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変質者、現る


「先ほども言いましたが、余程の事がなければ、この段階で入団を拒否する事はありません。ですが、イリスちゃんのステータスは、その余程の事に該当します。いくら魔法適正が高くても、コレでは、冒険者として最低限のラインにも達しません。でも、あくまで、冒険者に向かないだけです。魔法適正Sと言う数値は、類まれなる魔法の才能を持つ証。冒険者ではなく、魔法専門の職業を探してみてはいかがでしょうか」

「私が、不合格……だと?」


 イリスは、ショックのあまり、その場に突っ伏してしまった。Gというのは、それだけ、ある意味凄い数値みたい。まぁイリスの見た目年齢を考えると、そんな感じのステータスでも仕方ないとは思うんだけどね。


「ちなみに、イリスくらいの年齢で、冒険者になる方はいるんですか?」

「珍しいけど、いますよ。ですが、やはり能力は低めですので、大半は町の中の簡単な仕事を与えられています。迷子のペット探しとか、人探しとか、お掃除のお手伝いとか。それでも、お小遣い程度は稼げるので、少しでも稼ぎたい親が、働かせていると言ったケースが多いですね」

「イリスには、その簡単な仕事をこなす実力も、ないと」

「はい」

「ごはっ!?」


 笑顔で答えたイオさんに、イリスが吐いた。


「わ、私は、子供でもこなせるような仕事もできない……あ、でもよく考えたら、掃除もできないし、人間の顔なんてよく見分けがつかない……できませんね」


 うん。ボクも、それはイリスには無理だと思う。


「と、言う訳で。合格したお二人は、そのステータスの紙に名前を書いて、正式に契約と言う事になります。そこで初めて、私達キャロットファミリーの仲間入りです」

「……」


 イオさんが、ペンを渡してくるけど、非常に書き辛い。ユウリちゃんも、ボクが書くのに戸惑っているのを見て、名前を書かない。


「どうしよう、ユウリちゃん」

「どうするもなにも、仕方ないです。お姉さまには、お金が必要なんですから」

「そ、それはそうだけど、ボク達は離れると危ないから……」

「連れて行けばいいんですよ。子連れみたいになってしまいますが、イリスを傍に置いておくかどうかは、私達の勝手です」

「そっか。それもそうだね」


 解決したので、ボクは紙に名前を書きました。それに続いて、ユウリちゃんも名前を書く。


「ようこそ、キャロットファミリーへ!歓迎します!」


 こうしてボクとユウリちゃんは、キャロットファミリーの一員になりました。


「失礼する」


 そこへ、閉められていた部屋の扉を開いて、女の人が姿を現した。

 鎧姿の、女の人。鎧といっても、西洋風ではなく、和風の鎧。フル装備ではなく、胸当てに、篭手と脛当てと、最低限だけつけていると言った感じ。顔は、鋭い眼光に、ポニーテールが特徴的だ。ポニーテールを結んでいるカラフルな紐は、組紐かな。赤色と、オレンジや緑の混ざり合った、キレイな紐だ。結ぶための物にしては長くて、腰元まで垂れ下がっている。その腰には、刀が差さっている。鞘は、朱色に金色の装飾の施された、派手な鞘。それは、レイさんが持っていた剣と同じく、伝説級の武器だった。


「メイヤ様!」

「先ほど凄まじい力を感じて、気になって来てみたのだ。この3名が、ラメダの手紙の3名だな」

「はい。ネモさんと、ユウリさんと、イリスちゃんです」


 ボクは、彼女のステータス画面を開いてみる。


 名前:風早 冥夜

 Lv :77

 職業:ギルドマスター

 種族:竜人


 これを見て、いくつか気になる点があった。まず、名前がユウリちゃんと同じく、ボクがひきこもっていたときの世界の物だと言う事。それから、種族が竜人とある。竜人というと、このゲームの中では確か、かなりレアな存在のはず。ざっくり言えば、絶滅危惧種。そんな珍しい竜人族は、種を残すために、あんな事や、こんな事をされながら生きているという、そんなイベントもあったっけかな。


「初めまして。私は、キャロットファミリーのギルドマスター。メイヤ・カザハヤ。よろしく頼む」

「ユウリです。よろしくお願いします」

「ね、ネモ、です」


 その話し方は、まるで武士のよう。カッコイイ女の人だなと、感じた。


「……そちらで突っ伏しているエルフの子供は、どうしたのだ」


 未だにショックで立ち直れていないイリスを、メイヤさんが気にかけている。


「イリスちゃんは、ステータスが低すぎて、うちでは雇えないと……」

「……なるほど。ステータスは……魔法適正以外Gか。酷いな。確かに、これでは、冒険者として雇った所で、役にはたたん。諦めろ」

「……役に、たたないだぁ……?人間風情が、この私を審査して、見下して……あざ笑うなど、あってたまるかー!」


 あ、まずい。イリスが、暴走モードに突入しようとしている。そう思ったときには、イリスがメイヤさんに飛び掛っていた。


「へ」


 一瞬の出来事だった。イリスの背後にメイヤさんが回りこむと、イリスを背後から包み込むように抱きしめて、その行動を止めさせた。


「ふ。全く、困ったじゃじゃ馬さんだな」


 更にはそう言いながら、抱きしめたイリスの頬に、メイヤさんが背後からキスをした。

 突然の事に、呆然とするボクとイリスとイオさん。ユウリちゃんは、それを見てとても喜んでいるようだ。黄色い歓声あげて、興奮している。


「こんな可愛いくて私の琴線に触れる娘は、久しぶりだ!持って帰っていいかな!?持って帰って、くんかくんかしたり、ぺろぺろしたり、してもいいかな!?」

「ひ、ひいいぃぃ!助けて、コイツ変質者よ!」


 必死の形相で、抵抗するイリスだけど、メイヤさんの拘束からは脱出できないみたい。今にも、キスの第二波が繰り出されそう。

 一方でボクはそれを見て、ユウリちゃんに続く、新たな変態さんの登場に、たった今入ったばかりのギルドを、抜けたくなりました。


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