敏感
次の日は、とても心地よい目覚めでした。良い匂いに包まれた上に、柔らかな感触を、体中に感じます。
ただ、凄く苦しいです。体中を締め付けられているようで、身動きが取れません。
ボクは、ゆっくりと目を開くと、天井が目に入ります。でも、空が見えません。いつもなら、天井の窓から、空を見て今日のお天気を判断して起きるのに、目に映ったのは木の天井。それも、見慣れない模様の木です。
ああ、そうか。ボク達は旅に出て、宿に泊まってたんだっけ。
「え……」
思い出したけど、ボクは自分が置かれている状況に気づいて、思わず声をあげました。
まず、右に目を向けると、そこには大きなおっぱいがあります。胸の谷間を強調し、柔らかそうなそのおっぱいは、レンさんの物です。反対側を見ると、こちらは控えめながら、形の良いおっぱいが出迎えてくれました。それは、ボクの物よりは大きく、こちらも魅力的なおっぱいで、これはユウリちゃんの物です。2人はボクの頭を抱き寄せて、挟んでいます。
「んぅ」
身をよじろうとしたら、お腹の辺りに違和感を感じました。そこにも誰かがいるようで、目を向けると、ロガフィさんがボクの身体に抱き着いて覆いかぶさり、胸を枕にして眠っていました。角が当たらないように、ロガフィさんはうつ伏せです。うつ伏せで、ボクの胸に顔を埋めています。でも、そんなに胸は大きくないので、埋めるっていう程でもないんだけどね。
でも、心地よさそうに眠るロガフィさんは、まるで天使のような寝顔で、起こす気にはなりません。実際は、魔王だけど。
更に、仰向けで眠るボクの下に、誰かがいます。下から伝わる体温は暖かく、お腹は少し硬いけど、でも眠り心地は良いです。コレは……ディゼルト?ディゼルトが、ボクの布団代わりになって、ボクは上半身をディゼルトに預け、お腹に後頭部を乗せているようです。
なんだろう、この状況は。眠る前は確か……そう、ディゼルトと一緒に寝て、レンさんと、ユウリちゃんとロガフィさんとは、別々で寝たはずです。それが、何故かこうなっている。
「……」
とりあえず、ボクは胸にのっているロガフィさんの頭を、なでなでします。
「はふ……」
その寝顔、その唇が、心地よさそうに震え、そして甘えるように、身をよじりました。
ボクのお家のベッドとは違い、大きなサイズのベッドだから、これだけ大勢で一緒に眠っていても、まだ少しだけ余裕があります。ボク達が、身を寄せ合っているからと言うのもあるけど、それにしても、こんな大きなベッド、初めてです。
「え、えと……」
レンさんの、おっぱいの向こうに見える、窓へと目を向けます。外からは明るい光が差し込んでいて、今が朝だという事が分かる。
「み、皆、起きて……」
ボクは、遠慮がちに皆に声をかけたけど、でも誰も反応してくれません。声が、小さすぎたのかもしれない。でも、皆心地よさそうな寝息をたてているから、あまり大きな声で起こすのも……そ、それに、この状況が幸せすぎて、終わらせてしまうのが惜しいと言う気持ちもあって、ボクは悩まされてしまいます。
「……」
そういえば、ロガフィさんの角って、どんな感触なんだろう。頭をなでなでした事はあるけど、触った事はないので、気になります。ボクは、なでなでしていた手を、ロガフィさんの片方しかない角に移して、触れました。
「んっ!」
すると、その瞬間、ロガフィさんの身体が震えました。でも、抵抗はないので、驚いたけどそのまま触ってみます。硬くて、ちょっとだけゴツゴツとしていて、立派な角です。ボクはそれを、手で握り、指先で角の先端を摘まんでみたりしながら、その感触を確かめます。
「ふっ、ふっ……はふっ」
すると、ロガフィさんがいつの間にか、顔を真っ赤にして、身体をビクビクと震わせていました。もしかしたら、何かの病気なのかもしれない。
それを見て、慌てたボクは、ボクに抱き着いているユウリちゃんとレンさんを振り払い、勢いよく起き上がりました。胸にロガフィさんを抱く形で、上半身を起こしたボクは、ロガフィさんの顔を覗きこみます。
「ロガフィさん!」
「ネモ……」
ロガフィさんは、ゆっくりと目を開きました。その顔は、まだ紅潮していて、息も荒い。
「角は……敏感」
「び、びん……?」
ロガフィさんの言葉に、ボクは言葉を失いました。そ、そっか。敏感……ボクが、その敏感な角を触ってしまったから、ロガフィさんはそれを我慢して、震えていたんだ。
そ、それにしても……ボクが胸に抱き、息を荒くして顔を赤くした上に、身体を僅かに震わせるロガフィさんは、その……少し、えっちです。いつもの子供っぽい感じではなく、妖艶な、大人な雰囲気を纏っています。
「でも、満足」
ロガフィさんはそういって、ボクから離れて、ベッドの上にちょこんと座り、大きな欠伸をしました。身体を伸ばして、その際にワンピースの肩ひもが片方ずれ落ちて、胸が見えてしまいそうになります。
ボクは、慌ててそんなロガフィさんから目を離し、そこで気づきました。
「「あ」」
「……何してるの?」
振り返ると、ユウリちゃんと、レンさんが、ディゼルトの口を塞いでいました。ディゼルトは、2人に密着された上に、口を押さえられて、顔が真っ赤です。




