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強くなる


 その場が落ち着いてから、ボク達は出発の準備を始めました。とはいえ、荷物はほとんど降ろしていないし、軽い荷物を運び入れるだけなので、すぐに終わります。

 ちなみにその間、エーファちゃんはボクの腕に抱き着いたままです。オレの嫁にすると宣言されてから、ずっとこんな調子で、とても上機嫌になっています。


「オレは、ネモを絶対に幸せにするぞ。そのために、強くなる。強くなって、ネモを守れる女になるんだ」


 家の玄関前で、荷馬車に荷物を運び入れるディゼを、ボクと一緒に眺めながら、エーファちゃんがそう宣言しました。そう言ってくれるのは、嬉しい。好意を持たれる事は、嫌な気持ちにはなりません。

 とはいえ、子供の域を出ないこの告白は、きっと何年かたったら、無効になっています。子供の告白を、まともに受け止める人なんて、いないよね。だから、嬉しいけど、冗談半分に受け止めるべきなんです。それなのに、皆ちょっと、騒ぎすぎだよ。ボクのように、もっと冷静に、大人の対応を見せないといけません。

 それなのに、依然としてそんなエーファちゃんに対し、嫉妬の眼差しを向ける人たちがいます。


「エーファちゃん。お姉さまは、私が好きで、私もお姉さまの事を愛しています。だから、エーファちゃん一人だけの物には、ならないんですよ。そこには、私も混ぜてもらう必要があります」

「な、なに?それは、本当か?お前、ユウリが好きなのか?」

「う……うん……」


 エーファちゃんに尋ねられ、ボクは正直に答えました。

 ユウリちゃんに対する、ボクの気持ちは隠せないし、隠す必要もない。ボクは、そう思っているからね。


「そうか……なら、ユウリも嫁にしてやる!」

「え」


 ユウリちゃんは、ボクのお嫁さんです。エーファちゃんのお嫁さんじゃないので、そこはハッキリ断ってもらわないと。


「はい!私も、エーファちゃんのお嫁さんになります!だから、私とも、ちゅーをしましょう。お姉さまとの物とは違い、もっとこう……色々とぐちゃぐちゃなちゅーを!大丈夫、私に全てをお任せください!エーファちゃんは、ただ口を開き、私を受け入れてくれればいいんですよ!」


 でも、ユウリちゃんは喜々として、その提案を受け入れました。分かってはいたけど、ちょっと寂しいです。

 その上で、唇を尖らせてエーファちゃんに迫り、キスを要求します。


「な、なんか、それは止めておく……。また、今度な」


 そんなユウリちゃんを気持ち悪がり、エーファちゃんはボクの背後に隠れて、ユウリちゃんを拒絶しました。エーファちゃんにすら、気持ち悪がられて避けられるユウリちゃんは、やっぱりさすがです。

 でも、色々とぐちゃぐちゃなちゅーか……ボクも、いつかユウリちゃんと、そんなキスをする事になるのかな。想像すると、顔がニヤけてしまいます。


「残念ですが、ネモ様は、私の物です!ですから、お二人の思い通りにはさせません!」

「いえ、それ以前に、お嬢様がそんな、お、お嫁さんを貰うなんて、そんなの看過できません!お嬢様は、私のです!私が育てて、私が守って来たんですから、私が貰う権利があるはずです!」


 レンさんと、ロステムさんも、どさくさに紛れて、それぞれの所有権を主張しています。ボクは、レンさんの物じゃないし、エーファちゃんも、誰かが貰う権利なんて、ありません。エーファちゃんの命を守って来たのは、確かにロステムさんだけど、そればかりはどうにもならないよ。ただ、エーファちゃんにとって、ロステムさんが大切な存在なのは確かで、家族同然の存在なんだと思う。だから、それで良いじゃない。


「それでは私は、ぎゅーちゃんを貰って、触手プレイを仕込みますかね。早速今日から始めましょうか」

「ぎゅ!?」

「……」


 メリファさんも、ぎゅーちゃんを抱いてそんな事を言って、おじさんが呆れ果てています。諦めないでください。その人を止められるのは、おじさんだけなんだから。

 一方で、危機感を抱いたぎゅーちゃんは、慌ててメリファさんの腕から逃れて、ロガフィさんにおぶさっている、イリスの頭の上へと着地しました。

 ぎゅーちゃんは、色々な意味で、置いていくわけにはいきません。ぎゅーちゃんがいないと、馬車が引けなくなるからね。足腰が弱い人が混ざっているボク達にとって、それは困ります。

 エーファちゃんの告白は、こんな感じで、先程よりも落ち着いて来た今もまだ、皆に影響を及ぼしています。子供の告白で、皆慌てすぎだよ。そう思いながら、腕に抱き着いているエーファちゃんの頭を撫でると、エーファちゃんは嬉しそうに笑いかけてくれました。


「……おはようございます」


 そこへ訪れた人物が、覇気のない声で、挨拶をしてきました。まだ、日も昇り切っていない、薄暗い時間に訪れたのは、リツさんです。リツさんと、そのリツさんの腕に手を絡ませている、アルテラさんがやってきました。そういえば、お見送りしてくれると言っていたっけ。

 でも、リツさんの様子が少しおかしい。目の下にはクマができているし、声にも明らかに元気がありません。


「おはよう、皆!いい朝だな!」


 一方でアルテラさんは、元気一杯に、挨拶をしてきました。まるで、懸念していた事が、全て片付いてスッキリしたかのような、そんな元気さを見せています。


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