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再確認


 身体が、揺れています。揺さぶられているのだと気づいたのは、目を開いて、その人物の顔を確認してからです。


「おはようございます。お姉さま」


 そこにいたユウリちゃんが、ニコリと笑いかけていました。


「……おはよう」


 まだ寝ぼけながら、ボクも笑顔でユウリちゃんに返します。

 窓へ目を向けると、外は薄暗い。まだ、日が昇り切っていないみたいで、そんな時間に起こされたことを、不思議に思います。


「ふあ……」

「あんっ」


 あくびをして、溢れた涙を拭いながら起き上がったボクは、ふと、手に柔らかい感触を感じました。なんだろう。凄く、柔らかくて、心地が良い。手を握ったり、開いたりして、その手の感触の正体を調べるけど、分かりません。

 確かめようと、目を向けようとしたけど、そんなボクの顔を、ユウリちゃんが両手で挟み込み、無理矢理ユウリちゃんの方を向かされて、固定されました。


「よく、眠れましたか?」

「うん……眠れた、よ……」

「んっ……あ……」


 ユウリちゃんに尋ねられて、答えながらも、手の感触を確かめます。変幻自在に形を変える、大きな物だ。手を離せば元の形に戻り、でも柔らかくて、不思議です。手に収まりきらないそれは、程よい弾力でボクの手を跳ね返してきて、いつまでもこうして揉んでいたいと思うような、そんな魅力を秘めています。


「朝早く、すみません。今日は、早く出発するとの事で、早めに起こしに来ました。支度して、旅立つ準備をしましょうか」


 ……そうだ。昨日出発できなかった分、今日は早めに村を出る事にしていたんだった。寝ぼけて忘れていたけど、だからこんなに朝早く起こしに来たんだね。納得です。


「わ、分かったけど……どうして、ボクの顔を掴んでるの?」

「私の愛するお姉さまの寝起きの顔が、凄く可愛くて素敵だからですよ。寝顔も、相変わらず可愛くて素敵でした」

「え、えへへ……」


 ボクの視線を、ユウリちゃんの顔に固定され、そんな状態でユウリちゃんに褒められて、ボクは照れます。頬に触れられた、ユウリちゃんの手の暖かさも、照れた理由に含まれています

 。でも、寝顔でいうならユウリちゃんも可愛い。イリスだって可愛いし、ディゼルトやレンさん……そうだ。レンさん。ボクは昨夜、レンさんと同じベッドで眠りについた。そして現在、レンさんはボクの隣で眠っているはず。

 じゃあ、この手の感触は、一体なんなのだろう。


「んぁ……や、ん……」


 改めてそれを揉むと、色っぽい声が聞こえて来ました。それは、レンさんの声で間違いない。

 ボクは、そっとその手を離しました。それで、なかった事になる訳ではないけど、黙って手を離して、なかった事にしようとしたんです。


「もう、満足ですか?」

「……」


 ユウリちゃんはそう言って、ボクの顔から手を離しました。

 顔を解放されたボクは、恐る恐る、その手を置いていた場所……ボクが眠っていた場所の、隣へと目を向けます。


「はぁ……はぁ……」


 そこには、仰向けで、胸を上下させるほどに息を荒くした、レンさんがいました。その目は、僅かに開かれていて、ボクを見据えています。目の端には涙を浮かべていて、頬は赤く染まっている。胸を隠していたワンピースは、肩ひもがずれる程に乱れていて、ピンク色の下着が姿を現しています。


「ね、ネモ様……前より、ちょっと大胆で、力強い……」


 起きているレンさんが、息を荒くして、ボクに向かって言ってきました。

 前とは、ボクが寝ぼけていた時にレンさんにしてしまった、件の事です。ボクは全く記憶がないけど、その時もボクはレンさんの胸を揉んでしまい、レンさんは恥ずかしがって、しばらくボクを避けるようになってしまったんだよね。

 普段は変態っぽい言動と行動をするレンさんだけど、いざそういう事が起きると、初々しい反応を見せて、可愛いなと思ったのはついこの間の事です。


「どうでしたか、レンさんのおっぱいの感触は。凄く柔らかくて、気持ちよかったですよね?レンさんも、お姉さまにおっぱいを揉まれて、気持ちよくなってしまったようですよ?ほら、こんなに息を荒くして、お姉さまを誘っています」


 ユウリちゃんは、そう言いながらボクに抱き着いて、レンさんの胸を揉んでいたボクの手に、手を重ねて来ました。更に、耳元で囁くその言葉は色っぽくて、ボクの劣情を囃し立てて来ます。

 目の前には、恥ずかし気に身をよじる、レンさん。服を乱し、ボクを誘っているとユウリちゃんは言うけど、その通りだと思う。


「ご、ごめんね、レンさん……!ボクはまた、寝ぼけてレンさんの胸を……」

「い、いえ。ネモ様が寝ぼけていたのは分かっていましたし、それに……激しくて、素敵でした。きゃっ」


 前とは違い、レンさんは恥ずかしげもなくそう言ってきて、こちらが恥ずかしくなってきました。どういう訳か、今回はあまり、恥ずかしくないようです。前みたいに、避けられるようになるのかなと思ったけど、そんな様子はありません。


「……レンさん。お姉さまと、何かありましたか?」


 ユウリちゃんがふと、そう尋ねました。前とは違うリアクションをレンさんが取ったことに、ユウリちゃんも違和感を覚えたようです。


「はい。昨夜は、やっぱり私はネモ様が好きなのだと再確認させていただきました」

「そう、ですか。何があったのかは分かりませんが、行為に及ぶときは、私も混ぜてくださいね。絶対に、です。さもなければ、私自分を抑えられなくなってしまうと思います。昨夜の、お風呂みたいに。ちなみに隠そうとしても、無駄です。状況や匂いで、一瞬で分かりますから」


 ユウリちゃんは、ボクの耳元でそう言って、最後に舌なめずりする音を聞かせてから、離れました。

 レンさんとボクの関係を、ユウリちゃんは認めつつも、抜け駆けされる事だけは、極端に嫌っている。ボクがレンさんにキスされた時は、大騒ぎだったからね。それが、それ以上だったらと考えると、本当に恐ろしい。


「とりあえず今日は、そういうのはなかったようなので、安心です。はい、お姉さまもレンさんも、起きて着替えてください。今日は朝一番で出かけると、言ったじゃないですか」

「そ、そうですね。今、起きますね。ネモ様のおかげで、凄く良い寝ざめになりました!」


 そう言って、乱れた服を整えながら起きるレンさんは、凄く良い笑顔でした。


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