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二日酔い


 辺りはすっかり日が暮れて、暗くなりました。でも、今日は天気が良くて、月明りもあり、真っ暗という感じではありません。星も明るく光っていて、いつもの夜よりも、明るく感じます。

 ボクは、イリスを膝にのせ、のんびりとそんな星空を眺めています。

 昼間とは、当然体勢が変わっています。色々とする事をして、その後もイリスが寝ているので、元の体勢に戻ったんです。


「……はっ!」


 突然、前触れもなく起き上がったのは、ディゼです。相変わらず、ロガフィさんの膝の上で眠っていたディゼは、意識を取り戻したその瞬間、勢いよく起き上がりました。

 そして、流動的な動きですぐに立ち上がり、周囲を警戒します。


「……」


 耳を立たせ、角度を変えながら辺りを冷静に見渡すディゼは、今が夜になっている事。自分が、ロガフィさんの膝の上で眠っていた事。ロガフィさんの膝には、レンさんも眠っている事。傍でイリスに膝枕をしている、ボクの事を確認して、安心したように息を吐きました。


「お、おはよう、ディゼ」

「ネモさん……私は一体……いっ……」

「ど、どうしたの!?」


 ディゼは、頭を押さえ、痛がる仕草を見せました。


「だ、大丈夫……大した痛みではない」

「で、でも……」


 起き上がったディゼは、顔色が悪い。大丈夫と言う割には、膝をついて、座り込んでしまった。

 もし、ぎゅーちゃんの毒が、何かの悪い影響をディゼに残しているのだとすると、大変だ。すぐに、お医者さんに診てもらわないといけません。


「いや、本当に平気だ。うぷっ。こ、コレは……酒を飲みすぎた後の症状に似ている」

「……お酒?」


 ボクは、お酒を飲んだ事がありません。なので、それがどういう症状なのか、分からない。

 でも、頭が痛いと言う上に、気持ち悪そうに口を押えるディゼは、やっぱり心配だよ。


「うぅん……うへへ。ネモ様ぁ」


 レンさんも、目を開いて気づいた様子だけど、ロガフィさんの膝に抱き着いて頬ずりをして、ボクの名前を呼んでいます。どうやら、寝ぼけているみたいです。


「うっ、うぷっ。お、おえぇ」


 そして、口を押えて起き上がると、地面に突っ伏して吐き出す仕草を見せました。幸い、何も出てこなくて、ただ気持ち悪くてえずいただけのようだ。

 それを見て、ディゼも更に気分が悪そうになり、口を押えます。

 そんな2人の背中を、ロガフィさんがそれぞれの手で、さすってあげました。


「うぅ。一体何が。この気持ちの悪さと、頭痛は一体……」

「レンさんもか……。私も、同じ症状に悩まされている所だ。コレは、酒を飲みすぎた時の症状と似ている。何か、心当たりはないか?」

「お、お酒?私、お酒とか飲んだことないですよ……?知り合いに、お酒を凄く飲む方はいましたが……確かに、その方が飲みすぎた日の翌日、こんな感じでしたね」


 レンさんの言う知り合いとは、間違いなくメルテさんの事だね。あの人は、休日とかはいつも酒瓶を抱いて寝ていたような人だから、それを見てきたレンさんは、自分がそれと同じ症状だと分かったみたいだ。

 それにしても、2人とも元通りになって、良かったよ。ロガフィさんの言う通り、毒は抜けて、元に戻ったみたいです。


「ふ、二人とも、何があったのかは、覚えてないの……?」

「何があったか?確か、川を馬車でたどってきて、その後荷物の整理をして……」

「そうでしたね。それで、ネモ様と何かお話をしているうちに、段々と良い匂いがしてきて、頭がふらふらして、その後は……」

「その後……」


 2人は、そこで固まりました。そして、徐に自分の顔を手で覆います。

 どうやら、何があったのかを思い出したみたいです。2人とも、耳まで真っ赤にして、羞恥に震え出します。

 レンさんは、まだいいよ。いつもよりも頭のネジが飛んでしまった感じだったけど、まだいつものレンさんに近かった。

 一方でディゼは、完全に別人になっていました。恥ずかしがり屋だった面影は一切なくなり、ボクやロガフィさんに対して、色々な事を恥ずかしがる事なくしてきたからね。具体的に言えば、ボクの唇に迫ったり、ロガフィさんの頬にちゅっちゅしたり、だ。カッコ良くて、とても似合ってはいたけど、ディゼのキャラにはない事です。


「私は、なんて事を……!」


 恥ずかしがるレンさんだけど、そんなに恥ずかしがるような事でもない気がします。あれくらい、いつものレンさんに毛が生えたくらいのレベルだからね。むしろ、もっと酷い時もあるくらいです。


「……ほっぺが痒い」

「ご、ごめんなさい、ロガフィさん!私は、なんて事を貴女にしてしまったんだ……!き、汚かったよな!すぐに、新しい布で拭いてあげ……うぷっ」


 頬の痒みを訴えるロガフィさんに対し、慌てて謝罪の言葉を口にするディゼだけど、気分の悪さが上回っています。

 そんなディゼの背中を、ロガフィさんは未だに、優しくさすってあげている。


「別に、良い。嫌では、なかった」

「……!」


 ロガフィさんにそう囁かれ、ディゼの耳が、ふにゃりと折れ曲がりました。尻尾はぱたぱたとせわしなく動き、顔は真っ赤です。嬉しいけど、恥ずかしい。そんな感じかな。


「ううん……」


 そんなやり取りを見ていたら、ボクの膝の上に寝ていたイリスも、お目覚めのようです。


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