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仲良しの、ちゅー その2


 結論は、出た。あとは、色々と用意して、ユウリちゃんとイリスに負担がかからないように、気を付けて旅に出るだけだ。


「……私も、行く」

「ロガフィさん、それは……」

「貴女は、来ても役に立ちません。おとなしく、留守番していなさい」


 ユウリちゃんが言いにくそうにいって、イリスがハッキリと言った。

 ボクも、ロガフィさんがついて来ることには、反対だ。ロガフィさんは、あまりにも優しすぎる。強い敵に対する戦いには向かないし、そもそも魔王の目的は、ロガフィさんだ。わざわざこちらから、ロガフィさんを連れて行って、もし捕まってしまったら、どんな目に合わされるか分からない。


「行く」


 ロガフィさんは、イリスをぎゅっと抱きしめて、自らの決意を曲げずに言ってきます。


「イリスの言う通りでございます。力を行使する事を怖がる貴女では、皆さんの足を引っ張るだけ……同行は、許可できません。私が責任を持って、皆さんが帰ってくるまで、その身の安全を保障します。なので、お留守番いたしましょう?」

「……」


 聖女様が、言葉は厳しくとも、優しく語り掛けるような口調で言うけど、ロガフィさんは頷かない。イリスを抱きしめたまま、固まってしまった。

 ハッキリと言う2人の意見は、辛辣で、だけど事実であり、ロガフィさんのためを思って言っている。ボクも、全くの同意見で、ロガフィさんも一緒に行く事には反対だ。

 だけど、よくよく考えたら、ボクはロガフィさんのお兄さんを、討伐に行くと言っているんだよね。ロガフィさんの家族を殺すと宣言したボクを、ロガフィさんはどんな心境で聞いていたんだろう。本当に、ボクは何も考えずに口にして、バカだ。


「……分かった。一緒に、行こう」

「……」


 ボクが言うと、ロガフィさんは黙って頷きます。


「ですが、ネモさん……」

「い、今の魔王は、ロガフィさんのお兄さんです。ロガフィさんを連れて行かないと、もう二度と、会えなくなっちゃうかもしれないんです。だったらその前に、い、言いたい事をもう一度、ちゃんと言った方が良いと思う。ロガフィさんの想いと考えをぶつけて、その上で、どんな結末になるのか、ロガフィさんには見届けて欲しい」


 一生懸命、ボクは自分の想いを、皆に話した。ここでロガフィさんを置いて行ったら、後悔してしまう気がして、仕方がない。連れていく事に、反対は反対だけど、でも、連れて行かないといけないんだ。

 すると、ロガフィさんがいきなり、席を立ちあがります。イリスを抱いたままた立ち上がって、イリスをそっと座らせてから、円形の机を挟んで座っているボクに向かって、ダイブ。


「わっ!?」


 突っ込んでくるロガフィさんを、避ける訳にもいかない。ボクは、腕を広げ、ロガフィさんの受け入れの体勢を取ると、ロガフィさんはボクの首に腕を回した上で、お腹から机の上に着地。机の上に置いてあった、食べ終わった食器を薙ぎ払い、ちょっと大きめの音が響き渡りました。


「んんっ!?」


 若干ではあるものの、慣れてきた感触を、唇に感じます。

 ロガフィさんが、ボクの首に上半身を預け、突っ込んできた勢いそのままに、ボクの唇に、自らの唇をくっつけてきました。ちゅーです。ロガフィさん必殺の、仲良しのちゅーが、ボクの唇に直撃しました。


「ぬああ!?」


 ユウリちゃんが、それを見て叫び声を上げます。


「コレは……なんだ?」

「仲良しの、ちゅーです。ロガフィさんは、仲良くなった方に、こうしてちゅーをする癖があるのです。私も、ロガフィさんと、ジェノスさんを受け入れた時に、されちゃいました。可愛らしい方ですよね」

「な、ななな、仲良しのちゅー!?す、凄い……凄いぞ!?」


 解説してくれる聖女様に、それを聞いて興奮している様子の、ディゼルトの声が聞こえて来ます。

 それからややあって、ロガフィさんが、ようやく唇を離してくれました。唇が解放されて、互いの顔に、息がかかり合います。


「ぷはっ。ろ、ロガフィさん……」

「ありがとう、ネモ。私は、お兄ちゃんともう一度、ちゃんと話がしたい。そう思っていた。だから、ネモがそう言ってくれて、嬉しかった」

「う、うん。どういたしまして……」


 ボクが答えると、満足したのか、ロガフィさんはボクから離れて、机に座る形になりました。

 心臓が、ばくばくです。もう何度か経験した事とはいえ、緊張はする。あと、興奮も、ちょっとだけ。


「ろ、ロガフィさんにまで、先を越されて……やはり、あの時しておくんでした……!」


 ユウリちゃんが、悔し気に言っています。先日、楽しみにとっておくと言っていた、ボクとのキスの事を言っているようだ。


「ロガフィさん。机の上に、座っては、お行儀が悪いですよ。仲良しのちゅーも終わりましたし、降りましょうね」

「……」


 聖女様に言われて、ロガフィさんが頷きました。ボクは、そんなロガフィさんが机から降りるのを手伝うため、抱きあげて、床に降ろしてあげます。


「……ネモ様。私、決めました」

「れ、レンさん?」


 しばらく、何も発言せずにおとなしく座っていたレンさんが、机を叩いて立ち上がりました。いきなりの事に、ボクは驚きます。


「私も、ネモ様について行きます!」

「え、えぇー……」


 レンさんの、決意の籠もった言葉に、ボクは呆然としました。


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