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「ぎゅー!」


 そこへ、元気の良い声と共に、茂みの中から飛び出して来たぎゅーちゃんが、小さな姿となって、ボクの頭の上に着地しました。

 盗賊たちを急いで追い払ってくれて、戻って来た所です。


「あ、ありがとう、ぎゅーちゃん。お疲れ様」


 ボクは、ぎゅーちゃんにお礼を言いながら、頭の上のぎゅーちゃんを撫でてあげます。


「……」


 そんな様子を、目の前のリツさんが、目を丸くして見ていました。


「こ、これは……さっきの、大きな魔物?小さくなってるけど、平気なの?」

「平気です。ぎゅーちゃんは、大きくなったり、小さくなったりできるんです」

「そ、そう。魔物なのに、随分おとなしいな。噛んだり、しない?」

「しません。ぎゅーちゃんは、凄く良い子なので」

「ぎゅー」


 ボクがそういうと、リツさんが、ボクの頭の上に手を伸ばしてきました。恐る恐るといった感じで、見えないけど、ぎゅーちゃんを撫でてくれているようだ。

 少しでも、リツさんの気が紛れるなら、それは良い事だ。今のボク達に、できる事は何もない。気を張り過ぎずに、治療が終わるのを待ってほしい。

 ボクは、もう一度、コップに魔法石で水を注ぎ、それをリツさんに手渡しました。


「……ありがとう」


 リツさんは、ぎゅーちゃんを撫でるのを中断すると、それを受け取って、そしてコップに口をつけてくれました。

 それから、しばらくの時間が経ちました。少しは力が抜けたのか、リツさんは、小さくなったぎゅーちゃんを抱いて、ゆったりとした時間を過ごしています。とはいえ、気になるのは気になるようで、時々アルテラさんの様子を見ては、戻ってきて、そしてため息を吐いて、座り込むと言う行動を繰り返しています。

 ……それにしても、凄い格好だ。ちょっと動いただけで、ぱ、パンツが見えちゃいそう。それに、太ももの下着の紐が、無防備すぎます。全体的に、むっちりとした体形のリツさんだからこそ、それがまた、たまりません。紐が食い込む太ももとか、最高です。ボクの太ももは、あまり肉付きがよくないんだよね……だから、ああはなりません。


「何故、あの女は、あんなにエロい格好をしているんですか」


 手近な石の上の上に座りながら、そんな行動をとっているリツさんを凝視していたボクの隣に、イリスが座りました。ロガフィさんも、一緒です。ロガフィさんは、イリスとは反対側に座り、ボクの両サイドを、2人が囲ってきます。


「み、見てないよ。全然、見てないよ」


 イリスに指摘された訳でもないのに、ボクは見ていないと言い張りました。イリスは、そんなボクを、目を細めて見て、そしてニヤリと笑いかけてきました。


「貴女がむっつりスケベなのは、私が一番よく知っています。誤魔化しても無駄なので、そんな事をいちいち言わなくていいです」

「……」


 イリスとは、一番付き合いが長いからね。ボクの事を、この中で一番知っているというのは、本当だ。

 ああ、そうだよ。ボクは、リツさんの格好を見て、楽しんでいました。パンツ、見えないかなぁとか、そんないやらしい事を考えながら、凝視してましたよ。


「女の裸なんて、ユウリにお願いすれば喜んで見せてくれますよ。それを、陰でこそこそ隠れてみようとするから、気持ち悪いんです。貴方ももう、ほぼ女なんですから、もっと、堂々としていなさい。そうすれば、自然といくらでも、見る機会なんてあります」

「い、いや、それはまた、なんか違くて。陰で、こそこそと隠れて見るから、良い──」

「……」


 そこまで言いかけて、イリスがなんだかゴミを見るような目で、ボクを見ている事に気がつきました。

 ボクは、一体何を口走ろうとしていたのだろうか。そんな事言ってたら、引かれて当然です。


「どうやら、付き合いの一番長い私でも、貴方の性癖を全て知り得ることは、できなかったようですね。しかし、貴方がそう望むのであれば、私はもう止めません。どうぞ、これからも陰でこそこそと、覗くといいです」


 妙に優しい笑顔で、イリスがそう言ってきました。


「ち、ちが……い、今のは、違くて……」

「ネモになら、見られても、いい」


 言い訳をしようとしたけど、隣に座っているロガフィさんが、嬉しい事を言ってくれました。み、見てもいいという事は、見てもいいって事だよね。


「いや、そうじゃなくて、ボクは……」

「見たく、ない?」

「……見たい、です」


 首を傾げるロガフィさんに、ボクは素直に答えるしかありませんでした。

 そうです。凄く、見たいです。ロガフィさんのような美少女の、あんな姿や、こんな姿を、陰から見て、見守りたいです。ロガフィさんだけじゃない。ユウリちゃんや、イリスや、レンさんも、ディゼルトも。


「ぷすっ!」


 そんなボクの様子を見て、イリスが噴き出しました。


「ネモさん!」

「わっは!」


 ボクは、突然自分のお腹の中から顔を出して来たアンリちゃんに、驚かされました。物を通り抜けれる、アンリちゃんならではの登場に、ボクの心臓は跳ね上がります。

 ボクは驚いたんだけど、両サイドのイリスとロガフィさんは、無反応なのが、なんだか恥ずかしくなる。


「け、怪我の治療、終わったよ……」


 アンリちゃんは、何故か顔を暗くして、言いにくそうに、言いました。それを見て、何か良くない事がおきているのだと、ボクは察しました。


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