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傷つけないでほしい


 囲んでいるのは、10人程だ。それぞれが、近くからと遠くからに分かれて、ボク達を狙っている。

 その気配が、とても薄い。でも、悪意に敏感なイリスが先に気づき、指を舐められながら周囲を見渡すのを見て、ボクも気づきました。


「この辺りには、ダークエルフが住んでいる」


 恐らくは、ボク達を囲んでいる者の存在に気付いているロガフィさんが、いきなりそう言って、教えてくれました。

 ダークエルフと言えば、エルフが魔族化して闇に囚われた姿だ。エルフとは対となるような存在で、エルフが光なら、ダークエルフは闇です。

 モンスタフラッシュのゲームの中では、悪役……というか、主人公側の奴隷商人として出てきて、奴隷のエルフに対して、あんな事やこんな事をしていました。


「でも、彼女たちは優しい」

「……優しい?」

「そう。だから、傷つけないでほしい」


 ロガフィさんは、ボクの服の袖を引っ張りながら、そうお願いをしてきました。

 ロガフィさんがそう言うなら、たぶんそうなのだと思う。だから、反対する理由は、ボクにはありません。

 所詮、ゲームはゲームで、現実は現実だからね。


「……ネモ」

「分かってるよ」


 イリスに名前を呼ばれ、安心させるように答えます。

 ボクはとりあえず、未だにイリスの指を舐めている、ユウリちゃんの頭を掴んで引き離し、やめさせました。


「あー、私のイリスの指がぁ」

「何が貴女のですかっ!」

「レンさんも、そこまでにするんだ」

「ああー、イリス様ぁ」


 レンさんは、ディゼが両脇に手を差し込んで、引き離しました。イリスの手に、名残惜しそうに手を伸ばしながら、連れていかれます。

 その際に、イリス様と呼ばれたイリスは、嬉しそうに鼻を鳴らしました。


「お姉さまー……」


 ユウリちゃんは、相当参ってる。イリスから引きはがしたけど、身体はぐったりとしていて、今にも倒れてしまいそうです。ボクはその身体を、お姫様抱っこによってかかえました。

 水分は、十分とれているはずだ。水の魔法石があるので、いつでも新鮮で冷たい水を飲むことができるので、ちょくちょく飲んでいるからね。

 では何故ぐったりしているかというと、暑さによって体力が奪われたせいだ。イリスは自前の魔法で自分だけ涼み、難を逃れたけど、ユウリちゃんやレンさんには、自衛の手段がない。ここへ来て、限界が来始めたのかもしれません。

 とはいえ、ステータス画面のHPは、まだまだ80以上をキープしているから、大丈夫だとは思うんだけど、無理は禁物だね。


「……で、出てきてくださいっ」


 ボクが、出来るだけの大きな声で言うと、ディゼが驚き、ボクを見つめて来ました。ディゼに支えられているレンさんも驚いているけど、レンさんはすぐに状況を察し、紋章の描かれた紙を懐から取り出し、構えます。


「お姉さま、どうしたんですか?」


 腕に抱いているユウリちゃんが、心配そうに尋ねて来ました。ぐったりとしているユウリちゃんの身体は、汗が溢れ、熱くて、かつて病に侵されていた時の姿を思い出してしまいます。

 あの時よりは、元気だけどね。でも、心配だよ。


「……囲んでいるのは、分かっています。誤魔化さずに、姿を現わしてください」

「……」


 ボクの訴えを聞いて、木の上から降りて来た人物が、姿を現わしました。

 現れたのは、肌の黒い、褐色肌の人です。スラリとした美しい体形を、惜しみなく見せてつけるような、ビキニの水着姿のような女性です。その上から、半透明の黒い布を巻いて、身体を所々覆っています。大切な所は、ビキニによって隠れているけど、半透明の黒い布は透けていて、丸見えです。むしろ、それが余計に妖艶さを際立たせていて、怪しい雰囲気を纏っています。

 髪は、銀髪。長い髪は、後ろでまとめ、そこに簪のような物を刺していて、とてもよく似合っていると思います。耳は尖っていて、エルフであるイリスと、そこだけ同じです。

 彼女の姿は、間違いなくダークエルフです。ロガフィさんの言った通り、この辺りに住んでいる人たちだと思います。


「人間が、何故この森にいる」


 ここは、魔族の領地だ。人は、絶対にいないはずであり、彼女の疑問は最もです。

 切れ長で、長い睫毛の目が、ボクを睨みつけて、そう尋ねて来ました。

 半透明の黒い布は、彼女の口元も覆っています。透けているので、口は丸見えだけど、それがまた、怪しいです。そして何故か、ちょっとえっちです。

 そう感じさせるのは、彼女の格好のせいもあると思う。まさか、ビキニの水着姿の美人さんが現れるとは思っていなくて、不意をつかれてしまいました。

 でも、彼女の手は、腰元にまいたベルトによって固定された短剣を掴んでいて、いつでも戦える準備をしています。

 いくら相手が美人さんだからと言って、油断をしてはいけません。それに、現れたのは彼女だけだけど、実際は他にも何人もいるんだ。ロガフィさんは、優しい人たちだと言ったけど、一応は、いつでも反撃をする準備だけ、整える必要があります。

 そのためには、ディゼや、ロガフィさんに、ぎゅーちゃんにも協力をしてもらって……と思ったけど、ぎゅーちゃんの姿がない事に、気づきました。


「……」

「っ!?」


 気づけば、ぎゅーちゃんは現れたダークエルフの、背後に立っていました。それに気づき、ダークエルフの女の人が、慌てて退きます。思わず剣を半分ほど抜き、ぎゅーちゃんに斬りかかろうとしたみたいだけど、相手が小さな女の子だという事に気が付いて、その手を止めました。

 相手が小さな女の子だと気づいて剣を抜くのをやめるあたり、ロガフィさんの言う通り、やっぱりいい人なんだと思います。


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