで、眠っていれば、すぐによくなるはずよ」

「でも……」

「ユウリちゃん。お言葉に、甘えておこう?」


 ユウリちゃんは、明らかにへばっている。身体は熱いままだし、顔色もよくありません。

 ボク達がカーヤさん達に囲まれて、それに対して声を掛けたのは、皆を休ませてもらうためでもあったんだ。もしかしたら、余計に疲れる事態になってしまっていたかもしれないけど、結果としては、上手くいきました。ロガフィさんの言う通り、皆良い人たちで、言うまでもなくユウリちゃんに気を遣ってもらって、とてもありがたいです。


「ルトラ。ティアン」


 ヘレネさんが名前を呼ぶと、しばらくして外から、ダークエルフの女性が2名、やって来ました。

 ダークエルフの女性は、皆一様に、銀髪と、浅黒い肌を持っていて、スタイルが良いです。それが彼女たちの特徴なのだろうけど、身体の各所に、多少の大小はあるものの、基本的に同じ服装。同じ髪色。同じ肌の色。同じような体つきと、顔をしているので、見分けるのに苦労します。

 新しくやってきた女性も、カーヤさんとそっくりです。ただ、背や髪の長さが違うので、よく見れば違いがあります。


「お呼びでしょうか」

「お客様のお世話をお願い。暑さで、大分弱ってるの。奥の部屋を使って良いから、案内をしてあげて」

「それは、大変。ルトラ。お客様を、おぶって差し上げて」

「はい。どうぞ、こちらに」


 ルトラと呼ばれた女性が、ユウリちゃんに向かって背を向けて跪き、背中に乗るように促します。


「い、いえ。歩けますよ……?」

「遠慮しないでください。さぁ、どうぞ」

「で、でも……」


 ユウリちゃんは、未だに話に参加できない事に、負い目を感じているみたいだ。そんなの、ボク達に任せて、とにかく早く、元気になってほしいです。


「行ってください、ユウリさん。この場の事は、私たちにお任せください。先はまだまだ長いんですから、ここで気張る必要はありませんよ」

「……分かりました。では、すみません。お言葉に、甘えさせていただきます」


 レンさんの優しい言葉に、ユウリちゃんは渋々ながら納得し、ルトラさんの背中に被さりました。


「では、私たちが責任を持って、お世話をさせていただきます」

「お、お世話って、どこまでしてもらえるんですかね?例えば──」

「ふぇ!?」


 おんぶをされたユウリちゃんが、興奮した様子で何かを言いながら、連れていかれました。直後に、ルトラさんの驚きの声が聞こえて来たのが、ボクの不安を煽ってきます。

 しかしこれで、ようやく本題に入る事ができそうです。


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