表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
248/492

話が違う


 直後に、茂みから飛び出て来た人たちが、少しだけ離れた所にいる馬車を、あっという間に囲みました。同時にボク達も、武装した男の人達に、剣を向けられます。


「悪いな。そういう訳だ。あんたらは、偉いべっぴんさんだ。さぞかし、高く売れるだろうなぁ」


 ボク達に助けを求めて来た男の人が、ボク達を見て笑い、そう言いました。

 奴隷にでもして、売り払うつもりのようだ。特に、ユウリちゃんは凄く可愛いから、高く売れるはず。見る目は、あります。


「とう……ぞく、だ……!」


 怪我をして、倒れている男の人が、精一杯の力で、小さくそう呟きました。もう遅いけど、一生懸命、そう伝えようとしてくれていたのだ。

 この人は、ボク達より先に盗賊に襲われてしまったんだね。


「おとなしく捕まれば、良い目に合わせてから、変態の貴族にでも売り飛ばしてやる」

「へへ。悪いようには、しねぇよ」

「おい!その魔物はいらねぇ!殺しちまえ!」


 大剣を背負って、ボクとユウリちゃんを囲んでいる、男の人の中の1人。恐らくは、リーダーと思しき人が、馬車を囲んでいる人たちに向けて、そう指示を出しました。その指示に従い、ぎゅーちゃんに向かって斬りかかる男の人たちだけど、ぎゅーちゃんの反撃にあいました。


「ぎゅ!」

「死ね、おらぁ!」


 ぎゅーちゃんに向かい、剣を振りかざした男の人が、その場からいなくなりました。ぎゅーちゃんから伸びた触手が、彼を薙ぎ払い、気づけば空を飛んでいます。彼はそのまま、茂みの中へと戻っていきました。


「この……!」


 ぎゅーちゃんの反撃に反応した男の人が、次は弓矢を放ちます。それは、ぎゅーちゃんに突き刺さりるけど、跳ね返って地面に落ちました。


「へ?な、なんだコイツ。話がちが……ぶっ!」


 弓を放った男の人も、ぎゅーちゃんの触手に薙ぎ払われました。先ほどの男の人と同じ方向の茂みに、飛ばされていきます。そして、何かとぶつかったような音と、叫び声が聞こえて来ました。どうやら、2人がぶつかったみたいだ。


「ぎゅふー」


 その事に、ぎゅーちゃんは満足げに息を吐いて喜んでいます。


「この化け物がぁ!」

「全員で一斉にかかるぞ!」

「……遅いな」

「……」


 残りの男の人たちが、一斉に地面に倒れこみました。それをしたのは、ディゼルトだ。一瞬にして、彼らの鳩尾に、短剣の柄の部分で叩きつけて回り、全員お腹を押さえて、地面に倒れこみました。


「な、なんだアイツ等は……!おい、女だけで、護衛はいないんじゃなかったのかよ!」

「オレに聞かれたって、分かりません!この女からの情報です!」


 大剣の、リーダーぽい男の人が、ボク達に助けを求めて来た男の人の胸倉に、掴みかかります。彼は、ユウリちゃんを指さして、ユウリちゃんのせいにしようとしています。


「てめぇ。騙したな?」

「……」


 大剣の男の人が、ユウリちゃんを睨みつけて、ユウリちゃんも彼を睨み返します。それに腹をたてたのか、血管を額に浮き上がらせ、大剣を徐に手に取ると、それをユウリちゃんに向かって振り上げました。


「お頭、上物を殺す気か!?」

「一匹くらい、上物がいなくなっても関係ねぇ。コイツは、見せしめに殺す」


 大剣が、ユウリちゃんに向かい、振り下ろされました。その大剣は、ユウリちゃんの隣にいたボクが、素手で受け止めます。


「は?」

「へ?」

「ほ?」


 周囲から、大剣を受け止めたボクに対して、様々な一文字の声が聞こえて来ました。

 ボクは、手に掴んだ大剣を、そのまま握り潰すと、剣はあっけなく割れてしまいました。


「ひぃ!」


 大剣の持ち主は、腰を抜かしてしまいます。でも、周囲の人たちは、まだやる気のようで、背後から襲い掛かってきた。

 ボクは、背後から押しかかって来た人に向かい、振り向きもせずに後ろ蹴りを繰り出しました。それは、偶然にもその人の股間に当たってしまったようで、懐かしい感触が伝わってきた。その人は、そのまま地面を擦れて転がっていき、動かなくなります。死んでは、いない。ただ、凄く痛そう……。


「に、にげ……逃げろぉ!」


 腰を抜かしていたリーダーが、半泣きで立ち上がりながら、大声を張り上げました。その指示に、皆一斉に、四方八方へと逃げていきます。といっても、元気なのはもう、数人だけだけどね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ