何かいますよ
ロガフィさんと、ディゼルトはその場に残り、ボクとイリスとユウリちゃんの3人で、家の中を見させてもらう事になりました。あまり、大勢でうろついても迷惑だからね。レンさんとぎゅーちゃんも、ロガフィさん達と一緒に、お留守番です。
「ふん……やっぱり、臭いますね。この家には、何かいますよ。こっちです」
「イリス!」
先導するイリスは、迷うことなく廊下を進んでいき、ボク達もそれに続きます。勝手に進んでいって、入っちゃダメだと言われている部屋も、勢いで開いてしまいそうな勢いに、ちょっと心配になってしまいます。
「す、すみません、ロステムさん……」
「いえ。本当に、魔族がいるのなら、それは由々しき事ですので」
一緒に付いてきているロステムさんが、そんなイリスに怒らないか、ボクは心配です。でも、意外と話の分かる、良い人だな。最初は、いじわるでお節介で熱血で勉強ばかりを迫る、悪いお世話係を想像してしまったけど、そんな事はなさそうだ。
迷いなく進んでいくイリスは、石畳の床を走り、行きついた階段を上っていきました。
「イリス!あまり、離れないようにしてください!」
そんなイリスを、急いで追いかけるユウリちゃん。ボク達と差が出始めたのを危惧して、止めに入ってくれました。
「もう、すぐそこですよ!」
「あ、開けちゃダメですよ!ロステムさんを待って、開けていいのかを聞いてからです!」
先に階段を上った先で、2人がそんな会話をしています。ボクとロステムさんが、自分たちのペースで追いかけてその場に辿り着くと、ユウリちゃんがイリスを押さえて、階段を上った先にある、扉の前に立っていました。
「このお部屋は、見させていただいても、平気でしょうか」
「そちらは……エーファお嬢様のお部屋になりますね」
「エーファちゃんの……」
年頃の女の子のお部屋を、無許可で覗く訳にはいかない。本人はどこかに行ってしまったし、許可を得られない。どうしよう。
「構いません。入りましょう」
「そうですね。エーファちゃんは、いったいどんな下着を着けているのでしょう」
ボクの戸惑いを、無視するかのように、2人は入る気満々です。特に、ユウリちゃんの目的が危ないです。下手をしたら、下着泥棒を働くんじゃないか、そういう懸念ある。だから、余計に入っちゃダメだよ。
というか、そもそもロステムさんが、許可してくれる訳がないよ。
「どうぞ、お入りください」
「ええ!?」
あっけなくそう言い放ったロステムさんに、ボクは驚きました。今のユウリちゃんの発言を、聞いていましたか?この人は、エーファちゃんの下着を見る気満々ですよ。
「やったー。失礼しまーす」
喜ぶユウリちゃんが、許可を得て、遠慮なくその扉に手をかけました。そして、扉を開いて、エーファちゃんの部屋の中へと入っていきます。イリスもそれに続いて、入っていきました。
「い、いいんですか……?」
「はい。お嬢様のお部屋から、魔族の気配がするだなんて、凄く不気味な事ですから。入って、原因を探っていただきたいと思います」
そりゃそうかもしれないけど、でもエーファちゃんの許可もなしに、いいのかなぁ。
「うひょー、女の子の良い匂いが充満してます!エーファちゃん、しゅごく良い匂い!青い果実のような、成長盛りの女の子特有の匂い……最高です!下着は、どんなのをつけてるのかなー」
うん。絶対にダメだよ、コレ。部屋の中から漏れてくる声に、ボクは慌てて部屋に突撃しました。
確かに、ユウリちゃんの言う通り、部屋の中は女の子の良い匂いがしていました。凄く、良い匂いだと思います。予想外にも、そんな部屋の飾りは、女の子らしい物でした。ピンクを基調とした、レースや、ベッドの布団。更には、ぬいぐるみや、ふりふりのピンクのドレスなどが飾られていて、この部屋の主は、可愛い女の子なんだろうなと、連想させられます。
実際は、あの男らしい口調の、エーファちゃんが主なんだけどね。エーファちゃんは、こういうのが好きなんだ……ちょっとだけ、意外です。でも、女の子らしくて、良いなと思います。
「ぐへへへ」
そんな、可愛らしいエーファちゃんの部屋に、変態が1人、侵入しています。その変態は、タンスの取っ手に手をかけて、引き出しを開こうとしている所です。
「あいたっ」
ボクは、その変態の頭を、引き出しが開かれる前に、軽くチョップして止めました。更に、おかしな事をしないように、抱きしめて拘束しておきます。この子は、何をしでかすか分かったもんじゃないからね。それに、こうしておけば、おとなしくなるので可愛いものです。
「イリス。どう?何か、見つかった?」
「……」
ボクは、部屋の中を見渡していたイリスに、そう話しかけます。
ユウリちゃんを抱きしめたまま近づいて、その視線を追ってみるけど、その視線が、ベッドボードの上に置かれた、キレイな石を見て止まりました。




