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姉妹


 アルテラさんと、リツさんは、互いの目を合わせると、そして頷き合い、アルテラさんが口を開きました。


「そう……ユウリさんの、思った通りだ。実は、私たちは、姉妹なんだ」

「そ、そうだったんですか」


 レンさんが、失礼のないよう、必要最低限のリアクションを見せました。

 でも、内心では、思っている事はボクと同じだと思う。2人は、確かに仲は良さそうだけど、見た目が全然似ていない。リツさんは、グラマスな女性で、アルテラさんは、スレンダー。更には、髪の色も、目の色も、顔のパーツも、雰囲気も、似ているとは思えません。

 更に、ずっと気になっていたんだけど、アルテラさんはディゼルトと同じく、クールな女性なんだけど、リツさんはどこか違う。口調も、無理をしている気がして、違和感を感じます。


「無理は、しなくていい。私たちが姉妹だと聞いた者は、大抵こういう。全く似てないな、と」

「……私たちは、父親が違うから。だから、似ていなくても、当然と言えば当然だ」


 2人は、種違いの姉妹というヤツなんだ……。人生色々あるから、そういうこともあるよね。でも、親が違うのに、仲が良さそうなのは、良い事だ。


「私は、そっくりだと思いますよ。眉毛の形が、瓜二つです。恐らくは、眉毛は母親譲りで、他はお二人とも、父親譲りのようですね」

「そうなのか?そんな事、初めて言われたが……」

「似ていると言えば、似ている……かも?」


 アルテラさんとリツさんは、お互いの顔を見合わせて、眉毛を凝視します。

 でも、正直ボクには、分かりません。似ていると言えば似ているけど、瓜二つかどうかと言われると、判断に迷う。


「で?」


 と言ったのは、イリスです。偉そうに、イスにふんぞり返りながら、足を組んで言いました。


「で、って?」

「賢人医師会の人間が、偶然通りすがった人間に助けられて、何もない……なんて事は、ありませんよね?」

「……」


 ボクが尋ねると、イリスはそう言いました。

 イリスは、基本的に、何かしてあげたら、それに見合った対価を求める。それは、アルテラさんと、リツさんにも適用されるようで、暗にお金を要求しようとしているのが、分かります。


「ああ、その事なら、コレを受け取ってくれ」


 そんなイリスの真意を察したアルテラさんが、袋を取り出しました。それは、盗賊のお頭が、ボクに賄賂として差し出して、渡そうとしてきた、袋です。元々、アルテラさん達の物を、彼らが奪ったと言っていたそれは、パンパンに膨らんでいます。その中身は、お金だ。

 それを、あっさりと、迷いなく差し出されて、ボクは戸惑います。


「ちょ、ちょっと、アルテラ……」


 戸惑っているのは、ボクだけじゃない。リツさんも、心配そうにしています。

 そりゃ、そうだよ。自分たちの大切なお金を、あっさりと差し出してしまうんだからね。


「ふっ。分かっているじゃないですか」


 戸惑うボクを差し置いて、イリスがその袋を受け取り、早速その封を解いて、中身を確認し始めます。

 イリスが開いた、その袋の中身は、金貨や銀貨の混じった、とても多くのお金でした。


「ふ、ふはは。い、いいですね」


 そんなお金を手にして、イリスが戸惑います。どうせ、実は中身がお金じゃないとか、そう思っていたに違いない。ボクも、イリスの事だから、そんなオチが待ち受けているのだと思っていたからね。

 でも、実際袋の中身は、ちゃんとしたお金で、イリスはそんな大金を前にして、ちょっと怖くなったのか、そっと袋を閉じました。それから、ロガフィさんに、袋ごとお金を渡します。

 ロガフィさんは、それを受け取ると、じゃらじゃらと音を立てて、遊びます。まるで、子供のような行動が、微笑ましい。


「お姉さま。あのお金は、いくらなんでも……」

「うん。ロガフィさん。アルテラさんに、返してあげて。それは、ボク達には必要のない物だから」

「……」


 ロガフィさんは、ボクの言う事を素直に聞いてくれて、それをアルテラさんに向かって差し出しました。

 イリスは、それに対して何も言ってきません。本当に、大金が手に入りそうになったら、怖くなって黙って委縮しちゃうなんて、ちょっとカッコ悪いよ。

 そもそも、そのお金はイリスの物ではない。何もしていないイリスに、受け取る資格もありません。


「いや、受け取ってくれ。コレは、私たち三人を助けてくれたことに対する、正当な対価だ」

「……」


 それを受取ろうとしないアルテラさんに、ロガフィさんが困って、ボクの方を見て来ます。


「い、いえ。そんなの、いりません。受け取れません。ボク達は、お金が欲しくてアルテラさん達を助けた訳ではないんです。そんなのを受け取ってしまったら、ボク達が悲しい気持ちになっちゃうので……だから、いりません」


 ボクがそう言い切ると、ユウリちゃんがボクの腕を抱きしめて、ニコリと笑いかけてくれました。


「ネモ様も、こう言っていますし、そのお金はどうぞ、お戻しください。ちなみに、これ以上の反論は、いりません。ネモ様の言葉が、私たちの総意ですので」

「……そうか。すまない」


 アルテラさんは、ロガフィさんが差し出したお金を、そっと受け取りました。


「そのお金がないと、私たちの旅は、終わる事になるし、ディックがこの調子じゃ、しばらくは動けない。そうなると、お金は必要になる。確かに、この人たちに恩は返すべきだけど、他の方法を考えよう。それで、いいよね」

「ああ、そうだな。別の方法で、貴女達には、必ず恩を返す。賢人医師会の、名にかけて、だ」

「そ、そうだ。それじゃあ、ユウリちゃんの命を救って貰ったから、ボク達はその恩返しで、アルテラさん達を助けたという事で、どうでしょう」

「確かに!それなら、お互いさまという事で、納得ですね。お姉さまは、天才です」

「……どういうことだ?」


 ユウリちゃんが、ボクの頭を撫でて褒めてくれて、嬉しくなります。

 事情を知らないアルテラさんは、不思議そうにしているけど、本当なんです。


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