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「す、凄い……魔法適正が、Sを示しています!イリスちゃんは、類まれなる魔法の素質があるようです!」

「ふふん」


 イリスは髪をかきあげて、得意げに鼻を鳴らした。

 イオさんの反応から察するに、それは凄い事のようだ。


「でも、他のステータスが全てGです!こんな酷いステータス、見たことがありません!酷い!酷すぎます!」


 イオさんの反応から察するに、こちらの方が凄い事のようだ。


「んなに!?どういう事ですか、それは!」


 イリスは、イオさんからステータスが浮かび上がった紙を取り上げて、目を通す。ボクとユウリちゃんも、その背後から覗き込んだ。

 そこには、よくあるRPGのステータスが書き込まれていた。


 【体力】  :G

 【筋力】  :G

 【器用さ】 :G

 【素早さ】 :G

 【魔法適正】:S

 【マナ容量】:G


 簡単なステータスだけど、いかにもイリスっぽいステータスだ。しかし、マナ容量って何だろう。イリスのステータスを開くと、一応ボクの目にも、体力の表示と、その下にマナ容量という項目がある。体力は100を示していて、マナ容量は5を示している。


「ふざっけるな!何ですか、このステータスは!やり直しを要求します!」

「ま、まぁまぁ。このステータスは、あくまでその人の、現在の状況と、適正を見るものですので、訓練次第では上がっていく物ですから。参考までにどうぞ。……でも、Gって割と絶望的ですけど」

「この、マナ容量と言うのはなんですか?」


 最後にボソボソと呟いたイオさんの声に重ねて、ユウリちゃんが尋ねた。どうやら、イリスの耳には届いていなかったようで、特に突っかかることはない。だけど、絶望的とハッキリ言ったよ。ボクには、聞こえてしまった。


「それは、魔法を使うために消費できる、マナの値数を表しています。魔法を使うためには、それに見合った、体内に累積されたマナを消費する必要があります。コレがないと、魔法が使用できない訳なんですが、マナ容量Gということは、カスみたいなマナしかないという事です」

「つまりイリスは、魔法適正がSでありながら、ろくな魔法が使えないカスと言う事ですか」

「そうなります」

「カス……?私が?カス?女神である、この私が……?」


 言いたい放題の、ユウリちゃんとイオさん。カスと言われたイリスは、真っ白になって今にも消えてしまいそう。

 ボクのステータス画面じゃ、能力までは見る事ができない。でも、レベルは見る事ができる。コレは多分、その人の強さの指数だと思うけど、イリスの場合はそのレベルが1。何かしらをして、レベルを上げていけば、強くなるんじゃないかな。たぶん。


「次は、私がしますね」

「はい」

「では、指輪でお願いします」


 ユウリちゃんが選んだのは、指輪だ。イオさんはそれを手に取り、先ほどと同じ言葉を言ってから、光り輝くその指輪を、ユウリちゃんに手渡した。


「……本庄 悠里」


 ユウリちゃんがそう言って、全身が光り、その光が指輪に収束。それから、イオさんが取り出した紙の上に、指輪を置く。


「どれどれ、ユウリさんは……えぇ!?」


 浮かび上がってきた文字を見て、イオさんが再び、驚いて声を上げた。


「な、何か問題でも……?まさか、イリスのようにカスみたいなステータスだったとか!?」

「いえ、逆です!みてみてください!」

「カス……」


 ショックを受けているイリスをよそに、イオさんが手渡してきた紙に、ボクとユウリちゃんは目を通した。


 【体力】  :C

 【筋力】  :E

 【器用さ】 :C

 【素早さ】 :D

 【魔法適正】:F

 【マナ容量】:F


 筋力が若干低いのと、魔法適正が低いのを覗けば、他はCとD。イリスと同じレベル1のユウリちゃんにしては、高いステータスと言えるのかな?


「魔法に適正はないようですが、コレは素晴らしいステータスです!」

「そ、そうなんですか?でも私、そんなに凄くないと思うんですけど……」

「いえいえ。このステータスは、嘘をつきません。ユウリさんは、冒険者に向いているようです」


 ベタ褒めのイオさんに、ユウリちゃんも嬉しそう。

 一方イリスは、先ほどと違う事を言うイオさんを、睨みつけている。ついでに、ユウリちゃんには嫉妬の眼差しを送っている。


「最後に、貴女の番ですね。どれにしますか?」

「……こ、コレで」


 ボクが選んだのは、ネックレスタイプのエンブレム。イオさんはそれを手に、言葉を唱えて光り輝いてから、それをボクに渡してきた。


「ネモ」


 ボクがそう呟いた瞬間、大きな光と風が、巻き起こった。


「お姉さま!?」


 前の2人とは、光と風の規模が、全く違う。しかも、光の色は赤く、燃えるような色で、激しく光り輝いた後に、ネックレスのエンブレムへと包み込まれていく。吸い込まれていく光の量が、これまた違う。ユウリちゃんとイリスの光は、一瞬で収まったのに、この光は、吸い込まれきるのに数十秒かかった。

 光が吸い込まれ終わると、風も止む。ようやく収まった光と風に、その中心にいたボクは、ホッと胸を撫で下ろした。


「あ……ご、ごめんなさい、ちょっと散らかっちゃって……」


 辺りは、不本意ながらボクが起こした風のせいで、滅茶苦茶だ。紙や本は飛び散って、トレーニング器具も風によって位置がずれている。

 そんな風の中、イオさんは、ユウリちゃんとイリスを庇うように、囲い込んでくれていた。


「い、いえ、いいんです。2人とも、怪我はないですね?」

「はい。ありがとうございます」

「……」


 ユウリちゃんがお礼を言うけど、イリスは何か考え事をしているかのように、呆然としていて何も言わなかった。


「では、こちらに」


 イオさんに促された紙の上に、ボクはネックレスを置く。


「権利者、イオが命ずる。この者の力を、我に示せ」


 イオさんの言葉に呼応して、紙に文字が浮かび上がった。


「コレは……」


 ボク達は、全員でそれを覗き込む。


 【体力】  :C

 【筋力】  :C

 【器用さ】 :C

 【素早さ】 :C

 【魔法適正】:C

 【マナ容量】:C


 オールC……。ボクもレベル1なんだけど、そう考えると凄い数値に思える。喜んでいいのかな、コレは。イオさんを見て、反応を伺う。


「素晴らしい数値なんですけど、何か違和感が……エンブレム登録で、あんな反応を示したのは初めてですし……うーん……まぁいいです。えっと……ネモさんと、ユウリさんは、合格!イリスちゃんは、不合格!」

「わーい」

「はぁ!?」


 喜ぶユウリちゃんと、素っ頓狂な声をあげるイリス。


「ぷっ。イリス、不合格だって」


 魔法以外、Gじゃ仕方ないよね。ボクは、最初自信たっぷりだったイリスを思い出して、笑ってしまった。


「ふざけるなぁ!」


 激昂するイリスの声が、響き渡りました。


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