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診察


 エーファちゃんは、ロステムさんの正体を知っていた。そんな事実は後回しで、とにかくボク達は、イリスを追いかけて、助ける必要があります。

 イリスはボク達と同じで、この世界では凌辱される運命にある。ボクの傍や、強くて守ってくれる人の傍にいれば安全かもしれないけど、そうでなかったら、あんなか弱い幼女、一発で終わりです。それこそ、赤子の手を捻るような物です。

 どうでもいいけど、赤子の手を捻るって、凄い言葉だね……。


「お姉さま、どうしましょう……もし、イリスの身に何かあったら……」


 ユウリちゃんは、普段イリスに厳しいけど、イリスの事を大切に思っている。だから、とても心配そうにしていて、泣いてしまいそうだ。ボクだって、同じだ。イリスのいない生活なんて、考えられない。


「イリスに、許してもらっていない……」


 ロガフィさんは、しゅんとした様子で、そう呟きました。

 先ほど、お茶をかけてしまった一件の事だね。確かに、イリスは凄く怒っていて、ロガフィさんは謝罪してたけど、仲直りできたかどうかは、分からない。

 もう二度と会えなくなってしまうかもと思うと、暗い空気が流れます。


「今は嫌な事を考えるより先に、イリスさんを追いかけるべきです!」


 レンさんは、元気のなくなったロガフィさんの肩に、勢いよく手を置きながら、そう言いました。その言葉に、どんよりと暗くなっていた空気が、振り払われます。


「このままじっとしていたら、それこそ手遅れです!手遅れになる前に、追いかけて探しましょう!」

「う、うん!」


 ボクも、そんなレンさんに発破をかけられて、大きな声で、返事をします。

 まだ、何も起きていない。見失っただけで、何を暗くなっているんだ。


「空を飛んで行ったのなら、私の鼻では役にたたないな。方角を定めて、地上を手分けして探そう」

「そうですね。では、ディゼルトさんは、私と。ロガフィさんは、ユウリさんと。ネモ様は、一人でお願いしていいでしょうか」

「う、うん。任せて!ロステムさんは、あっちの方に飛んで行ったよ」

「分かりました」

「……」

「ひゃっ」


 ボクの指さした方向を見て、ロガフィさんは、すぐに動きました。ユウリちゃんをお姫様抱っこで抱えると、ユウリちゃんが突然の事に可愛い悲鳴をもらし、そのまま窓から飛び出してしまいました。そのまま地面に落下していくけど、だけど軽やかに着地して、そのまま走って行ってしまいます。

 そんなロガフィさんの服装は、タオル1枚です。タオル1枚で、爆走です。


「ロガフィさん、服!服を着てからにしてください!」


 窓から叫ぶレンさんだけど、ロガフィさんの耳には届きませんでした。そのまま走り去ってしまい、あっという間に見えなくなってしまいます。

 凄く心配になるけど、だけどユウリちゃんが一緒だから、そちらは任せておこう。


「話は、聞かせてもらったぞ」


 そこへ、廊下で話を聞いていたアルテラさんが、部屋に入ってきました。それから、ゆったりと歩いて、エーファちゃんの前に立ちます。


「な、なんだよ。やんのか?」

「……」


 アルテラさんはふいに、自分の目を覆う髪の毛をかき分けて、その不思議な目を露にしてから、じっくりとエーファちゃんを観察しだします。

 青く輝く不思議な瞳が、エーファちゃんを映し、エーファちゃんはちょっと戸惑っています。


「ふむ。確かに、何かおかしいな。呪い……いや、魅了……違うな」

「……」


 エーファちゃんを見据えるアルテラさんは、エーファちゃんの、何かを視ているようだ。その目と言い、何か謎のある人物に気になったボクは、失礼ながら、ステータスを覗かせてもらう事にしました。


 名前:アルテラ

 Lv :10

 職業:医者

 種族:ハーフフェアリー


 ハーフフェアリー。フェアリー……妖精?つまり、アルテラさんの両親のどちらかが、妖精という事になる。


「何してんだよ、人の事をじっと見て!お前も、兄貴の知り合いみたいに、オレが可愛いとか言い出すんじゃねぇだろうな!」

「いや、すまない。君の身体の事を聞いて、ちょっとした診察をな……」

「な、何をしてたか知らないけど、勝手な事をするんじゃねぇ!」


 エーファちゃんは、そう言って怒ってしまいました。

 その様子に、エーファちゃんから離れて、目を再び髪を隠したアルテラさんは、ボクの後ろに立ちます。そして、耳打ちをしてきました。


「彼女は、病気だ。それも、命に係わる。本来であれば、既に死んでいてもおかしくはない。それを、何らかの方法で、命をつなぎ止められている」


 耳がくすぐったかったけど、我慢して、聞きました。そして、そんな事を教えてくれたアルテラさんに、ボクは驚きます。

 エーファちゃんは、イリス曰く、ロステムさんが持ち去った石によって、命を脅かされているはず……。だから、病弱なのかなと、勝手に予想して、そう思っていた。でも、アルテラさんが言ったことが本当なら、石は関係なくて、何かの病気のせいで、病弱なのかな?病弱なのは元からで、でも石に命が脅かされていて、病弱で、何かがあって、無事で……よく分からなくなってきました。


「とにかく、私たちもイリスさんを探しに行きましょう!」

「う、うん……」


 アルテラさんの言った事も、気になる。エーファちゃんの体調の事も、気になる。だけど今は、イリスを追いかけないとね。

 イリスが、何よりも大事……だけど、気になる。


「私も行こう」

「オレも連れてけ」


 家を飛び出そうとするボク達に、アルテラさんと、エーファちゃんも、それぞれそう言いました。


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