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ホラー


 イリスに抱き着いたのは、ロガフィさんでした。余程、イリスが心配だったんだと思う。イリスの姿を見て、思わず抱き着いてしまったのだ。

 そんなロガフィさんの格好なんだけど、ビキニの水着姿です。白色の、ロガフィさんの体系に対して少しだけ小さ目のそれは、ロガフィさんの身体に食い込み気味です。あと、面積がちょっと少ないです。胸は、ボクと同じであまりないからいいとして、お尻なんて形が見えてしまっているし、割れ目まで見えてしまっています。


「イリス……よかった」


 そんなロガフィさんの格好はさておき、ロガフィさんはイリスに抱き着いて、本当に安堵した表情を見せています。

 イリスの前で、膝をついて背丈を合わせ、イリスの肩に顎を乗せて、頬ずりをするようにしています。


「あ、暑っ苦しいですよ。離れなさい」

「……」


 ロガフィさんはイリスに言われても、抱き着くのをやめません。困ったイリスは、結局抱き着くロガフィさんを受け入れて、ため息を吐きました。


「イリス……大丈夫だったんですね」


 ロガフィさんと一緒に、イリスを探しに行っていたユウリちゃんも、ロガフィさんからやや遅れて、駆け付けて来ました。

 ユウリちゃんも、なんともないイリスを見て、安堵の表情を見せます。


「し、心配をかけたようですね。ですが、この通り、なんともありません」

「……」

「ゆ、ユウリちゃん!?」


 突然、ユウリちゃんが膝を折って、その場に倒れてしまいそうになるのを、ボクは抱きしめて止めました。


「ご、ごめんなさい、お姉さま……ちょっと、安心して力が抜けてしまって……」


 ユウリちゃんの身体には、本当に力が入っていない。ボクが手を離したら、確実に倒れてしまうだろう。


「実は、幸運の加護で、すぐに見つかると思っていたんですけど、見つからないので、もしかしたら不運が、お姉さまではなくイリスに降りかかったのではないかと、心配していたんです」

「そ、そうだったんだ……」


 今の所、ボク以外に、ユウリちゃんの幸運の加護によって、不幸が降りかかった事はない。でもそれは、ユウリちゃんにとって大切な、ボク以外の誰かにも、降りかかる可能性はある。

 ボクは今まで、考えもしなかった事だけど、ユウリちゃんはそれだけ、自分の力によって、大切な人が傷つく事を、恐れているんだ。


「だ、大丈夫だよ。ボクが、なんとかするから。絶対に、ユウリちゃんも……ユウリちゃんにとって、大切な人達も、ボクが守るから。だから、元気を出して」

「お姉さま……できれば、今夜あたり裸で一緒に眠ってくれたら、元気が出るかもしれませ──」

「どさくさに紛れて、何を口走っているんですか?」

「ひっ!?」


 そこへ、いつの間にかいたレンさんが、ユウリちゃんの肩に手を置いて、見開かれた目で、睨みつけていました。そんな目で、優し気に微笑んでいるのが、怖さを倍増させています。

 まるで、ホラー映画のワンシーンのような演出に、ユウリちゃんではなくボクが驚かされました。


「戻っていたんですか……」

「ええ、ユウリさんを、ネモ様が抱くのをみて、急いで駆け付けました」

「れ、レンさん。急に駆けだして、どうしたんだ……あ」


 そこへ、ディゼルトもやってきて、アンリちゃん以外の全員が、揃いました。

 ディゼルトは、抱き合うボクとユウリちゃんを見て、ちょっと顔を赤くして、恥ずかしそうに目を逸らしました。

 逸らした先にいたのは、ロガフィさんに抱かれている、イリスです。そちらを見て、また顔を赤くして、目を逸らします。


「い、イリスさん。無事に、見つかったんだな。よ、良かった」

「そうみたいですねー。良かったですねー」

「れ、レンさん落ち着いて……目が、怖いです。せっかくの美人が、台無しだ」


 ディゼルトの、言う通りです。レンさんには、優しい笑顔が似合うので、できればそんな目ではなく、普通に笑っていてほしい。


「と、ところで、こちらの方は、どちら様だ?」


 ディゼルトは、一旦話を誤魔化そうと、そう話を振りました。


「め、メリファさんだよ。エーファちゃんの、お母さんの」


 恐らくは、メリファさんを指しているんだと思い、ボクがそう教えてあげました。ボクが紹介してあげると、メリファさんは、ディゼルトやレンさんに向かい、軽く会釈をして、挨拶をします。


「そうか。エーファさんの、お母さん……若くて、キレイな人だ」

「若くてキレイだなんて、そんな。貴女の方こそ、可愛らしい耳と、尻尾ですね」

「そ……それで、そちらは?」


 ディゼルトが、耳と尻尾をメリファさんに褒められて、分かりやすく照れつつも、そう言って目を向けたのは、ロステムさんだ。ロステムさんとは、もう会っているはずなのに、何を言っているんだろう。

 なんていう考えは、すぐに飛びました。ロステムさんは、変身をしていない。今のロステムさんは、サキュバス本来の、グラマスな女性の姿であり、面影は残しつつも、若返り、全くの別人の姿へと成り代わっている。忘れていました。


「お忘れですか?私です。ロステムです……て、ああ!変身してないんでした!」

「ああ。正体が、サキュバスだったという、あのロステムさんか。退治はしなくて、いいのか?」


 ロステムさんも、変身していない事を、忘れていたようだ。でも、ディゼルトをちょっとだけバカにしたように、もう一度自己紹介してから、気づきました。

 一方ディゼルトは、そう言って懐の短剣に手をかけるけど、エーファちゃんがそんなロステムさんを庇うように、立ちはだかりました。


「ディゼルト。もういいんだ。ロステムさんは良い人で、エーファちゃんの命だから、何もしないで」

「……よく分からないが、分かった」


 ディゼルトは、ボクの訴えに頷いて、素直に構えを解いてくれます。

 エーファちゃんも、武器を持つ相手が、構えを解いてくれたことに、安心して大きく息を吐きました。ロステムさんは、そんなエーファちゃんの勇敢な行動を見て、ちょっと嬉しそう。


「そういえば、メリファさんはどうして、ロステムさんの姿を見て、ロステムさんだと分かったのだ?」


 そこで、そんな疑問を口にしたのは、アルテラさんです。言われてみれば、そうでした。


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