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生きていた

誤字報告ありがとうございます!


 とはいえ、気配もなく近寄ったぎゅーちゃんに対し、ダークエルフの女性は警戒を緩めようとはしません。かと言って、ボク達に隙を見せる訳もいかず、ぎゅーちゃんと、ボク達とを、交互に睨んで威嚇してきます。


「……」


 ぎゅーちゃんは、そんなダークエルフの女性に構わず、距離を詰めようとします。しかし、ダークエルフの女性は、素早く引き下がり、ぎゅーちゃんと距離をとりました。


「近寄るな」

「……」


 そう言われても、ぎゅーちゃんはニコリと笑うだけで、興味深そうにダークエルフの女性に近づきます。


「近寄るなと言っているだろう!」

「……!」


 ついに、ダークエルフの女性が、ぎゅーちゃんに対して怒鳴りつけました。

 言う事を聞かないぎゅーちゃんが悪いとは言え、ぎゅーちゃんはそれがショックで、しょんぼりとしてしまい、項垂れました。


「あ……いや、今のは少し、言い方が悪かった。すまないが、近寄らないでくれ。今は、大切な場面なんだ。お姉さん達の方に、行っていような。な?」

「……」


 項垂れたぎゅーちゃんの頭を撫でながら、そう言ってあげるダークエルフの女性は、本当に優しそうなお姉さんです。

 ぎゅーちゃんは、怒鳴られてショックを受けた様子だけど、頭を撫でられたことにより、元気を取り戻しました。そして、ダークエルフの女性に頷いて答えると、ボクの方へと駆け寄ってきます。


「ぎゅーちゃん。勝手に近づいたらダメだよ」

「……」


 ボクがそう言って軽く叱ると、分かったのか、分かっていないのか、ニコリと笑いながら頷きます。たぶん、分かってないね。まぁ別に良いんだけどね。悪い人じゃなさそうだし、それはぎゅーちゃんも、分かっていて近づいたんだと思う。


「……もう一度聞く。人間が何故、このような場所にいる。ここは、魔界。魔族の領地である」


 ぎゅーちゃんを優しく追い返したダークエルフの女性が、切り替えて、再びキツイ目つきになり、ボク達に向かって尋ねて来ました。

 ここで素直に、魔王を倒しに来たとか言ったら、間違いなく争いがおこります。ここは、その事を隠し、誤魔化して、やり過ごす必要がある。

 でも、ボクには良いアイディアが浮かんできません。何と言えば、穏便にすます事ができるかな。頭をフル回転させて、考えます。


「──そんなの、決まっているでしょう。魔王を倒しに来たんですよ」


 そうそう。そうなんだけど、それを素直に言ったらいけないから、ボクは考えているんだよ。

 じゃなくて、今確実に、誰かがそう素直に、そう言ってしまいました。というか、イリスが言いました。偉そうに腕を組みながら、そう宣言したんです。


「なに……!?」

「驚く程の事ではないでしょう。私たちは──もがっ」

「イリスさん!」


 更に何かを言おうとするイリスの口を、ディゼとレンさんが塞いで、やめさせました。でも、もう遅いです。しっかりと、魔王を倒しに来たと宣言したボク達は、魔界に住む彼女たちにとっての、敵と認識されてしまったはずだ。


「貴様達……!」


 ボク達を、強く睨みつけるダークエルフの女性に対し、ロガフィさんが前に出て、彼女に歩み寄りました。

 ボク達に対する警戒を強くした彼女は、ロガフィさんに対して短剣を抜き、構えます。


「あ、危ないよ、ロガフィさん……」

「平気」


 心配するボクをよそに、ロガフィさんは更に、ダークルエルフの女性に向かって歩いていきます。


「……貴様は……いや、貴女は……!」


 そんなロガフィさんの姿を見て、ダークエルフの女性が、驚愕の表情を見せます。

 そうだった。ロガフィさんは、元魔王だ。魔界に住む、魔族の一員であるダークエルフの彼女が、ロガフィさんの顔を知っていても、不思議ではない。

 そんなロガフィさんの姿に気づかれて、一体何が起こるのか。そんなの、想像ができません。でも、大変な事になりそうが気がして、なりません。


「私は、ロガフィ」


 ボクが慌てているのにも気づかず、ロガフィさんは徐に、頭につけたネコミミの帽子を取り外し、片角になった頭を見せました。


「信じ、られない……!貴女は、死んだはずだ!」

「生きていた」


 そう答えたロガフィさんに対し、ダークエルフの女性の目から、涙が溢れました。そして、手にしていた剣をその場に投げ捨てると、ロガフィさんに向かって跪きました。

 更に、ボク達を隠れて囲んでいた他のダークエルフ達も、次々に姿を現わすと、同じようにロガフィさんに向かって跪き、中には嗚咽をあげて泣いている人の姿もあります。

 現れたダークエルフ達は、皆女性で、皆同じような服装で、ビキニの水着姿です。跪くと、お尻が見えてしまいそうで、というか少し見えていて、目のやり場に困ります。ボクが腕に抱いているユウリちゃんは、涎が垂れそうな勢いで、笑って見ているよ。

 でも、ボクが心配するような事は、何も起きませんでした。彼女たちは、ロガフィさんが生きていた事に、涙を流して喜んでいます。そんな人たちが、ボク達を襲う訳がないので、ひとまずは安心です。


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