洞窟の中の草原
洞窟を進むボク達は、アルテラさんの指先から発せられる光を頼りに、辺りをよく見ながら進むけど、人の気配はありません。
「ロステムー!いるなら、出てこーい!」
「ひゃ!?」
ボクは、突然の大声に驚き、悲鳴を漏らしました。
声を発したのは、エーファちゃんです。その声は、洞窟の壁を反芻して響き、より大きな物に聞こえました。コレなら、もしかしたら洞窟のはるか先にいる、ロステムさんにも届くかもしれない。
「……」
だけど、返事はない。
本当に、ロステムさんはここにいるのだろうか。そういう疑問が、浮かび上がってきました。
ボクとアルテラさんの視線は、自然とエーファちゃんに向かい、どういう事かと言う目で見てしまいますた。
「いや、オレはいるかもしれないって言ったんだぞ!?そもそも、ロステムについて来た時も、何もなかった!だから、まだ分かんねぇよ!」
そうは言っても、あんな大声で叫んで、返事がないのは、いないという可能性の方が高いんじゃないかな。
念のために、再び開いたマップを確かめてみるけど、そこである異変に気付きました。
「うん?」
「どうしたんだ、ネモさん」
「あそこ……」
ボクが指さした方向を、アルテラさんが照らして見せてくれました。そこにあるのは、ただの岩の壁です。だけど、マップと見比べてみると、その先には道が続いているはず。かつて、禁断の森で迷い込んだ洞窟で、レンさん達が隠れていた時と、同じような状態になっています。
「何もないようだが……」
「も、もしかしたら」
ボクは、そう思ってその壁を触ってみるけど、壁は本物だ。だけど、魔法の気配を、確かに感じる。
「えい」
ちょっと力を入れて、壁を押し込んでみた、その時でした。壁が、脆くも崩れ、音もなく姿を消しました。
姿を消したその壁の下にあったのは、思った通り、紋章魔法の、紋章だ。かつてのレンさんと、同じ方法で、別の道を隠していたんだ。
「コレは……。紋章魔法によって、壁が作られていたのか」
「は、はい。もしかしたら、この先にイリスが……」
「そうだな。しかし、凄いたな。よく、こんな物に気づけたものだ。君には、感心させられる事ばかりだよ。私の嫁にしたいくらいだ」
「よ、嫁!?」
アルテラさんの、いきなりの発言に、ボクは驚きました。
それだと、アルテラさんが、ボクの夫という事になるのかな?でも、女の子同士だから、2人ともお嫁さん?どちらがウェディングドレスを着るんだろう。2人とも?それとも、アルテラさんは、タキシードなのかな。よく似合いそうだけど、ボクとしてはウェディングドレスを着てほしい。
「冗談だ。あまり、本気で考えられると、少し困る」
「そ、そそ、そうですよね!」
ユウリちゃんや、レンさんの影響のせいで、この手の冗談は、本気にしか感じられなくなっているボクがいます。ただでさえ、元男だから、そういう事を言われるとときめいてしまうんだよね。
「変な事言ってないで、早く行ってみようぜ。奥に、ロステムがいるかもしれないんだ」
先導しようとするエーファちゃんだけど、それ以上先に行ったら、アルテラさんの灯りから、漏れてしまう。だから、ギリギリの所に立って、ボク達を呼んできます。
「う、うん」
この先は、あまり広くはない。すぐに行き止まりになっているけど、先にあるのは広めの空間だ。そこに何が待ち受けているのかまでは、マップでは確認できない。だから、一応警戒する必要があるだろう。
一番先頭に立つのは、ボクが良い。エーファちゃんを追い抜いて、ボクが先頭に立ちます。すると、後ろについてくるエーファちゃんが、ボクの服を握ってくるのを感じました。
「……」
振り返ると、エーファちゃんはやや不安げな表情で、ボクについてきています。ボクの服を掴んだのは、どうやら反射的にしてしまった事みたい。本人も意識している様子はなく、そのまま歩いていきます。
この年の女の子からしたら、こんな真っ暗な洞窟の探検で、不安を感じるなと言う方が、無理がある。夜中に、ロステムさんについて、ここにやってきたと言っていたけど、それはとても危険で、勇気のいる行動だ。でも、そうまでしてまで、ロステムさんの事を確かめたかったんだね。
「──うぅ、ううぅ、う、う」
少しだけ、奥へと進んだ時でした。何やら、呻き声が、進行方向から聞こえて来ました。それを耳にして、ボク達3人は目を合わせ、頷き合います。
それからまた、少しだけ進むと、辺りはアルテラさんの指から発せられる光ではなく、自然と明るい光が、照らしている事に気づきます。そして、マップにあった開けた場所に、到達した時でした。ボクは、目の前に広がった光景に、驚きます。
「コレは……」
そこにあったのは、ちょっとした草原です。お花畑に、小さな湖もあって、煌々とした光が天井から発生して、太陽の暖かさすら感じられます。更に、湖に隣接する、小さな木のお家。家というより、小屋みたいな感じだけど、煙突がついていて、ステキなお家だ。
到底、洞窟の中とは思えない。そんな空間が、そこには広がっていました。




