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やんちゃをしてた時


 頭を抱えるボクの服の袖を、メギドさんが引っ張って来ました。

 不安になるあまり忘れていたけど、取り残されたのはボクだけじゃなくて、メギドさんもいるんだった。


「不安になる事はない。勝てば、よいのだ。おぬしなら、必ずや勝つ事ができるであろう」

「……」


 そう言ってくれるのは嬉しいけど、やっぱり不安です。魔王が、女神様の力を手に入れるとか、聞いたことがないからね。相手の強さが分からないので、どうしても最悪の事態を想像し、性格の悪いアスラに鞭打たれる図が頭を離れません。


「ところでおぬしは、クナイによって送り込まれたのだな?」

「は、はい。え、えと……そうだ、コレを……」


 ボクは、メギドさんに尋ねられ、見せるようにと言われていたクナイさんの鱗を、ポケットから取り出しました。それをメギドさんに見せると、彼女は優しく笑い、頷きました。


「分かっておる。それは、しまってよいぞ。しかし、アスラ様の奴、相当怒っておったのう。さすがに、おばさんは言い過ぎであったと思うぞ?」

「は、はい……」


 それは、自分でも思います。でも、アスラの方が悪いんです。最初に、ボクを弱虫だとか、クズだとか言ってバカにしてきたのは、アスラの方だからね。だから、コレでお相子です。


「しかし、よく言った。自らは手を下すことなく、関係のない者を巻き込もうとするアスラ様のやり口は、わしも気に入らん。とくに、結果としてわしの友人である精霊を、大勢殺す事になった行動には、腹をたてておった所である」

「精霊……」


 先日ボク達を襲撃し、今はイリスと一体化しているセレンの事が思い浮かびます。彼女は、故郷が魔王によって滅ぼされたと言っていた。もしかしたら、その事と関係があるのかもしれない。

 幼女な姿となったメギドさんの足元には、よくみると竜の尻尾が下がり、地面にとぐろを巻いています。その尻尾の先端を、メギドさんは強めに地面を叩き、悔し気に目を伏せました。


「──ところで、ブラッドの坊やは元気か?」


 目を伏せていたメギドさんが、顔をあげると話を変えました。

 友達が死んだ、思い出したくもない出来事を、思い出してしまったようです。それを誤魔化すように、話を変えました。


「えと……ブラッドの坊や?」


 突然そんな事を聞かれて、ボクは首を傾げました。誰の事を言っているんだろう。どこかで聞いた事がある名前だけど、思い出せません。


「おぬしの仲間の女子……確か、名をレンファエルと言ったな。その父親の事である。わしとあ奴は、知らぬ仲でもなくてのう」

「あ……ああ!」


 レンさんの、お父さんの事を言っている事に、ボクはようやく気付きました。

 そして、レンさんのお父さんの話も思い出します。確か、昔やんちゃをしてた時に、大怪我をして竜に助けられたとか、なんとか言っていた。それが、メギドさんの事だったんだ。


「はい!メギドさんのお話も、少しだけ聞いています。確か、レンさんのお父さんの、命の恩人なんですよね?」

「その通りじゃ。いや、それ以上の関係だったとも言えるかのう」

「え?」

「あ奴とは、肉体関係を持つ直前まで行ったのだ」

「……」


 ボクは、それを聞いて頭を抱えました。

 この、幼女なメギドさんと、レンさんのお父さんが?レンさんのお父さんって、そういう趣味があったの?だとしたら、幻滅です。こんなに小さな子に手を出すなんて、一体何を考えているんだろう。今すぐディンガランに戻って、殴り飛ばしたくなりました。


「くくく。娘には、せいぜい秘密にしておいてやれ。あ奴にも、親としての威厳や、体裁という物がある」

「で、でも……!」

「あ奴が結婚し、家庭を持つ前の話だ」


 そういう問題でもない。こんな小さな子に、手を出そうとしたというのが、問題なのだ。


「しかし、わしも驚かなかった訳ではない。わしのような身体を見て欲情する人間など、初めてであったからな」

「そ、そういう人も、けっこういます……」


 ボクはこの世界に来て、イリスやキャリーちゃんなどを、変な目で見る人を、大勢見て来ました。その筆頭にいるのが、メイヤさんです。


「そうなのか!うーむ……割と、そういうものなのか?」

「はい……だから、気を付けてください」

「おぬしも、欲情するのか?」

「ふぇ?」

「わしの身体を見て、おぬしはどう思ったのかと、聞いている。どうじゃ?」


 ボクに向かい、首を傾げる幼女を見て、ボクは胸が高鳴るのを感じます。ドレス姿のメギドさん。足を包む、黒のタイツ。幼いながら、どこか妖艶さを兼ね備えた、美しい幼女……。最初は、背伸びしてる感じで可愛いと思ったけど、こうして尋ねられよく見ると、妖艶で美しいです。

 ボクは決して、幼女が好きとかそういう訳ではなくて、でもイリスの事は好きだし、嫌いという訳ではありません。

 それに、メギドさんは昔、レンさんのお父さんとそういう関係になりそうになったんだよね。もし、今ここで、ボクが欲情すると答えたら、どうなるんだろう。ボクも、メギドさんとそういう関係になれるかもしれないという事なのだろうか。


「わしの身体は、堅いぞ?人間などと、比べ物にならん」


 そんな事はないと思う。イリスと同じく、柔らかくて突っつきたくなるような、魅力的な頬を持っています。


「それにのう、大きさが違いすぎる。体格が、違すぎと思わぬか?」


 思います。だから、ダメなんです。でも、そういう肉体関係とかを抜きにして、改めてみたメギドさんは、とてもキレイだと思います。イリスに負けず劣らずの、美幼女です。


「ぼ、ボクから見れば……欲情とか抜きにして、魅力的だとは、思います……」

「おぬしもそう思うのか。人間は、よく分からぬのう」


 そう伝えたボクの心臓は、バクバク言っています。凄く、緊張しました。


「──まったく、竜の身体のどこに、欲情する要素があるというのだ」

「……竜?」

「そうじゃ。ブラッドの坊やは、竜のわしの姿を見て、素っ裸になってわしに告白していたのだ。気持ち悪かったのう。だが、わしとて生まれてこの方、オスと色恋沙汰になった事がなくてな。不覚にも、少しだけじゃぞ?少しだけ、惹かれるものを感じたのは、事実じゃ」

「そ、その竜の姿って、あの銀色の、鱗に覆われた姿の事ですか?」

「そうじゃが?」

「……」


 ボクは、勘違いをしていた事に気づき、固まりました。

 でもどこか、安心する自分もいます。それは、レンさんのお父さんに対しての、疑いが晴れたからです。レンさんのお父さんが、幼女好きの変態じゃなくて、良かったよ。


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